経産省「DXレポート2」をビジネスに活かすための5つのポイント
2021年現在、様々な企業・組織でキーワードになっている「デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)」。
でも、実際にDXとは何なのか?なぜ注目されているのか?どんなことをすればよいか?…に悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
そういった悩みに対応するべく、DXのために必要なアクションと政策の手引きとして、2020年12月28日に経済産業省 デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会より「DXレポート2(中間取りまとめ)」が発行されました。
この「DXレポート2」、2018年に発行された「DXレポート」の続編という位置づけです。タイトルに「中間とりまとめ」とあることから、ここから最終化されていくものと思われます。
(2021年10月追記:2021年8月31日に追補版となる「DXレポート2.1」が発行されました。「DXレポート2」で明らかにできなかった、デジタル変革後の産業の姿やその中での企業の姿を示すとともに、既存産業の企業がデジタル産業の企業へ変革を加速させるための政策の方向性が語られています。)
DXレポート2(中間とりまとめ)は内容が非常に示唆深く、DXの理解・推進のみならず組織変革にあたり活用できる視点とヒントが多かったので、まとめ&シェアします。
【なぜ「トランスフォーメーション」を「X」と表記するの?】
英語圏では、TransをXと省略する慣例があります。そのため、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformaition)の略称として「DX」と呼ぶようになっていきました。
■どんな資料なのか?
レポートは大きく、「本資料」(3つ)と「ワーキンググループ1報告書」(4つ)で構成されています。
※ワーキンググループ1報告書については後述
本資料
①DXレポート2(サマリー):全3ページ
②DXレポート2(本文):全56ページ
③DXレポート2(概要):全33ページ
以下、サムネイルをクリックすると当該資料が開きます。
①DXレポート2(サマリー)
②DXレポート2(本文)
③DXレポート2(概要)
■どんな人向けか?
ターゲットは明記されていませんが、レポート内では、「企業」「ベンダー企業」を意識した言説が多く見当たります。資料を読みこんで、以下のような方がターゲットになるのでは…と感じました。
1)DXを推進する民間企業・組織の経営者・CIO/CDXO~リーダークラス
2)DXを支援するベンダー企業のコンサルタント・営業・エンジニア
3)DXがどんなものか、なぜ注目されているかを知りたい一般の方
■「サマリー」「概要」から読もう
上級者の人をのぞき、個人的におすすめの読み方は「①DXレポート2(サマリー)」→「③DXレポート2(概要)」→「②DXレポート2(本文)」の順です。
「②本文」は文章メインなのに対し、「①サマリー」と「③概要」は図表も多く、この読み方をすることで、全体像→具体論の流れで内容を掴みやすいためです。
DXレポート2(サマリー)
表紙含め全3ページ構成です。
多忙な方や、全体像だけ掴みたい方は、サマリーをざっと概観するとよいでしょう。
DX加速シナリオ(サマリーP2)

企業のアクションと政策(サマリーP3)

DXレポート2(概要)
表紙含め全33ページです。以下の内容になっています。
(構成は「②DXレポート2(本文)」全56ページともおおよそ対応しています)
DXレポート2(概要)目次
1. 検討の背景と議論のスコープ
2. DXの現状認識とコロナ禍によって表出したDXの本質
3. 企業の経営・戦略の変革の方向性
4. 政府の政策の方向性
5. 今後の検討の方向性
詳細目次は以下のようになっています。

ここから先は、レポートが伝えている論点を5つのポイントに絞ってみていきます。
なお、僕自身の主観・解釈に基づくまとめですので、認識違いなどあればご指摘・コメントいただけると幸いです。
【日本では、この5年間で注目度が急上昇】
以下のグラフはGoogle Trendでキーワードの検索頻度解析をしたものです。
日本国内では、2015年ころから一気に注目度が急上昇していることがわかります。

