創造性とケア――こころに触れる思考 第3回:言葉と回復――語ることで何が起きるのか

つらいとき、苦しいとき、「それを言葉にする」のはとても難しいものです。何をどう感じているのか、自分でも分からなかったり、誰にも伝えられないような気がしたり。でも、それでも人は、「語りたい」と思う瞬間がある。
今回は、「言葉」と「回復」の関係について考えてみたいと思います。なぜ語ることが癒しにつながることがあるのか。あるいは、語れなさの中で、それでも何かを伝えようとするとき、どんな創造性が働いているのか――そんなことを、一緒に見つめていけたらと思います。
「語る」という行為は、必ずしも誰かに向かって話すことだけではありません。たとえば日記に書く。自分に向かってつぶやく。信頼できる人と少しだけ言葉を交わす。それらはみな、「自分の経験をいったん外に出してみる」こと。そしてそこから、自分の気持ちや出来事が少しずつ形を持ち始めます。
ナラティブ・セラピーでは、「人は語ることで、自分自身の物語を編みなおすことができる」と言われています(※1)。つまり、語ることは、自分の過去や感情に「別の見方」や「新しい意味」を与える作業でもあるんです。
でももちろん、「言葉にする」ことは簡単ではありません。苦しいときほど、言葉が出てこなかったり、沈黙になってしまったり。でもその沈黙も、私は「大切な表現の一部」だと思います。
無理に話そうとしなくてもいい。話せるタイミングで、話せるかたちで、少しずつ言葉を探していく。そのプロセスそのものが、もうすでに癒しのはじまりなんじゃないでしょうか。
創造とは、必ずしも大きなものをつくることではなく、「自分の経験を、自分なりに語り直していくこと」。そうやって、少しずつ回復していく。そんなことを、この文章を読んでくださるあなたと共有できたらうれしいです。
次回は、「沈黙と創造性」というテーマで、語れなさや静けさが、どう創造の力になるのかを考えていきます。どうぞお楽しみに。
※1: White, M. & Epston, D. (1990). Narrative Means to Therapeutic Ends. Norton.
参考文献
White, M. & Epston, D. (1990). Narrative Means to Therapeutic Ends. Norton.
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