ボイスレコーダーを持ち歩きませんか?~法務担当者が実践している、最も安価な危機管理術~
私は企業でビジネス法務の仕事をしている。
契約書も作る。
トラブル対応もする。
時には訴訟対応もする。
そんな仕事をしていると、よく聞かれる質問がある。
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「録音って勝手にしていいんですか?」
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今日はそんな話をしたい。
結論から言う。
私はボイスレコーダーを持ち歩いている。
ほぼ毎日である。
別にジェームズ・ボンドではない。
MI6からの招集はまだ来ていない。
CIAでもない。
公安でもない。
もちろんゼロでもない。
ただの会社に勤務する中間管理職である。
同時に、完全変態法務でもあるが…
それなのに、なぜか「証拠」のことを考えて生きている。
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なぜ録音するのか?
理由は単純だ。
証拠を残すためである。
法務担当者の世界では、ある意味当たり前の話なのだが、人の記憶は驚くほど曖昧である。
昨日の会話ですら認識がずれる。
一週間も経てば…
「そんなこと言ってない」
「そういう意味じゃない」
「誤解された」
「認識が違う」
が始まる。
しかも厄介なことに、多くの場合、悪意があるわけではない。
人は都合よく嘘をつく。
しかしそれ以上に、
人は都合よく記憶を書き換える。
だから記録が必要になる。
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録音って違法じゃないの?
ここで必ず聞かれる。
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「勝手に録音したらダメなんじゃないですか?」
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もちろん商談や打ち合わせなら、
「議事録作成のため録音させていただきます」
と一言伝えるべきではある。
会社でやるなら個人情報保護法遵守のためにもちゃんと宣言するべきである。
しかし世の中には、それだけでは済まない場面もある。
例えば、
* パワハラ
* カスハラ
* セクハラ
* 脅迫まがいの言動
* 違法行為の指示
といったケースである。
そんな相手に向かって、
「録音していいですか?♪」
などといった場合にどうなるか??
同意しない!と言われるでしょうし、仮に拒否までしないとしても、急に人格者になる人がいる。
さっきまで怒鳴っていた人が、
突然コンプライアンス研修の講師みたいになる。
それはそれで興味深い現象である。
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水戸黄門と印籠のリスク
ただし、ここで一点、注意喚起をしておきたい。
「録音します」は、いわば印籠である。
本来、印籠を見せれば悪人はひれ伏す。
「ははーっ」と平伏して終わる。
それが時代劇のお約束である。
ところが現実のカスハラ相手は、時代劇の悪役よりもタチが悪い。
印籠を見せられても平伏しない者がいる。
むしろ、
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「録音だと?ふざけるな!」
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と逆上し、黄門様に斬りかかってくる輩すらいる。
これは時代劇では絶対に許されない展開である。
格さんも助さんも、まさかの事態に立ち尽くすレベルである。
しかし、ここで諦めてはいけない。
逆上して攻撃的になった瞬間、それすらも記録される。
つまり、相手が印籠に逆上した瞬間こそが、最も価値の高い証拠区間になる。
ただし!
逃げ足に自信がない人は、正直に名乗らず、こっそり録音することを強くお勧めする。
危機管理の目的は、証拠を取ることではない。
身の安全を確保したうえで、証拠を取ることである。
順番を間違えると、印籠を見せた瞬間に成敗されるのは黄門様自身ということになる。
もっとも、危機管理の観点から見れば、録音宣言自体は悪いことではない。
本来の目的は証拠収集ではなく、問題行為を止めることだからだ。
録音を意識した瞬間に相手の言動が改善されるのであれば、それはむしろ望ましい結果とも言える。
問題は、改善されない少数派が一定数存在するという、ただその一点である。
なお…色々不満のある状況で録音したとして、その録音をYouTubeに流す、テキスト化してTwitter(Xが正式名称だが、私にはどうも馴染まない…エックス?気持ち悪い…ダメ!って読んでしまうので😑)
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私たちは警察ではない
ここで少し誤解されがちな話をしておきたい。
私たちは警察ではない。
検察でもない。
国家権力でもない。
ただの庶民である。
テレビドラマなどでは、
「違法収集証拠だから証拠能力なし!」
という場面が出てくる。
しかし、あれは主に刑事事件や国家権力による捜査の話である。
民事の世界では、
当事者が録音した会話について、
それだけで証拠として使えなくなるわけではない。
もちろん個別事情による。
だが少なくとも、
「勝手に録音したから証拠として完全無効」
という単純な話ではない。
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スマホで十分では?
その通りである。
今どきのスマホには録音機能がある。
正直、多くの人はそれで十分だと思う。
それでも私はボイスレコーダーをお勧めしたい。
理由は実にくだらない。
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スマホの電池がもったいない。
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以上である。
いや、本当に大事なのだ。
これは汎用機と専用機の戦いである。
スマホは電話もできる。
写真も撮れる。
ゲームもできる。
地図も見られる。
つまり何でもできる量産型汎用機である。
便利だが、その分、脆さも抱えている。
録音中に電話がかかってくる。
通知が鳴る。
アプリが裏で動く。
うっかり操作してしまう。
汎用機ゆえの弱点が、録音という一点においては全部裏目に出る。
一方、ボイスレコーダーは録音専用機である。
電話もできない。
写真も撮れない。
ゲームもできない。
ただ録音する。
それしかできない。
しかし、それしかできないからこそ、その一点において圧倒的に強い。
専用機が量産機に勝つ瞬間というのは、現実にも確かに存在するのである。
一点!と言いながら複数になったが…ってついでに…
ボイスレコーダーという形状を露骨に見せることでの抑止力!これも良い効果である。
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私が持ち歩く本当の理由
私はボイスレコーダーを持ち歩いている。
別に誰かを追い詰めたいわけではない。
誰かを陥れたいわけでもない。
自分を守るためである。
そして実はもう一つ理由がある。
アイデアの記録である。
記事のネタ。
仕事の改善案。
会議で思いついたこと。
歴史の考察。
組織論の仮説。
人間は驚くほど忘れる。
「これは名案だ!」
と思ったことほど翌日には消えている。
だから録音する。
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最後に
私は企業でビジネス法務の仕事をしている。
契約書も大事だ。
法律知識も大事だ。
しかし、それ以上に大事なものがある。
証拠である。
法務とは危機管理の専門家である。
危機管理とは、問題が起きてから慌てることではない。
問題が起きた時に備えることである。
ボイスレコーダーは数千円で買える。
しかも軽い。
電池も長持ちする。
そして何より、未来の自分を助けてくれるかもしれない。
物事、最後は証拠で決まる。
正義があるかどうかではない。
事実があったかどうかでもない。
それを証明できるかどうかで決まる。
だから私は今日もボイスレコーダーを持ち歩いている。
印籠は、なるべく出さずに済む人生を送りたいとは思っているが。
もっとも、一番多い用途はトラブル対応ではなく、
思いついた記事ネタの録音だったりするのだが。
なお、別途記事にしているが、詐欺電話の類の対応や、街中での怪しい声がけにもボイスレコーダーはお勧めである
ボイスレコーダーで盗撮を疑われることはないw(スマホでやるなよ?疑われるぞw)
