身体は正直、は本当?
なぜこの話をするか
医学や心理学の専門家でもない私が、こういうデリケートな話をするのは正直ちょっと躊躇いました。
でも、知ってしまった以上は伝えたいと思ったので、今日はその話をします。
テーマは「体の反応」と「心の意思」の話です。
特に女性の体に起きる「濡れる」という現象について。これ、実はかなり誤解されている生理現象です。
「濡れる」は、涙や鳥肌と同じ
まず仕組みから。
女性の体が「濡れる」のは、性器周辺の血流が増えて、粘膜から分泌液がにじみ出てくる現象です。これは自律神経、特に副交感神経の働きによって起きます。
大事なのは、この反応が「物理的な刺激」でも「心理的な興奮」でも、どちらでも引き起こされるということ。
そして、いったんスイッチが入ると、本人の意思だけで自由にコントロールできるものではありません。
これは涙や鳥肌と同じように、自分の意思だけではコントロールできない身体反応です。
ゴミが目に入れば涙が出るし、寒ければ鳥肌が立つ。
それと同じように、体は状況に応じて勝手に反応します。
「濡れた」という事実は、「本人が望んでいた」ことの証明には、実はなりません。
体の反応と、心の気持ちは別回路
研究の世界では「性的興奮の不一致(arousal non-concordance)」と呼ばれる現象が知られています。
アメリカの性科学者エミリー・ナゴスキー博士らの研究でも取り上げられている、よく知られた知見です。
本人が自覚している「興奮の度合い」と、体が実際に示す反応(濡れる度合いなど)は、一致しないことが珍しくない、という研究結果です。
嫌だと感じているのに体だけが反応することもあれば、逆に気持ちは盛り上がっているのに体の反応が薄いこともある。体と心は、思っているほど連動していないんです。
「体は正直」って、本当?
よく「体は正直だ」って言い方をしますよね。冗談っぽく使われることも多いフレーズです。
でも、ここまでの話からすると、これは実はちょっと違います。
体は「状況に対して勝手に反応している」だけで、心の本音を代弁しているわけじゃない。
むしろ「体は正直」どころか、「体と心はズレることの方が普通」というのが、今回いちばん伝えたいことです。
このフレーズが独り歩きしているせいで、誤解は両方向に起きます。
女の子側は「体が反応してしまった自分はおかしいんじゃないか」と気にしてしまうし、男性側は「体が反応してるなら大丈夫だろう」と勘違いしてしまう。同じ誤解の、ふたつの現れ方です。
この誤解が生む、ふたつの傷つき方
この知識が広まっていないことで、実際に起きている問題がふたつあります。
ひとつは、パートナー間の誤解。「濡れているからOKなはず」「感じているのに拒否するのはおかしい」という思い込みは、悪意がなくても、相手を深く傷つけることがあります。
もうひとつは、被害を受けた側の自責。
「体が反応してしまった。本当は自分も望んでいたんじゃないか」と、被害者自身が苦しんでしまうケースが実際にあります。
これは性暴力被害者支援の現場でも、繰り返し取り上げられている問題です。
でも、医学的にはっきりしていることがあります。
体の反応があったかどうかは、心が同意していたかどうかの証明にはならない、ということです。
知っておいてほしいこと
体が反応することと、心が望んでいることは、別の仕組みで動いている
「濡れた」という事実だけで、相手の気持ちを決めつけない
もし誰かに何かをされて体が反応してしまったとしても、それは「望んでいた証拠」ではない。
あなたのせいでも、変なことでもない
同意とは、体の反応ではなく、相手が自由な意思で「そうしたい」と伝えていることです。
迷ったときは、体ではなく言葉と意思を尊重する。
それが、お互いを大切にする一番確かな方法だと思います。
女の子を守れるのは、女の子自身と、周りの男性たちだと思っています。
だからこそ、この知識はもっと広く共有されるべきだと思い、今回言葉にしてみました。
性は、特別に怖がるものでも、軽く扱うものでもないと思っています。
だからこそ、正しい知識を知り、お互いの気持ちを尊重できる人が増えてほしい。
この記事が、そのきっかけになればうれしいです。
