ゲムマ2025春に出展して、失敗したことと原因と対策
新刊が2部しか売れませんでした。
話としてはそれで全部です。以下は、自分の考えを整理するために原因っぽいことをつらつら並べつつ、対策を思いつくものは書いていきます。
0.新刊について
今回の新刊は『ルールズ・フォー・リーディング フランス語編』と言いまして、フランス語のボードゲーム説明書を読むためのガイドブックです。BOOTHの販売リンクを貼っておきますので、ご興味のある方は見てみてください。
趣味でフランス語を勉強して2年半になりますが、説明書を読めるところまで語学レベルを上げるのは当初から目標としてずっと持ってました。少し前にDELF A2(英検準2級ぐらいの試験)を取れたことだし、そろそろチャレンジしてみてもいいのでは? と思いまして。
まだ初級者ですから大した内容は書けないだろうけど、自分用のリファレンスも兼ねて頻出単語とか文法とかをまとめておけば、少しはニーズがあるんじゃないか。そういう本です。前半で教科書っぽく文法説明を最低限だけ入れて、後半で実際の説明書の構成に即した解説をしています。
1.宣伝不足
直接的な原因はこれに尽きます。前日金曜の朝5時まで徹夜して書いてたから内容をとにかく揃えることしか考えてなくて、木曜までゲムマ公式サイトにも自分のサークルサイトにも情報を一切載せてませんでした。考える余裕がなかったし完全に忘れてました。自省するまでもなく情報を載せなければお客様が新作の存在を知らないのは当たり前で、これで売れるほうがむしろ謎です。
告知ツイートはしてましたし、「きたこしちゃんねる」さんのゲムマ直前作品チェック配信にも応募してご紹介はしていただいたんですけど、それだけで足りるほど甘くはない。書ききる目処が立つまでは宣伝することへの負い目というか、宣伝するよりも内容を先に充実させるべきだという義務感があったんですが、さすがにやらな過ぎました。新作の内容をお客様がチェックできる場所を作るという、出展者としての基礎動作が未だに身についていません。
2.設営準備不足
1と似たような感じです。ブースバナーを作って後ろに立てる、新刊のポスターを机前面に貼る、サークルクロスを作る(いいかげんこれやりたい)、通りかかったお客様がふと見るような設営という観点でもっとできたことはありました。やらなかったのは執筆に時間を食いすぎたからです。仕方ないといえば仕方ないし、でもやることやらないとダメだなと痛感したのも事実でした。
今回は島のカドという良い場所をいただいたのですが、そういうときに限って、何も……! 用意できてない……! 人が通りやすく目につきやすい位置ではある一方、通路が広めだったので「両脇のサークルの内容を見ながら歩く」という動き方がしづらいと感じました。この傾向はおそらく今後も続くので、今までよりもさらにお客様に立ち止まってもらう工夫が必要でしょう。机の上に売り物を乗せるだけでは見えにくく、立った状態の視線の高さで見えるコンテンツ、たとえば新作の概要紹介やターゲットユーザーへのフック、短く直感的なキャッチフレーズ、そういった準備が必要です。なんでだよ。俺がやりたいのは趣味のゲーム作りなんだ、マーケティングじゃないんだ。しょうがないからやるけど、つらい。

