DVD-R の構造は? - 記録型メディアに必要な位置決めの話
前回は予めデータが書き込まれた状態でプレスして作られる読み取り専用のDVDについて書きましたが、今回は一度だけ書き込めるDVD-Rについてです。
DVD の物理的な構造
DVDの場合、一度だけ書き込めるメディアについても、DVD-RだけでなくDVD+Rという種類もあったりします。その違いはアナログレコードで言えば溝の作り方で、この溝の構造を使ってデータがどこにあるのかを探すので、ランダムにアクセス出来るという次第。基本的な構造や仕組みに違いは無いので、両者をまとめて指す場合にはDVD±Rと呼んだりします。
第11回 光メディアに記録する - コンピュータ講座応用編
原理的にはCD-Rと同じですが、通常のDVDと同様に二層構造にすることも出来ます。使われる色素もCD-Rのようにアゾ系やシアニン系の有機色素が使われます(フタロシアニン系は微細化すると問題が出たようです)。
CD/DVDの仕組み
さてCD-Rの時に説明を端折ってしまったのですが、記録型メディアの場合は螺旋形で記録されている溝にちょっとした細工が施されています(もちろんDVDでも同じ)。つまり再生専用であれば読み出すときには既にデータが書き込まれているので、データを読めばそのデータは最初から何秒目といった位置を知ることが出来るのですが、記録型の場合はまだデータが書かれていないので、書き込む際に何らかのガイドが無いと書き込むべき場所を決められないわけです。ちょっとややこしいので Gemini 君の力を頼りました。
1. 再生専用CD(CD-ROM)の場合:すでに「道」ができている
再生専用のCDは、工場でプレスの段階から物理的な凸凹(ピット)が刻まれています。
トラッキング(位置合わせ):
レーザーは、すでに刻まれているピットの列そのものを追いかけます。ピットの列がそのままレールの役割を果たすため、別のガイド(溝)は不要です。回転制御(スピンドル制御):
ピットから読み取られるデジタル信号の中に、同期信号(クロック)が含まれています。 プレーヤーはこの信号を読みながら「あ、回転が速すぎるな」「遅いな」と判断してモーターの回転数を調整します。
白線も標識も完璧にペイントされた道路を走るようなものです。目に見える情報(ピット)を頼りに進めばよいだけです。
2. 記録型CD(CD-R/RW)の場合:真っ白なキャンバス
記録前のCD-Rは、データ(ピット)が全く存在しない「ただの板」です。もしガイドが何もなければ、レーザーはどこに、どのくらいの速さでデータを焼き付ければいいのか分かりません。そこで「プレグルーブ(案内溝)」が必要になります。
しかし、ただの真っ直ぐな溝だけでは不十分です。そこで「ウォブル(うねり)」が登場します。
なぜウォブル(蛇行)が必要なのか?
溝をわずかに左右に蛇行(ウォブル)させることで、以下の重要な情報をドライブに伝えています。
回転速度の基準(クロック):
ウォブルは一定の周波数(22.05kHz)で蛇行しています。ドライブはこの揺れの速さを検知して、「今ディスクが正しい回転数で回っているか」を判断し、モーター速度を制御します(まだデータがないため、データから同期信号を得られないからです)。住所情報(ATIP):
ウォブルの信号には、ATIP(Absolute Time In Pregroove)という絶対時間情報がFM変調で埋め込まれています。これにより、「ここはディスクの内周から何分何秒の地点か」という住所がわかります。
まだ舗装されていない荒れ地(未記録面)に道路を作る工事のようなものです。何もないので、測量士が立てた杭やロープ(プレグルーブとウォブル)をガイドにして、アスファルト(データ)を敷いていきます。「ここがスタート地点から何メートルだよ」という情報も、このロープの揺れから読み取っているのです。

補足
一度CD-Rにデータを書き込んでしまえば、再生時はCD-ROMと同じように「書き込まれたデータ(色の変化で作った擬似的なピット)」を読み取ってトラッキングや回転制御を行います。ウォブルは主に「書き込む時」に不可欠なものと言えます。
これだけだとまだわかりにくいですね。要は位置決めの方法なんですよね。もう少し Gemini 君に頑張ってもらいましょう。
ウォブルの中にどのようにして「住所情報(時間)」が隠されているのか、その核心である「ATIP(Absolute Time In Pregroove)」の仕組みについて解説します。
一見ただの「溝の揺れ」に見えますが、実は非常に巧みな方法でデータが埋め込まれています。
1. ウォブルの基本:FMラジオと同じ仕組み
前の回答で、「溝は一定の周波数(22.05kHz)で揺れている」と言いましたが、実は微妙に周波数を変化させています。
基本の揺れ(搬送波): 22.05kHz
情報の乗せ方(変調): この22.05kHzを基準に、±1kHz(プラスマイナス1キロヘルツ)だけ周波数を変化させます。
これをFM変調(周波数変調)と呼びます。FMラジオと同じ原理です。
ドライブはこの「微妙な揺れの速さの変化」を検知して、「あ、今周波数が変化したから、これは信号だ」と読み取ります。
一定のペースで歩きながら(回転制御)、鼻歌を歌っているようなものです。鼻歌の音程が高くなったり低くなったりする(周波数変化)ことで、メッセージを伝えているのです。
