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創造性とケア――こころに触れる思考 第1回:なぜ私たちは創ることで癒されるのか


こころが重たくなるとき、ふと何かを描きたくなったり、言葉を書き留めたくなったりすることはありませんか。とくに理由もなく、ただ手を動かしているうちに、少しだけ気持ちが落ち着いてくる。そんな経験をしたことのある人は少なくないと思います。

この連載では、「創造性とメンタルヘルス」の関係を見つめていきます。第1回は、そもそも「なぜ創ることが癒しになるのか」という問いから始めてみたいと思います。

創造とは、何かを生み出すこと。でもそれは、すばらしい作品を仕上げることではなく、「ことばにならない思い」や「いまここにある感情」を、そっとかたちにしてみること。つまり、創造とは自分自身を見つめなおす小さな営みであり、世界に触れる静かな手段でもあるのです。

たとえば、日記を書く。日常を整理するだけでなく、自分の内側にある声を言葉にしていくことで、少しずつ気持ちが整理されていく。心理学ではこうしたプロセスを「ナラティブ・セラピー」や「エクスプレッシブ・ライティング」と呼び、心の回復を支える方法の一つとしています(※1)。

また、詩や絵、音として現れる感情もあります。それは誰かに伝えるためではなく、自分を保つための「印(しるし)」のようなもの。創ることは、「私はここにいる」と確認する、ささやかな祈りに近い行為かもしれません。

心がしんどいときは、「意味」がつながらなくなることがあります。時間が途切れたり、自分が何を感じているか分からなくなったり。そんなときに創ることは、小さな文脈を取り戻すきっかけになります。治すのではなく、「関わりつづける」。その姿勢が、癒しを支えていくのだと思います。

次回は、「不安と創造――揺らぎの中で生まれるもの」をテーマに、心の動揺と創造性のつながりを見つめていきます。どうぞお楽しみに。


※1: Pennebaker, J. W. (1997). Opening Up: The Healing Power of Expressing Emotions. Guilford Press.

参考文献

  • Pennebaker, J. W. (1997). Opening Up: The Healing Power of Expressing Emotions. Guilford Press.

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