3.新作がなかなか決まらなかった
これは執筆が遅れてスケジュールが逼迫した理由です。もともと今回は違う新作を考えていてルールのテストも昨年12月には概ね終わっていたのですが、作りながら「このゲームはちゃんとイラストを手配して、極力早く入稿して原価も下げて、宣伝や試遊もして売ったほうがいい内容ではないか?」と思い直して、その作品を秋に延期しました。なので何かほかに新作を用意したい。
そっからが難航しまして、3作ぐらい作ってはつぶしました。
1作目は野球の時事ネタでしたが、テーマが賞味期限切れっぽいと判断して没。
2作目は、サークルカット入稿時にちょうど米価高騰がニュースになっていたので、米をテーマにした作品を少部数だけ作ろうとしました。萬印堂さんのベーシックパック(カード36枚までの小箱が50部だけ作れる)は3月まで入稿できたので、それに間に合わせたかった算段です。なので資料を取り寄せて読んだり、ルールを少しずつ書き進めたりしたものの、テーマの理解と咀嚼が追いつかなくて初回実装まで2ヶ月ぐらいかかりました。結局こちらは時事ネタのつもりがちゃんとしちゃって思いのほか大掛かりな内容になってしまい、急ごしらえするよりデベロップをちゃんとしたほうがいいという結論になり、見送りです。
これはテストキットまでは作ってるので、今後日の目を見る機会があるかもしれません。
3作目は、これもベーシックパックに入稿しようか悩んだ、2人用のトリックテイキングです。テストの評判は良かったです。が、プレイの幅が狭いのが明らかで、このままの状態だと初回は楽しいけど2~3回リプレイするにも足りないと判断しました。個人的な基準として、パッケージゲームを作るなら10回はリプレイに耐えるようにしたいです。修正は当てられますがそのためにはデベロップとテストの工数が以下同文
という紆余曲折があって、からの「もう本を書くしかない。本なら1週間前までに入稿すれば間に合う。ここ数年フランス語を勉強してるし、形にするいい機会だ」という決断でした。ですから原稿を書き始めたのが4月です。ここまで新作に苦心したのは経験がありません。どうも育児を始めてからというもの、発想力や思考力、粘り強さ等の同人活動に欠かせないスキルが大きく落ちたように感じます。子供はもう7歳です。元気です。かわいいです。
4.印刷所入稿を落としてしまい、かつコピー本にしては高額
そんなわけでギリギリからの執筆でしたが、やっぱり印刷所入稿を落としました。原因はいくつかあります。いやそりゃ4月から書いて普通は5月中旬には間に合わないだろって言われたらそうなんですけど。
でも一番は、自分がフランス語初級者だから、文法や単語をひとつひとつ調べるのにも本業である英語の倍以上時間がかかったことです(私の本業は英日翻訳の校正・翻訳です)。読めないものを読めるようになる過程で苦労するのは当たり前で、この苦労自体は執筆に必要なものではあります。でも〆切には間に合わせなきゃ発表できないじゃない? だから書ける書けないじゃなくて最後は書くしかないんです。”Do or do not. There is no try.(やるか、やらないかだ。やってみるではない)” です。遅れた、落とした、だからコピー本を出すしかない。装丁や版組を少しでも良くしたかったけど、できないならセカンドベストをやる。
分量は76ページ、価格は1000円にしました。書きたい内容は76ページでも足りませんが、キンコーズでコピー本を作るときの最大が80ページです。紙の厚さ的にそれが限界です。30部コピー本を刷って印刷費が1万円ぐらいで、500円だと全部売れても原価回収で手一杯になるから、1000円ぐらいが損益分岐点の設定としては妥当です。
ただ、いかんせん地味というか無骨というか、前回の英語説明書を書く同人誌『ルールズ・フォー・ルールズ』第2版はそれでも事前宣伝が跳ねてくれて結構部数を出せたんですけど(こちらも電子書籍をBOOTHで売ってます!)、それは製本して宣伝もきっちりかけたからであって、今回はコピー本で1000円という、前回よりもさらに不利な条件での戦いです。ていうか俺はなぜこれで30部行けると思った? 寝不足は判断を鈍らせます。
(上のリンクは今回の新作ではなく、英語説明書を書くほうのガイドブックです。こちらは好評をいただいて紙書籍は完売し、電子書籍のみです)
5.フランス語の需要が少なく、敷居が高い
こうして見てきた通り、本の内容がニッチである。競合がいないし誰も書いてくれないから自分で書いた。それ自体はまあまあかまいません。ただ、それにしても「フランス語のボードゲーム説明書を読みたい」というニーズ自体が存在するかといえば、需要を計算して書いてたわけではないので、わかりません。ニッチだと部数の見当が立たないのがよろしくない。
実際どうだったかは、宣伝不足という前提があるので部数だけからニーズがないと判断することはできませんが、何人かブースに来てくれた友人知人の多くから「フランス語って発音難しいよね」「(西ヨーロッパの言語の中で)一番難しそう」というコメントを貰いました。
自分はそこまで思ってなくて、逆にフランス語の発音は一度感覚がわかってくれば英語よりむしろ易しいという感覚なので、出発点から自分の認識がチューニングをミスってたな、と気づきました。英語と違って学校で習っていない人のほうが多い言語である以上、本当の入門レベルのコンテンツも含めて書いたほうがハードルは下げられたかもしれません。次にドイツ語版を書くときはそうします。なお、初級ドイツ語を覚えるのにまた2年半かかる見込みです。
6.ターゲットユーザーと現在のゲムマ客層が微妙にマッチしてない気がする
これは新刊『ルールズ・フォー・リーディング』もそうでしたし、うちのサークル自体の客層としてもそうです。うちはドイツゲーム/ユーロゲームを作るサークルで、メインターゲットはミドルゲーマーです。自分が遊びたいゲームを自分で作りたいから10年前に同人活動を始めて、いざ作ってみるとテストプレイを繰り返してるうちに自分の中で飽和してしまうという想定外こそあるものの、基本の立ち位置は変わりません。国内・国外両方のゲーマーに通販や委託でリーチできてるのは、そこのスタンスがぶれてないからだと思います。
そういう「ユーロゲームが好きなミドルゲーマー」がゲムマのメイン来場者かというと、分析したわけでもなんでもないんですけど、肌感覚としては違います。一般入場の方はもう少しライトなゲームを求めている方が多いのではないか。私は遊ぶ分には軽いゲームも好きですが、自分で作るとある程度の重さがどうしても出てしまいます。予算の都合上コンポーネントが少なくはなるものの、ゲームウェイトはそこまで軽くない。そこにミスマッチがたぶんある。

沢山のイベントに出展するのは交通費も出展料もかかりますし、宣伝をそのたびに打つ必要もあるし、育児勢としては出展先を最小限に絞っていきたいので、宣伝効果が一番出やすいゲムマがどうしても中心にはなります。他のイベントでうちの作品がより売れるかというと、たぶん大差はないでしょう。
今回は特に思いましたが、当日見てルール説明を聞いて、その場で購入してくださるお客様は減りました。出展を始めた約10年前に比べて明らかに少ない。ですから、そこには頼れません。もちろん「2.設営準備不足」で書いたような対策はしたほうが当日のお客様を増やせますから次回以降できる範囲ではやりますが、うちの場合は事前情報のウェイトが特に大きい側のサークルでしょう。
7.そして、雨
当日は同じ幕張のZOZOマリンでロッテ-日ハム戦が開催予定でしたが、雨で試合前中止になるくらいには降ってました。予報ではお昼ごろには止むという話でしたが14時頃になっても雨脚が強まってる。それで来場を見送った人もいそうな気がする。

今回の出展はすべてが後手後手でした。そんなときもある。
1人で回してるサークルですから時間リソースは限られており、ゲーム自体の面白さを最優先に作るのは今後も変わりませんが、できる工夫はしていきます。
