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【短編小説】草原で見つけた「ある物」

     ★この作品はホラーではありません。

僕は空き地の草むらで「ある物」を見つけた。
それが何なのか、まったくわからない。

* * * *

10年前、小学生の頃のことである。

裏山の近くに車が数台止められるほどの空き地があって、草の茂みに隠れるようにして「ある物」が埋まっていた。

長方形の金属の板……。

まるで小さな冷蔵庫が生き埋めになったかのような物。

茶色く錆びつき、地面にべったり張り付いた金属の板を、僕は動かしてみようとした。しかし、びくともしない。

これは何かのフタに違いない。そう思い、今度は引っ張ってみる。

やはり動かない。金属の板は地面に根を張るようにくっついて、自然の一部となっている。

マンホール?
丸い形が多いが、四角いやつも見たことがある。

この下がどうなっているのか気になった。

「宝があるんじゃないのか?」
「海賊の秘密基地だよ」
「墓だよ」

友達が口々に言ったけれど、フタはどうしても開かない。
結局、空き地にあった「ある物」のことをみんな忘れてしまった……

* * * *

僕は高校生になっていた。

ある日、学校の試験週間中に、気晴らしにサッカーの練習をしようと、ふと、あの草原のことを思い出した。
自転車を飛ばして、久しぶりに草原に向かう。

「随分、荒れているな」

膝まである草が、地面を占領するようにびっしり生え、サッカーなんてできる状態ではない。

仕方なく草原の横の道端でリフティングの練習を始めると、失敗して草原に入ってしまった。

慌てた僕は、ジャングルのように伸びた草の中に飛び込んでボールを探す。

折り重なった細い草の中にボールがあった。それを取って、草むらから逃げようとすると、「うあわ」と体勢が崩れ、右足が丸い穴に入り込んだ。

何が起こったのかわからない。動物の罠に掛かったようにもがきながら足元を見る。

「落とし穴か?」

穴は丸く、奥が空洞のようになっていた。以前はこんなものがあった記憶はない。

立ち上がり、足を取られながら舗装された道路へ向かおうとして、再び足をとられて前のめりに倒れ込んだ。

あの長方形のマンホールが残っていた。

忘れていたわけではない。
ただ、久しぶりに異様な金属の板を見ると、10年間放置していた心が一気に昔に戻った。

「あれ? 何か書いてあるぞ」

読み取れない。人間の文字?

UFOの残骸?

胸の鼓動が耳元まで響き、汗が体じゅうから流れる。

しばらく観察していると、長方形のフタには丸い突起物のような物がついていて、文字ではなく数字が書かれているのがわかった。

UFOではない。

1、2、3、4。

「これ、ダイヤルじゃないのか!」

金庫の扉?

耳を近づけて、コンコンと叩く。響くような音が返ってきたような気がする。中は空間になっている。

この中には宝物が眠っているのかもしれない。
興奮して頭のてっぺんまで熱くなった。

「お前、何をしている」

びくっとして振り向くと、杖を突いた老人が、草むらの外から僕を睨みつけていた。おそらく九十歳は超えている。

「危ないからすぐに離れなさい」

「これはいったい何なのですか?」

「大切な物だ」

老人は体をよろめかせながら草むらに足を運び、金庫の前まで来ると、杖で叩いた。乾いた音がする。

「中に何が入ってるんですか?」
「たぶん骨だ……」
「骨?」
「骨のような心かな」
「心?」
「そうだ。昔はな。いろんなもので作った。これは金庫の扉で作った」

僕は何のことかさっぱりわからない。老人は、金庫の隣の落とし穴に歩いていき、再び杖を使って穴のまわりを叩いた後、近くにあった石ころを落とした。

ぽちゃん、と水の音がする。

「蓋が壊れたんだな。雨水がたまっとる」
「この穴は……何ですか?」

老人は穴をじっと眺め、重苦しい声で言った。

「風を入れる必要がある」

僕は何と言えばいいかわからず黙り込む。

老人は頬を緩めて笑みを浮かべ、そして、目玉をギョロッと動かして、僕を調べるように睨んだ。

「本来、必要のないものだ」

老人は空を見上げた。

「今の若者には想像できないことだ」

老人は、コツコツと杖の音を立てながら去っていく。

その後ろ姿をぼんやり眺める。

僕は草むらで「ある物」を見つけた。

それが何なのか、教えてもらっても想像することはできない。

      了

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はやか-shirohira  (短編小説) 今後、原爆をテーマに小説を書きます。テーマ的に文学賞からの出版は厳しいと考えてます。出版費用にしたいです。応募よろしくお願いします。