■Point1.新旧レポートの違い
1つ目のポイントとして、「新旧レポートの違い」に注目しました。以下の画像はそのまとめです。

旧レポート(2018年5月)
旧レポートで強調されていたことをまとめると、「2025年の崖」と「DXの定義・重要性」の2点に集約されます。
特に「2025年の壁」は、レガシーシステムに依存し使い続ける経営者・CIOに対して「このままではヤバい…」と思考転換を突き付けるものであり、だからこそDXに取り組むべきという重要なメッセージでした。
2025年の崖(要約)
既存システムのブラックボックスを解消し、データ活用できないと
2025年以降、最大12兆円/年の経済損失が発生
そしてその「崖」は、大きく3つの要因が重なり合うことでできており、手を付けるのが遅れるほど、その崖が深くなってしまう類のものです。
1)レガシー化の拡大
2)ITエンジニア不足
3)保守運用費の増大
ここで、DXの定義についてみていきます。
DXの定義
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位を確立すること
(2018年12月 経産省「DX推進ガイドライン」より抜粋)
※厳密にいえば、DXの定義については2018年12月に発行された「DX推進ガイドライン」によるものですが、ここでは便宜上同列に扱います。
新レポート(2020年12月)
「2025年の崖」で強調されていたDXの必要性は、奇しくも新型コロナ禍というブラックスワンにより一気に顕在化しました。
あらゆる産業において、物理的な接点のみでは事業継続が難しくなり、デジタル化に対応していたかどうかが、その後の回復の分かれ目になったのです。
僕自身の生活を振り返っても、会議はZoomやTeamsなどWeb会議へ、食事はUberEatsやMenuなどでのデリバリーへ、買い物はAmazonや楽天へと、接点が一気に変わりました。
突如訪れた環境変化をうけて、新レポートで強調されているのは、「DX対応の2極化」と「新型コロナ禍で明らかになったDXの本質」だと感じます。
DX対応の2極化
・DXレポート発行から2年が経過した今般、DX推進指標の自己診断に取り組み、結果を提出した企業の中でも、95%の企業はDXにまったく取り組んでいないか、取り組み始めた段階であり、全社的な危機感の共有や意識改革のような段階に至っていない
・先行企業と平均的な企業のDX推進状況は大きな差がある
(「DXレポート2(サマリー)」P5より抜粋)
新型コロナ禍で明らかになったDXの本質
・緊急事態宣言(7都府県)を受けて、導入率は1ヶ月間で2.6倍と大幅に増加
→経営トップのコミットメントの下でコロナ禍を契機に、速やかに大きな変革を達成
・テレワークをはじめ社内のITインフラや就業規則等を迅速に変更してコロナ禍の環境変化に対応できた企業と、できなかった企業の差=押印、客先常駐、対面販売など、これまでは疑問を持たなかった企業文化の変革に踏み込むことができたかが、その分かれ目
・事業環境の変化に迅速に適応すること、その中ではITシステムのみならず企業文化(固定観念)を変革することの重要性が明らかに
(「DXレポート2(サマリー)」P7より抜粋)
■Point2.企業・ベンダーはどう変革していけるか?
2つ目のポイントとして、「DXレポート2」が主な対象としている企業・ベンダー双方の立場と目指すべき方向性にフォーカスします。

企業に対しては、「DXはITシステム刷新だけではなく、企業文化と事業の変革である」というメッセージを何度も繰り返しているのが印象的です。
企業の目指すべき方向性
・変化に迅速に適応し続けること、その中ではITシステムのみならず企業文化(固定観念)を変革することがDXの本質であり、企業の目指すべき方向性
・コロナ禍によって人々の固定観念が変化した今こそ企業文化を変革する機会。ビジネスにおける価値創出の中心は急速にデジタルに移行しており、今すぐ企業文化を変革しビジネスを変革できない企業は、デジタル競争の敗者に
(「DXレポート2(サマリー)」P8より抜粋)
そして、いわゆるユーザー企業に対してのみならず、ベンダー企業(メーカー、SIer、サービサー)に対しても変革を迫っています。
SIerに所属する人間のひとりとしても、既存の受託開発型ビジネスや単純な物売りといった「お客様に言われたことだけをやる」構造から脱却し、お客様とともに価値を生み出していくためのパートナーであらねば…と、ハッとさせられる表現が多くありました。
ベンダー企業の目指すべき方向性
・現行ビジネスの維持・運営(ラン・ザ・ビジネス)から脱却する覚悟を持ち、価値創造型のビジネスを行うという方向性に舵を切るべき
・ユーザー企業とDXを一体的に推進する共創的パートナーとなっていくことが求められる
・また、ITに関する強みを基礎として、デジタル技術を活用して社会における新たな価値を提案する新ビジネス・サービスの提供主体となっていくことも期待される
(「DXレポート2(サマリー)」P9より抜粋)
■Point3.DX推進にむけた3つの時間軸
3つ目のポイントは、DX推進にむけた時間軸です。何を優先して行い、どのように変革を重ねていくべきなのでしょうか。

