高等教育の「ユニバーサル化」とは何か
近年、文部科学省は「より多くの人が高等教育を受けられる社会」を目指しています。
これは単なる大学進学率の向上ではありません。
背景にあるのは、高等教育が「エリート段階」から「ユニバーサル段階」へ移行しているという考え方です。
もともと高等教育は、一部の限られた人が受けるものでした。しかし現在では、
* 大学
* 短期大学
* 専門学校
などを含めると、多くの若者が高等教育へ進学する時代になっています。
マーチン・トロウの理論
この変化を説明する際によく使われるのが、社会学者マーチン・トロウの理論です。
トロウは高等教育を、
* エリート段階
* マス段階
* ユニバーサル段階
の3つに分類しました。
エリート段階
一部の特権層のみが大学へ進学する。
マス段階
進学率が15〜50%程度になり、中間層にも広がる。
ユニバーサル段階
進学率が50%を超え、多くの人が高等教育を受ける。
現在の日本は、まさにこの「ユニバーサル段階」に入っているとされています。
なぜ高等教育が必要になったのか
背景には、社会構造の変化があります。
① 知識社会化
現代社会では、単純労働よりも、
* 情報処理
* コミュニケーション
* 問題解決
が求められるようになっています。
② AI・DX時代
AIやデジタル化の進展により、学び続ける力が必要になっています。
③ 職業の高度化
従来よりも高い専門性が求められる職種が増えています。
その結果、「高校卒業だけでは難しい」という場面が増えてきたのです。
「大学へ行くのが当たり前」の時代
現在では、多くの家庭で、
「大学進学が標準ルート」
として認識されています。
かつて大学は、
* 一部の優秀層
* 富裕層
のものでした。
しかし今は、
* 地方出身者
* 女性
* 社会人
など、多様な人が高等教育へアクセスするようになっています。
文科省が目指す方向
文部科学省は、
* 経済格差による教育機会格差の縮小
* リカレント教育(学び直し)
* 多様な学習機会の確保
を重視しています。
つまり、
「若い一部の人だけの大学」ではなく、
人生全体を通じた学びの場」
へ変えようとしているのです。
無償化・支援制度の拡充
その一環として、
* 高等教育無償化
* 奨学金制度の拡充
* 給付型奨学金
なども進められています。
これは、
「経済的理由で学びを諦めない社会」
を目指す政策です。
一方で起きている問題
しかし、ユニバーサル化には課題もあります。
① 大学の質保証
進学率が上がる一方で、大学教育の質をどう維持するかが課題になります。
② 「大学に行く意味」の希薄化
「とりあえず大学へ」という風潮が強まり、目的意識が薄くなる場合があります。
③ 学力格差の拡大
同じ大学の中でも、学力や意欲の差が大きくなることがあります。
「入るのが難しい大学」から「学び続ける大学」へ
ユニバーサル段階では、大学の役割も変わります。
従来は、
* 入試による選抜
が大学の中心機能でした。
しかし今後は、
* 学び続ける支援
* 多様な学生への対応
* 社会との接続
が重要になります。
高校教育への影響
この流れは、高校教育にも大きな影響を与えています。
大学が求めるものが、
* 暗記力
* テスト得点力
だけではなく、
* 主体性
* 探究力
* 表現力
へ変化しているからです。
そのため高校でも、
* 探究学習
* PBL
* STEAM教育
などが重視されるようになっています。
「学歴」より「学び方」の時代へ
ユニバーサル化が進むと、「大学卒」という肩書きの価値は相対的に下がります。
その代わりに重要になるのが、
* 何を学んだか
* どう学んだか
* 学び続けられるか
です。
おわりに
高等教育のユニバーサル化とは、単なる進学率上昇ではありません。
それは、
* 学びが一部の人の特権ではなくなること
* 社会全体が学び続ける方向へ進むこと
を意味しています。
一方で、その中では、
* 大学の質
* 学ぶ意味
* 学び方
が改めて問われます。
「大学へ行くこと」がゴールだった時代から、
「大学で何を学び、その後どう生きるか」が重要になる時代へ。
高等教育はいま、大きな転換点に立っているのだと思います。
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