神経可塑性とは何か
― 子どもの運動神経が「後天的に変わる」本当の理由 ―
「うちの子は運動神経が悪いんです」
これは、これまで何度も保護者から聞いてきた言葉です。
そしてその言葉の裏には、
「もう変わらないのではないか」
「生まれつきだから仕方がないのではないか」
という、半ば諦めのような感覚が含まれていることが多いです。
しかし、私は現場で何万人もの子どもを見てきた中で、はっきりと断言できます。
運動神経は変わります。
しかもそれは、
特別な才能を持った子だけではなく、
「普通の子」が、です。
その理由を説明する上で、絶対に外せない概念があります。
それが、
神経可塑性(しんけいかそせい)
です。
神経可塑性とは何か
神経可塑性とは、
脳と神経が経験によって変化する能力
のことを指します。
人間の脳は、固定された機械ではありません。
使い方によって、
神経回路は強くなり、
新しく作られ、
再編成されます。
つまり、
経験によって「脳そのもの」が変わるのです。
これは、運動において極めて重要な意味を持ちます。
なぜなら、
運動神経とは、
筋肉の問題ではなく、
脳と身体を繋ぐ神経回路の問題
だからです。
運動が「できる」とはどういうことか
例えば、
ジャンプをするという動作一つを取っても、
脳の中では膨大な情報処理が行われています。
どのくらい膝を曲げるか
どのタイミングで伸ばすか
どの角度で踏み切るか
空中でどうバランスを取るか
どこに着地するか
これらすべてを、
脳が瞬時に処理しています。
そしてその精度を決めているのが、
神経回路の密度です。
神経回路が密であればあるほど、
動きは正確になります。
これが、
一般的に言われる「運動神経がいい」という状態です。
なぜ子どもは急に伸びるのか
指導をしていると、
それまでできなかった動きが、
ある日突然できるようになる瞬間があります。
保護者はよく、
「急にできるようになりました」
と言います。
しかし、
これは急に起きたわけではありません。
神経回路は、
繰り返しの経験によって少しずつ強化され、
ある一定のレベルを超えた瞬間に、
動きとして表に現れます。
これは、
水がコップに溜まり、
溢れる瞬間に似ています。
溜まっている間は見えませんが、
確実に変化は起きています。
これが、
神経可塑性の働きです。
失敗が神経を発達させる
ここで重要なことがあります。
それは、
成功よりも失敗の方が神経は発達する
ということです。
失敗すると、
脳は誤差を認識します。
そして、
その誤差を修正しようとします。
この修正作業こそが、
神経回路を強化します。
逆に、
常に成功している状態では、
修正が起きません。
つまり、
神経はあまり発達しません。
これが、
「簡単なことばかりやっていると伸びない」
理由です。
なぜ遊びが重要なのか
子どもの遊びには、
多くの失敗が含まれています。
転ぶ
ぶつかる
落ちる
バランスを崩す
これらすべてが、
神経可塑性を促進します。
遊びは、
神経発達のための最高のトレーニングです。
一方で、
失敗を避ける環境では、
神経は発達しません。
安全すぎる環境は、
発達の機会を減らします。
私自身の経験
私自身、
子どもの頃から様々な運動をしてきました。
木に登り、
高い場所から飛び降り、
ロープで降下し、
バランスを取り、
失敗を繰り返してきました。
その経験が、
現在の身体感覚の基礎になっています。
特別な才能があったとは思いません。
ただ、
経験が多かっただけです。
運動神経は「作るもの」
ここまで読んでいただければ分かると思いますが、
運動神経は、
与えられるものではありません。
作るものです。
そしてそれは、
特別なトレーニングだけではなく、
日常の中で育てることができます。
走ること
跳ぶこと
登ること
遊ぶこと
その一つ一つが、
神経回路を作っています。
最後に
もし、
子どもの運動能力に不安を感じているなら、
「才能がない」と考える必要はありません。
必要なのは、
経験です。
経験は、
増やすことができます。
環境を変えることで、
神経は変わります。
脳は変わります。
身体は変わります。
そして、
子どもは変わります。
有料記事では、
・神経可塑性を最大化する具体的方法
・運動神経が伸びる臨界期の正体
・小脳と運動学習の関係
について、さらに深く解説します。
本気で子どもの可能性を伸ばしたい方は、
ぜひ続きも読んでみてください。
