美沙。おごせに行く「一鞠-hiMari-物語」第二話光を探して、歩きだす
第二章(続き):光を探して、歩きだす
(地の文)
バスの時刻表を見上げて、思わず小さくため息をついた。

美沙(心の声)
「あと……1時間、か」
予想外に時間が空いた。
でも、なぜかそれが嬉しかった。
いつもは時間に追われてばかりで、こんなふうに“ぽっかり空いた時間”に身を委ねることなんて、ほとんどなかったから。
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(場面:越生駅前のロータリー)

(周囲を見回す美沙)
(地の文)
視線の先に、なにかの銅像が見えた。
近づいてみると、それは地元の偉人の記念碑のようだった。

美沙(心の声)
「……どんな人だったんだろう」
誰かの生きた証が、こんなふうに町の片隅で静かに佇んでいる。
そう思うと、不思議と胸があたたかくなった。
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(地の文)
ふと振り返ると、駅前にぽつんと佇む、小さなお店屋さんが目に入る。

木の看板。色あせた暖簾。窓越しに見える瓶や雑貨たち。

美沙
「……懐かしいな、こういうお店」
祖母の家の近くにあったような、記憶の片隅にある風景。
(地の文)
思わず写真を撮ろうとスマホをかまえて――でも、やめた。
この“空気”は、きっと画面には写らない。
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(場面:越生駅から歩いて数分)
(地の文)
そのまま道を曲がると、観光案内所の文字が目に飛び込んできた。



中に入ると、地図やパンフレットがずらりと並んでいる。
あ!酒蔵の案内図もある!





ハイキングコース、梅林、神社、温泉……知らなかった越生の顔が、次々に広がっていく。
美沙(心の声)
「こんなにいろいろあるんだ……知らなかった」
(地の文)
観光案内所を出て、さらに少し歩くと、カラフルな道しるべのような看板がいくつも立っていた。

「梅の里ハイキングコース →」
「ゆずの道 →」
「越生サイクリングロード ←」

美沙(心の声)
「……ハイキングの町、なんだ」
知らない場所。知らない言葉。
でも、どこかで懐かしく感じるのは、きっと自然の中にある“やさしさ”のせいかもしれない。
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(場面:道ばたのサイクリングロード)


(地の文)
歩道の端には、きれいに舗装された自転車用レーン。
すれ違ったサイクリストが、笑顔で軽く会釈してくれる。
美沙
「……いいな。こんな町で、休日にサイクリングしてみたいかも」
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(地の文・ナレーション)
駅から少し離れるだけで、いくつもの“知らなかった越生”が顔を見せてくれる。
心に積もっていた澱のような疲れが、少しずつ風に流れていくような、不思議な時間。
何かを目的にしなくても、こうして歩くだけで、じんわりと力が湧いてくる気がした。
美沙(心の声)
「……来てよかった」
あと1時間…いよいよ酒蔵へ。
その扉の先に、何が待っているのか。
まだ知らないけれど、今のわたしは、その“知らなさ”さえ楽しみに思える。
