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「子どもに迷惑をかけたくない」──現場で聞いた墓じまいのリアル。

自分でやると意外と大変な理由を解説


あの日の言葉

訪問リハビリの仕事をしていると、少し離れた話題を打ち明けてもらうことがある。

ある80代の女性の利用者さん(Aさん)が、ポツリとこう言った。

うちのお墓、誰も管理する人がいなくてどうしたらいいんかねぇ

Aさんは一人暮らし。お子さんは関東の都市部にいて、実家のお墓は車で1時間以上かかる山間の寺にある。
年に一度のお参りも、体が思うように動かなくなった今では難しくなってきた。
「息子に管理させるのも申し訳ない。でも墓じまいって、どこに相談すればいいのかもわからなくて」と、困り顔で続けた。

この話、決してAさんだけではない。お子さんが遠方に住んでいたり、身寄りがいなかったり。「子や孫に負担を残したくない」という思いが、高齢者の心の中で静かに膨らんでいる。

今回は、現場で感じたそのリアルを、制度の話と合わせてお伝えしたいと思う。



なぜ今、墓じまいが増えているのか

墓じまいへの関心が高まっている背景には、いくつかの社会的な変化がある。

・少子高齢化と核家族化
・地方から都市部への人口集中
・墓地の管理料や法要
・お墓を移す際の費用(改葬費用)といった経済的な負担

こうした事情を受けて、永代供養墓(えいたいくようぼ)や納骨堂、樹木葬といった「承継者がいなくてもよい」供養の形が広がっている。
永代供養墓とは、寺院や霊園が遺骨を管理・供養してくれる形式で、子どもへの引き継ぎを前提としない

株式会社鎌倉新書が2026年1月に実施した「第17回 お墓の消費者全国実態調査(2026年)」によると、お墓を選ぶ際に重視する点として「継承者不要」を挙げた人が38.8%にのぼり、購入したお墓の種類では樹木葬が47.4%と最も多かった(出典:株式会社鎌倉新書 プレスリリース 2026年3月)。「後の世代に負担を残したくない」という意識が、数字にもはっきりと表れている。


墓じまい、何がそんなに大変なのか

「お墓を返すだけでしょ?」と思う方もいるかもしれない。でも実際の墓じまいには、複数のステップが必要だ。大まかに整理するとこうなる。

(株)くらしの友  
  1. 親族の同意を得る

  2. お墓の現状確認(遺骨の数、墓石のサイズなど)

  3. 現在の墓地管理者(お寺や霊園)への申し入れ

  4. 新たな納骨先を決める

  5. 石材店などへ墓石撤去を依頼する

  6. 改葬許可証を取得する(行政手続き)

  7. 遺骨を取り出す(魂抜きの儀式も必要)

  8. 墓地を管理者へ返還する

(出典:お墓の引越し&墓じまいくん

特に難しいのが、①親族の合意⑥改葬許可証の取得だ。

親族の中には「お墓を動かすなんて」と強く反対する方もいる。書類が揃えば行政手続きは進んでしまうが、親族の合意なしに進めると後々深刻なトラブルになることもある。感情的な問題は、手続き以前の問題なのだ。


市役所に行けば解決する?──改葬許可証とは

「墓じまいの手続きは市役所でできる」という認識はある意味正しい。ただし、市役所でできることは「改葬許可証(かいそうきょかしょう)の発行」という行政手続きに限られる。

改葬許可証とは、現在のお墓から遺骨を取り出し、別の場所へ移す(改葬する)ことを法的に認める書類だ。
「墓地、埋葬等に関する法律」に基づくもので、この許可証なしに遺骨を動かすことは違法になる場合がある。

手続きの順番が重要で、先に新しい納骨先を決め、「受入証明書」をもらってからでないと、市役所は申請を受け付けない。「とりあえず許可証だけ先に」という流れにはならないのだ。

必要な書類は主に以下の3点。

  • 改葬許可申請書(現在のお墓がある自治体の窓口またはHPから入手)

  • 受入証明書(新しい納骨先から発行してもらう)

  • 埋蔵証明書(現在の墓地管理者に記入・捺印してもらう)

さらに注意が必要なのが、申請先は「現在のお墓がある自治体」であること。自分の住民票がある市役所ではない。Aさんのケースでいえば、ご自身は栃木市在住でも、お墓が別の市にあれば、そちらの市役所が窓口となる。遠方の方は郵送申請が可能かどうかも事前確認が必要だ。

(出典:墓じまいは市役所に相談できる? | BATON(證大寺)


行政書士ができること・できないこと

こうした行政手続きの部分を代わりに進めてくれるのが、行政書士だ。具体的には以下の業務を依頼できる。

  • 改葬許可の代理申請

  • 戸籍謄本の取得(故人との続柄証明のため)

  • 現在の墓地管理者からの埋蔵証明書の取得代行

  • 改葬許可証の受け取り・提出

できないこと
・お墓の所有権や祭祀承継の決定を勝手にはできない
・石材店や墓地管理者の業務を「代行」することはできない
・弁護士や司法書士の業務を代行できない

費用の相場は、改葬許可証の取得代行で1件あたり約7万円程度とされているが、行政書士によって異なるため、事前に複数から見積もりを取ることをお勧めする。

(出典:墓じまいを行政書士に依頼するメリット | お墓の引越し&墓じまいくん


まとめ。「考えておく」が、一番の備えになる

墓じまいは、決して「簡単にできる手続き」ではない。親族の合意、遠方への移動、複数の書類準備、お寺との折衝──それぞれに時間も労力もかかる。体が動くうちに、あるいは認知機能が保たれているうちに、「考えておく」ことが本当の意味での備えになる。

もし「うちのお墓、どうしよう」と思っているなら、今日がその「考え始める日」にしてもいい。
一人で全部抱え込まずに、行政書士や専門家に相談することも、立派な選択肢のひとつだ。


【参考資料】

  • 株式会社鎌倉新書「第17回 お墓の消費者全国実態調査(2026年)」 https://www.kamakura-net.co.jp/newstopics/12153/

  • 「墓じまいは市役所に相談できる?」BATON(證大寺) https://shoudaiji.or.jp/baton/post1486/

  • 「墓じまいを行政書士に依頼するメリット」お墓の引越し&墓じまいくん https://ohakahikkoshi.jp/information/graveside-public-notary/


※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の手続きについては、お墓がある自治体の窓口や専門家にご相談ください。

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