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Modern Society Story


彼女は歩いていた。クソ寒い夜だった。街の光は滲んで、ネオンが溶けていた。誰もが忙しそうなフリをしていたが、実際のところ誰もどこにも行きたくなかった。ただ足を止めたら負ける気がするだけだ。

道端で男が電話していた。何かを話していたが、内容なんてどうせくだらない。仕事の愚痴か、うんざりした恋人の話か。向こうから来た女はイヤホンをつけていた。音楽か、つまらない自己啓発の音声か。そんなもので人生が変わるなら、この街はとっくに楽園になってる。

店の窓にはクリスマスの飾りがぶら下がっていたが、誰もがそれを見ないようにしていた。祝い事なんて、腹が減ったり、金がなかったり、心が擦り切れたりしてるときにはどうでもいい。足元の水たまりが街灯の光を反射していた。誰かが笑った。でも、それがどこから聞こえたのかは分からなかったし、聞く価値もなかった。

彼女はポケットに手を突っ込んだ。寒さのせいか、それとも何かに触れたくないだけか。向こうにはスマホの画面を睨む男がいた。青白い光が彼の顔を照らしていた。その横を若い女が通り過ぎる。二人は目を合わせなかったし、言葉も交わさなかった。スマホの画面の中には、現実よりマシな世界が広がっているらしい。

誰もがそこにいた。だが、誰もいなかった。誰もが生きていた。だが、誰も生きていなかった。

信号が赤だった。彼女は立ち止まり、バッグのストラップを弄った。向かい側にも何人かいたが、みんな同じだった。ただの影。どうせ誰も他人の顔なんて見ていない。光が変わる。彼女は歩き出した。彼らも歩き出した。

みんなどこかへ向かっていた。どこでもない、どこかへ。地獄の入り口かもしれないし、ただの次のコンビニかもしれない。どっちでも大差ない。

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