2. ATIPの中身:何が書かれているのか?
このFM変調された波をデジタル信号(0と1)に変換して解読すると、ATIPという情報になります。ここには大きく分けて3つの重要な情報が入っています。
① 絶対時間情報(まさに「住所」)
CDの記録面上の位置を「時間」で表したものです。
MM(分):SS(秒):FF(フレーム)
という形式で、ディスクの内周から外周に向かって切れ目なく記録されています。これにより、ドライブは「今、開始から◯分◯秒の場所にいる」と正確に把握でき、書き込みたい場所にピンポイントでアクセスできます。
② ディスクの推奨ストラテジー(書き込みのレシピ)
ここが非常に重要です。CD-Rには様々なメーカーや素材(シアニン、フタロシアニンなど)があります。それぞれ「最適なレーザーの強さ」や「当て方」が異なります。
ATIPには、「このディスクは〇〇社製で、こういう特性だよ」という情報も含まれています。ドライブはこの情報を読み取り、「あ、これは三菱化学製のディスクだから、このレーザー出力設定で焼こう」と自動調整します。
③ 最大記録容量
「このディスクは74分(650MB)タイプか、80分(700MB)タイプか」という情報です。これを見てドライブは「あとどれくらい書き込めるか」を計算します。
3. 進化の過程:なぜDVDやBlu-rayでは変わったのか?
CD-Rで採用されたこの「ウォブル+ATIP」方式は画期的でしたが、技術が進むにつれて弱点も見えてきました。それは「隣の溝との干渉(クロストーク)」です。
CDよりもはるかに高密度なDVDやBlu-rayになると、溝と溝の間隔が狭くなりすぎて、隣の溝のウォブル(揺れ)が邪魔をして正確に読み取れなくなることがありました。
そのため、後継規格ではさらに工夫が凝らされています。
DVD-Rの場合:ランドプリピット (LPP)
ウォブルは「単調な揺れ(時計代わり)」だけに専念させ、住所情報は溝と溝の間の「土手(ランド)」の部分に小さな穴(プリピット)を点々と開けることで記録しました。Blu-rayの場合:MSK変調・STW変調
さらに高度な変調方式を使って、非常に微細なウォブルの中に確実に情報を埋め込む技術が使われています。
まとめ
CD-Rの溝(ウォブル)は、単なるガイドレールではなく、以下のような役割を果たしている「極細のアナログ通信ケーブル」だったのです。
FM変調を使って、揺れの中に信号を隠している。
その信号(ATIP)には、「現在の正確な位置(住所)」と「最適な焼き方(レシピ)」が書かれている。
私たちが何も考えずに「書き込み開始」ボタンを押すだけで失敗なくCDが焼けるのは、ドライブがこの目に見えない「溝の揺れ」を必死に読み取って調整してくれているおかげなんですね。
いやぁ何ともアナログな技術が注ぎ込まれていたんですね。このウォブルが正確に記録されていることこそが、ドライブが正確にデータを読み取ることが出来ることに繋がり、特に音楽を記録するCD-Rの場合には音質にも影響する(エラーが減るから)ということで、メディアのブランドが大切なんだそうです(DVDでも同じなんだろうけど圧縮されたデータを展開する形だから影響度は違う気がする)。
Wobble frequency
ちなみに、DVD-Rの場合もライトアトワンスで書き込むのが一番DVDとの互換性を高められるのですが、CD-Rと同じようにマルチセッションであったりパケットライティングも行えます。
そして、先の位置決めの方法がDVD-RとDVD+Rの一番の違いなんですが、+Rの規格はDVD-RAMが出てから登場したので、その際にもう一度振り返ることにしましょう。
DVD
Soraによるダイジェスト動画
NotebookLM による解説動画
NotebookLM にまとめてもらってから作った Sora動画だとこちら。
ヘッダ画像は、Gemini 君に描いてもらいました。
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