075_20250828_Thisコミュニケーション
基本情報
六内円栄(ろくだいまるえい)さん執筆のサバイバルサスペンスマンガ
集英社「ジャンプスクエア」にて、2020年5月号から2024年4月号まで連載
全49話、全12巻で完結済み
大まかな紹介
20世紀後半――地球に突如として現れた謎の生物「イペリット」。
敵と認識された人類の多くは滅ぼされ、地上は廃墟と化していた。
生き残りのデルウハは、絶望の果てに自ら死を選ぶが、ある研究所の人間によって一命を取り留める。
その研究所では、イペリットに対抗するべく造り出された少女たちがいた!導入
長野県松本市、雪に埋もれた瓦礫の中に「ようこそ上高地へ」の看板
極寒と思しき廃墟に、ゴーグル&マスクのフル装備防寒具の男が登っている
さらに登ったところで、男はマスクとゴーグルを脱ぎ去る
「ブハッ!やっとガスの高さを抜けたか…」
「パンと塩漬け肉…それだけあればいいんだ。世界がガスに埋もれようと、化け物を殺す仕事につかされようと構わん」
お目当ての施設が破壊されているのを見つけた男
「メシってのは世界より先に死ぬもんだ、だがまさか…パンとサラミの後追いをするハメになるとはな」
男は、斧を首に突き当て、自害をしようとする
回想
20世紀後半、地球に突然湧いた生物「イペリット」は、地球を自分たちによって住みやすい場所に作り変えたようだった、
人はその障害、敵認識された人類は滅ぼされ、21世紀、地上は彼らが出すガスに満ちた廃墟となった
生き残りが居るとすれば、彼らが現れる前から局地に地下施設を作っていた者たちだけである
自害する男の後ろから、巨大な地下施設が現れる
その横のハッチから、「よみ」と呼ばれる少女が出てくる
「うるさい!なんで私が他人の失敗で説教されなきゃいけないの!」
勝ち気な少女は、首に斧が突き刺った男を見つける
「所長、ちょっとこっちに来たらいいんじゃない?」
「けが人が居るら素直にそう言ってくれ!」
施設内に運ばれ、治療される男
食べ物のうわ言を言う男に「健康的なうわ言だな」
食事に貧してなさそうな男の体つきに疑問を持つ所長に職員は言う
「聞かずとも調べてしまえば良いんですよ、所長がスキなタバコ持ってるかもですし、命を助けた役得と思って…」
「やめなさい、これ以上人の心を失うんじゃない…!」
目覚めた男に所長が施設の説明をする
ここは約80年前の大戦の折に作られた研究所、
軍人は終戦で居なく成ったが、研究者を中心に200名ほど生活している
あまりおおっぴらに出来る研究でもないので、普段は隠している
外を歩きながら礼を言う男
「デルウハです、タバコは持っていませんよ」
「え?いや探してるわけではないのですが…人が再び豊かになって嗜好品が作れるようになったら、思っきり吸ってやろうと一本大事に持ってるんです」
「ではその夢の手伝いをしましょう。所長殿、契約を。日々の食事をいただければ」
「その前にデルウハ殿!あなたはどこのどなたなのですか?」
その瞬間、巨大な「イペリット」と呼ばれる怪物が現れる
逃げて戻る提案をするも「この施設に乗られたら天井が崩れて下の設備も…」と渋られる
「じゃあどうやってこの研究所をもたせていたんです?」
「うちには”ハントレス”たちが」「女狩人?」
眼の前のハッチから、小柄な少女が飛び出してくる
少女は、突き刺した剣で化け物の巨体を引き上げ、地面に叩きつける
デルウハは問う「なるほど、あんたら人間のカラダいじっくてんだな?」
所長は申し訳の無い顔をしながら話す
「再び人間の時代がくるまでです、決して本位では…」
「凄いじゃないか!勝ったも同然だ!」
明るい顔で受け入れるデルウハ
「いやあ頼もしい!優秀な兵士を作り食料を守っている!ぜひとも俺を雇って頂きたい!」
ハッチからもう一人少女が歩いて来る
「よみちゃん、だめだよまた一人で」
「弱者が話かけないでくれる?」
さらにもう一人少女が出てきて暴れだす
「獣のようでしょう?彼女らは供出というカタチで手放された子供を薬漬けにして作る戦士です。どこかで捨てられたという気持ちがあるのでしょう。皆功を急いで暴れるばかり、強調よりも周りを出し抜きたい、自分に価値があるはずだ、と」
「これが世界最後の軍隊とはね」とデルウハ
「人々は殺戮とガスから逃れて高地へ向かった、そして畑にもならない荒れ地を奪い合った」
「怪物の前で戦争ですよ?残ったのはイペリットだけだ」
所長は絶望しながら言う
「ハントレス達といい、たった一人、軍事の指導者が居ればよかったのに、もうどこにも…」
ハントレスの戦いぶりを観ていたデルウハは驚いていう
「おい待て、普通に二人死んでるぞ?」
「彼女らは耐久力は人並みで、毎回何人か犠牲が出ます」
「まさか、あの子供は死なないのか?」
嬉しそうに答える所長
「そうです、性格には再生なんですがね。一定の損傷を受けると仮死状態になり、死ぬ約一時間前に損傷がない時の自分を再生するのです」
戦いの混乱で、同士打ちをしてしまうハントレス
「よみがむつを殺して逃げた!」
所長「いつも言ってるんだ、仲間と強力しなさいと!」
「うるさい!私は悪くないんだからね!」
興奮状態の少女に、デルウハは言う
「おい、戦死者の2割は同士討ちだ、気にするな」
