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「科幻世界」を読む(14)運命と向き合う“星の子供”:江波「星星的孩子」


あらすじ

『科幻世界』2024年第8期掲載。

自閉症と診断された王自強(ワン・ズーチアン)は、子供の頃から周囲となじめず学校生活もうまくいかなかった。特に抜群の記憶力のせいで同級生からねたまれ、暴力を受けることもあった。

そんなある日、掘削機と出会ったことで運命が動き出す。ズーチアンは瞬く間に掘削機の使い方を覚え、誰よりも速く操作できるようになったのだ。アスペルガー症候群の疑いがあると言われたズーチアンだったが、掘削機を扱う親方に弟子入りして兄弟子にも負けない腕をさらに磨くようになる。

時は流れ、大人になったズーチアンは、子供時代に唯一優しく接してくれた昔の同級生・李一燕(リ・イーエン)と偶然再会する。イーエンは掘削機での作業動画を公開し、お金を稼ぐことを思いつく。親方と兄弟子が生活の面倒を見てくれ、イーエンのおかげで経済的自立を果たしたズーチアン。しかしあることがきっかけで月面開発の現場に赴いた頃、激しい頭痛に悩まされるようになっていた。

頭痛の正体は巨大な脳腫瘍であり、すでに取り出すことはできなかった。ズーチアンは手遅れの自分自身に対してある選択をする。そのときも頭にあったのは掘削機のことだったが……。

感想

短い作品ながら、人間の一生を丁寧に語っていくスケールの大きな話で深く印象に残りました。

語り手でもある主人公がアスペルガー症候群という設定のため、独特な身体感覚や心の動きが随所に散りばめられています。たとえば「自分が機械(掘削機)そのものみたい」だったり、「病気が治ればママと一緒に泣けるんだろうな」と思ったり、作中では知的でありながら感情のない自分自身を観察する語りが多く見られます。作者がどのくらい実際の患者さんの症状を調査して書いているのかはわかりませんが、一般的な症状を外から説明するのではなく、当事者の声として語ることによってその内面が垣間見えるような気がしました。

また、作中では掘削機を人間が操作するのは徐々に時代遅れになっていき、ズーチアンが大人になった頃にはAIを使った無人運転が浸透しています。ズーチアンはAIよりは少しだけ遅いものの、人間の中では抜群に操作が速いため、掘削機を使って食べていくことができることになっています。物語の舞台は近未来のようですが、このあたりは現代の私たちにもわかりやすいイメージで描かれているなと感じました。

そして結局、そんなズーチアンは掘削機から離れませんでした。でも、どのような方法で? そこがなるほどと思わせるやっぱりSFな結末になっており、一本の映画を見たかのような感覚を味わわせてくれます。

作者について

江波さんは本noteですでに何度かご紹介しています。先日出版された早川書房刊『宇宙墓碑』にも「宇宙の果ての本屋」が再録されていましたね。さらに『銀河之心』シリーズも邦訳の続刊が待たれます!