【ショートショート】 それにしても価格設定に疑問が残るショートショートカフェ 《せりふ三題噺》
涼しい。
空調が効いて清潔感のある店内。満ちたコーヒーの香り。30度を超える気温の中、外回りをしてきた身が逃げ込むには最高の場所だ。
お決まりでしたらどうぞ、と女性のスタッフに声をかけられる。
「あ、えと…じゃあブリュードコーヒーのアイス、ショート…いや、グランデサイズで」
「店内でお過ごしですか?」
「あ、はい」
「かしこまりました。本日のブリュードコーヒーは35年ぶりに図書館に返却された蔵書のようなコクと苦みのある豆を使用しています」
「へぇ…すいません、ちょっとどんな豆かわからないですけど、このショートショート100円って何ですか?」
「こちらはコーヒータイムに最適な当店オリジナルの短編小説です」
「へぇ〜! そんなのあるんだ!」
試しに注文してみた。
席に座り、冷えたコーヒーを飲む。なるほど、35年に及ぶドラマの重みはやはりよくわからないが、確かに深いコクと苦みのある味だ。
コーヒーとともに渡された一枚の紙に目を通す。
太陽が照らし出す草原。訪れるのは何十年ぶりだろう。
風と草木たちの、人目も憚らない愛撫。我関せずと空を翔ける鳥たち。
ある言葉が耳に蘇る。
《恐竜映画で肉食のやつに追われたとき、中が空洞になっているバカでかいペンネみたいな倒木に隠れたりするだろ? そんなものは都合よくあったりはしないんだ》
タカシは、ここでそう言っていた。
あ〜〜〜〜〜〜…うん。
これは好き嫌いがわかれるかも知れない。
かも知れないが、私は気になる!
めちゃくちゃ気になる!
一体君に何があったんだ、タカシ!!
もう一度カウンターに行き、スタッフに尋ねる。
「あの、すいません。これ、続きとかってあるんですか?」
「はい。こちら、ショートショートのほか、グランデショート、完全版のギガンテショートがございます。グランデは約1000文字で1000円、完全版はおよそ3000文字で10000円となっております」
「いちま…!? いや、ちょっとそこだけ値段跳ね上がりすぎじゃないですか!?」
「申し訳ありません。物価高の影響でして」
「それはまぁ物価高なのはイヤというほど物価高ですけど、グランデまで1文字1円なのに、そっから急にえげつないぐらいの高インフレ率ですよね? 経済学者とかも何だこの不可解なグラフは、とかってたぶんコロンボ刑事以上に首傾げまくりますよ。例え大分古いですけど」
「すいません。その方のことはわかりません」
「35年ぶりに返却された豆もわからんて!」
「ギガンテ入りまーす!」
「ありがとうございまーす!」
「ありがとうございまーす!」
「待って待って待って待って! まだ悩ませて! まだ悩ませて! まだもうちょっと悩ませて!!」
*こちらに参加させていただきました🙇♂️
お題
せりふ:ショート…いや、グランデサイズで
三題:草原、返却、ペンネ
#せりふ三題噺 #草原返却ペンネ #ショートショート #掌編小説 #創作 #カフェ #インフレ #ギガンテショートって言い方紛らわしいにも程があるでしょ
