【ショートショート】 公共の電波にも関わらず競技以外のところで不穏な空気が漂いまくるマラソン中継 《せりふ三題噺》
「さぁ、今年で26回目を数えます静岡河津マラソン。ソメイヨシノの花びら舞う河津バガテル公園をスタートします。解説は伊羅俊輝さん、実況は煽杉でお伝えします。伊羅さん、イラッとせずによろしくお願いします」
「はい、あまり煽らずによろしくお願いします」
「先頭は早くも招待選手を含む20名ほどの集団になりました。スタートの河津バガテル公園ですが、こちらはフランス・パリ16区にありますバガテル・ラ・ロズレ公園の姉妹園となっています。ブーローニュの森にあるバガテル・ラ・ロズレ公園は、あのマリー・アントワネットが製作を指示したというバラの庭園などを擁し、パリ桜の隠れた名所とも言われています。
ちなみに私は新婚旅行で行きまして、大変ロマンティックなパリの夜を過ごしてきました。伊羅さんも行かれたことがあるとうかがいましたが?」
「…行ってませんね。独身ですし」
「情報に誤りがあったようです。失礼しました。
なお、今回の河津マラソンですが、昨今の深刻な人手不足によりペースメーカーが手配できなかったとのことで、東海道新幹線の運転手お二人が新幹線運転している方ならなんか足も速いんじゃね?という主催者のフィーリング完全先行の発想でレースのペースメーカーに起用されています」
「いや、お二人もう顔真っ赤でゼーゼー言ってますよ。新幹線を運転するプロでもマラソンのプロではありませんよね。ていうか、もう集団に追い抜かれてますし、止めてあげたほうがいいんじゃないでしょうか」
「桜の季節にしてはやや気温の高いコンディションとなりました、第26回河津マラソン。レースは間もなく10km地点の給水ポイントです。
おおっと!? 給水を口にしたランナーが次々にブフォッ!と吐き出してしまいました。これはボトルの中身を水かスポーツドリンクと思っていたのでしょうか。今大会では選手の給水に牧之原市名産の波乗りレモンから作られたレモンスカッシュを提供しています。もったいないですね、伊羅さん?」
「いや、あの〜、地元の名産PRをしたいのはわかるんですが、やり方間違えてませんかね。マラソン中の炭酸はダメではないんですが、序盤だと少ししか飲めないんですよ。炭酸でお腹膨れたらその後の補給ができなくなるんで。ていうか通常、大会ではレモンスカッシュ提供しないですし」
「はい、うんちくありがとうございます。ここで脱落した東海道新幹線運転手のお二人に代わり、河津で農家を続けて50年の多田さんがレースのペースメーカーを務めます」
「いや、トラクター! トラクター、しかも大型!
クボタがフランスに新設した工場で作った170馬力のM7シリーズ! トラクターに隠れてランナー全然見えないって! そんなムリにペースメーカーやらなくていいから!」
「フランスと非常に縁があります今回の河津マラソン。ちなみに伊羅さんも行かれたことが…」
「だからねぇっつってんだろ!!」
*こちらに参加させていただきました🙇♂️
お題
せりふ:行ってませんよ
三題:新幹線、花びら、レモンスカッシュ