コートを脱ぐデルウハ、中から勲章付きの軍服が姿を表す
「こちとら専門家だぞ!砲をもってこい!戦争ってやつを見せてやる!」
砦の上の砲台から、イペリットを正確に撃ち抜くデルウハ
「砲は数学だ、未来位置、気温・気圧・風速風向…正しく測れば弾は9割方当たる」
照れながらハントレスの少女”よみ”はデルウハに頼む
「さっきの、皆の前でもう一回言ってほしいんだけど」
所長が感動している
「おお、あのよみが他人を頼っている…軍事指導者!これで研究所は守っていける…」
デルウハはよみに言う
「味方殺しを擁護してもらいたいんだな?もっと簡単に許してもらう方法があるんだが…後ろを向いて目を閉じろ」
よみの後ろから斧で殺害するデルウハ
デルウハは所長に言う
「死者の2割は同士討ち。無能な指揮官、足を引っ張る馬鹿、その他おおよそ生きてると都合の悪い者、戦場が混乱すれば仲間の弾が飛んでくる、常識をご理解いただけたようで」
「なぜ”よみ”の殺害を?」
「都合が悪い。プライドが高く孤立していたのに味方を殺した。仲間との関係は修復不能。加えて本人がひどく気に病んでる。コレじゃ戦争に勝てん。記憶リセットで自信を取り戻すでしょう」
嬉々とした笑顔でデルウハは言う
「残った二人も殺せば、全員の記憶から消え、仲違いも無かったことに出来る。都合の悪いことは全て少々服を汚すだけで無かったことに出来る最高の兵士です!」
「いい部隊になりますよ彼女たちは。さあ所長、契約を!」
契約のち速やかに二人のハントレスを殺害するデルウハ
「今回のことが彼女たち知られたら、どうなりましょう?」
「殺人鬼とその共犯として怪力の化け物どもと直接対決だ。」
デルウハを雇う決断に疑問を持つ所長、そこに駆け寄ってくる少女たち
「所長!全員再生中だったんだけど、イペリットは?」
「このデルウハ殿が、お前たちが倒せなかった分を大砲で倒しくだsだった」
「自己紹介くらいさせろ。俺はデルウハ。毎日パンとサラミが食える立場を守れるなら、化け物を殺す仕事に就かされようと構わない、そういう男だ。よろしくな!」
ここまで一話。
感想
「何かを主眼で描くため」に、世界やルールなど「舞台装置と舞台範囲を整える」という技術の巧みさが光る
例えば、ゲームとかでも「こうこう、こういうルールだから、こういう考えで攻略すんだな」というルールづくりとかあるじゃないですか
カードゲーム、例えばトランプなら「ババ抜き」というルールで世界で数兆回遊ばれてるのだろうし
コンピュータゲーム、例えばスーマリなら「左右移動とジャンプだけで右に進む面を32個クリアする」とか
今回「人心を操って敵に勝つ騙し合い」を主眼に一話完結で描くため、ルールと舞台装置の作り方がめちゃくちゃ考えられてて感心する

主人公の心理と行動が、まあ例外がなく「悲劇的・破壊的方向」である
一貫しててむしろ清々しいほどに「悪性」である
例えば
「頼られた事無い人が頼られる事を知って背中を預けられるようになりました」というようなエピソードがああったとして
「家族の愛に飢えてる子供が愛を知り前を向けるようになりました」というようなエピソードがあったとして
最後には、例外なく容赦無く台無しにする
「人でなし」「クズ」を地で行くクレバーである
「信頼する」でなく「感情を持たないことにより無機物の兵器として扱う」方向
「仲間とのキズナを育んで戦う」方向より「ギスギスを利用して仲間を調伏」方向
「敵に勝ったし仲間同士の絆も深まった、だから記憶を消しても消さなくてもどちらでも良い」場合も、必ず「殺害して記憶消去」
そんな「救いようのないマイナス属性主人公」を真ん中に据えて、このマンガで「描きたかった本質」ってなんだろうか?
「味方(人間兵器)すらも場合によっては抹殺対象である、全包囲心理戦バトル」を一話完結で、かなと
敵の攻略だけなら「天才的軍師・軍人モノ」として、クリーチャーの討伐だけなら「モンスター征伐モノ」として、ある程度飽和しているけれど、この味付けだと新規性がある
いわば「もう敵も味方も”自分以外”には信用を置けない(置かない)疑心暗鬼の戦い」は、かなり脳に噛みごたえがあって面白い
頭がスッキリしてる時、脳の容量が空いてこれに集中出来る時、または「なんもかんも忘れて気分転換したい」とかの時に読みたい作品だなーと
舞台装置や制約をしっかり練ってあるので、ストーリーを楽しめる
勿論、描きたい「本質」なので、それこそが楽しみどころである
「一話完結」はマンネリを招き安いけれど、そこも「世界の制約」や「その話数内の制約」を変遷することで、毎回新鮮に新しいストーリーメイクをしている
これだけ巧みで唸らせる作品なのに「受賞歴やメディア展開が今の所ない」というのが不思議
総評
一話完結の「味方(人間兵器)すらも場合によっては抹殺対象である、全包囲心理戦バトル」モノを読みたい方にお勧め
唸らせるストーリー展開の「頭を熱くする」作品が読みたい人は、思考する頭の余裕を持った状態で娯楽として読んでほしい
最後までお読みくださり、ありがとうございます!
1mmくらい「ええな」と思って頂けましたら、サポートをお願いします。
(この原稿を使ってるYouTubeチャンネルの活動費に当てます。)
