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3月の岩手で酒を選ぶなら、春らしさだけで決めないほうがいい

花見に持っていく酒を考えたとき、なんとなく「軽そうなやつ」を探してしまう。
でも外はまだ少し寒いし、つまみは意外と塩気も苦みもある。
春の酒って、ただ軽ければいいわけでもない。

自分はここ、けっこう大事だと思っています。

春になると、日本酒売り場には季節限定の札が増えます。
ピンクっぽいラベル、やわらかい名前、春らしい言葉。
見た目としては入りやすい。そこはすごくいい。

ただ、そのまま「春だから軽快」「春だからフルーティー」で選ぶと、場面によっては少しズレます。
花見の外飲みなのか。家で山菜をつまみながら飲むのか。
年度替わりの少し背筋が伸びる夜なのか。
そこが違えば、合う酒も変わります。

国税庁のGI岩手では、岩手の清酒は「口当たり柔らか」で、「米由来の芳醇な旨味」を持ち、食中酒に適すると整理されています。つまり岩手の酒の入口は、ただ軽いことより、料理や場面の中でどうなじむかにあります。 

だから春の岩手酒も、軽いかどうかだけで見るのは少しもったいない。

岩手の春は、桜だけでできていません。
盛岡の石割桜みたいに、春の象徴になる風景はある。けれど同時に、産直には山菜が並きはじめます。滝沢や二戸の観光情報でも、春の食材として山菜が前に出ています。 

この「少し苦い」「少し青い」「でも待っていた感じがある」春の食卓に、ただ軽いだけの酒がいつも正解とは限りません。

たとえば、外で飲む花見酒なら。
まだ風が冷たい日もあるし、温度が少し上がったり下がったりする。
そんな場面では、香りの派手さだけで引っ張る一本より、口当たりがやわらかくて、少し旨みが残る方が崩れにくいことがあります。これは銘柄の優劣ではなく、あくまで場面の話です。

逆に、家でゆっくり飲むなら。
ふきのとう、たらの芽、こごみみたいな春の苦みや香りと合わせるときは、甘さだけで押す酒より、後味がきれいに引く酒の方が食卓になじみやすいこともある。
春は華やか、で終わらせるより、春のほろ苦さにどう寄り添うかで見た方が、岩手の酒は面白くなります。

ここで、春の岩手酒を選ぶときの基準を3つだけ置いておきます。

1つ目は、どこで飲むか。
外なのか、家なのか、店なのか。
外なら温度変化に負けにくいこと。家なら食卓との距離が近いこと。店なら、その日の料理と会話の流れに入っていけること。
先にここを決めるだけで、だいぶ選びやすくなります。

2つ目は、何と合わせるか。
春の岩手は桜の景色もいいけれど、食で言えば山菜が強い。
苦みや香りのある食材に対して、酒もただ“軽い”だけだと、印象が薄くなりやすい。
旨みが少しあるか、口当たりがやわらかいか、このあたりを見るだけでも違います。 

3つ目は、春っぽさをどこに感じたいか。
ラベルの華やかさなのか、香りなのか、飲んだあとの空気感なのか。
ここを自分で決めると、選び方が少し他人任せじゃなくなります。

春酒の具体例として、あさ開には「特別純米酒 はるどきっ」という季節商品があり、公式では春の軽やかな空気感、ふわりと広がる香り、やさしい口当たりと説明されています。こういう酒は、春らしさを素直に受け取りたい人には入りやすいと思います。 

ただ、自分が大事にしたいのは、そこで終わらないことです。
「春っぽい酒を飲んだ」で終わるより、
「岩手の春って、桜だけじゃなくて山菜もあるし、まだ少し冷えるし、その感じが酒にも出るんだな」
まで届くと、一気に岩手の酒がただの商品じゃなくなります。

IWATE SAKE TASTEとして届けたいのも、そこです。

初心者に難しい説明を増やしたいわけじゃない。
でも、分かりやすさのために全部を「軽い」「飲みやすい」で片づけるのも違う。
詳しくなくていい。けれど、雑に選ばなくていい。
その間にある入口を、岩手の酒ではちゃんと作りたい。

岩手には、盛岡、二戸、紫波、八幡平など、酒を入口に土地へ入っていける町がいくつもあります。観光サイトでも県内の酒蔵が地域ごとに整理されていますし、蔵によっては見学できるところもあります。あさ開は盛岡で蔵見学も案内していますし、南部美人は二戸という地域の魅力を酒を通して伝えると明言しています。 

だから春の一本を選ぶことは、ただ季節物を買うことではなくて、
岩手のどの空気を持ち帰るかを選ぶことでもある。
自分は、そういう渡し方の方が、長く残ると思っています。

春の岩手酒は、軽ければ正解というわけでもない。
桜を見る日もあれば、山菜で一杯やりたい夜もある。
そのどちらにも寄り添えるのが、岩手の酒のいいところです。

次に春の酒を選ぶときは、ラベルの色だけじゃなく、
「どの春に持っていきたい一本か」
そこを少しだけ考えてみてください。
たぶん、その方が岩手の酒はちゃんと面白いです。

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