DXレポート2では、「超短期」「短期」「中長期」の3フェーズに分けて解説されています。読み込んだうえでの僕の理解では、以下が大まかなテーマになっています。
1)超短期:コロナ禍でも従業員・顧客の安全を守りながら事業継続する
2)短期:体制整備・戦略策定・状況把握を行いつつDXを推進する
3)中長期:他社との共創推進・人材確保などを通じて持続可能な仕組みを創る
自社が現状、どの地点にいるのか(DX未着手企業・DX途上企業・デジタル企業)によっても、このフェーズの認識と優先順位は変わるはずです。
■Point4.DXをサポートする政府の政策
4つ目のポイントです。DX推進にあたり、政府が準備・検討している政策はどんなものなのでしょうか?

DXレポート2では、大きく4つの切り口に分けて政策の方向性が言及されています。
1)事業変革の環境整備
・共通理解形成のためのポイント集策定
→後述の「ワーキンググループ1報告書」にて言及
・CIO/CDXOの役割再定義
・DX成功パターンの策定
2)デジタル社会基盤の形成
・共通プラットフォーム推進
・デジタルアーキテクチャ推進
3)産業変革の制度的支援
・ユーザー企業とベンダー企業の共創の推進
4)人材変革
・DX人材の確保
正直、このあたりについてはまだ概念的であり、具体施策として見えているものは少ないかな…という印象でした。
最終報告ではよりブレイクダウンしたものが提示されることを期待したいところです。
■Point5.DX推進の肝となる「対話」
最後となる5つ目のポイントは、DX推進の核となる「対話」です。個人的にはここが最重要と感じます。なぜなら、どんなに立派な計画を描いても、関わるステークホルダーの腹落ちがなければ実行されないからです。
「対話」の重要性とその中身については、補足資料的な扱いの「ワーキンググループ1報告書」で語られています。(以下、「WG1報告書」と記載します)
WG1報告書
①全体報告書:全66ページ
②対話に向けた検討ポイント集 第1章:全40ページ
③対話に向けた検討ポイント集 第2章:全31ページ
④対話に向けた検討ポイント集 第3章:全44ページ
WG1全体報告書
WG1全体報告書 Agenda
1. 本WGの目的と位置付け
2. DX推進における課題
①我が国におけるDX推進の現状
②対話の重要性
③DX推進をイメージアップするための対話の中身(WHY、WHAT、HOW)
3. DX加速のための提言と施策
①経営者への提言
②対話に向けた検討ポイント集(小冊子)
参考. 実践手法に関して
WG1全体報告書の特徴は、業界ごとの顧客の要望/顧客の状況を概観した「ベンダの現場所感」から、解決すべき課題を探っているところです。
そしてDX停滞要因については、「各ステークホルダー間での対話不足を起因とした課題」にまとめられています。この「対話の中身」について取りまとめたものが、全3章からなる「対話に向けた検討ポイント集」となっています。

対話に向けた検討ポイント集 目次

なお各章はそれぞれWhy・What・Howに対応づいており、自社で必要な対話のスコープに合わせて適宜読み、ステークホルダー間での対話をすすめていくとよいでしょう。
第1章 デジタルトランスフォーメーションとは
→Why(DXとは、時代的な背景と必要性・目的、DX後の姿などのゴールイメージ等)
第2章 デジタルエンタープライズとデータ活用
→What(デジタルエンタープライズとは、データ活用の狙いと活用例、プロセス等)
第3章 デジタルトランスフォーメーションにおけるITシステム企画
→How(ビジネス戦略とデジタル技術、既存システムの見直し、テーマ別ケーススタディ)
いかがでしたでしょうか。
DXは一部の企業だけのものではありません。時代が変わりゆく中、自分たちに引き寄せて考えたときにどんな機会があり、どんなビジネスを生み出していけるか?…という問いのきっかけにもなると思います。
よろしければ、記事へのコメント・フィードバック等もいただけると嬉しいです。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!!
■参考資料①DXレポート
2018年9月
DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~
■参考資料②DX推進ガイドライン
2018年12月
デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン
(DX推進ガイドライン)
■参考資料③DX推進指標
2019年7月
デジタル経営改革のための評価指標
(DX推進指標)
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