美沙。おごせに行く「一鞠-hiMari-物語」第6話また来たくなる町
第二章(続き5):また来たくなる町
場面:越生駅・待合室)
(時計を見る美沙)
美沙(心の声)
「……バスが来るまで、あと15分」
(ストレッチしながら)


美沙
「そろそろ、行こうかな」
(出口に向かって歩き出す)
(地の文)
扉を開けて、振り返る。
美沙(ふと笑って)
「……あ、そういえばここって“駅”だったんだ」


(思わず小さく吹き出す)

美沙(心の声)
「都会だと1秒でも早く通り過ぎたい場所なのに……」
美沙
「なんか、“駅”って、いいな」
⸻
(場面:駅前・バス停に向かう途中)
(ふと、カラフルなポスターが目に入る)

美沙
「……つつじ祭り?」
(近づいて見る)
(地の文)
《五大尊つつじ祭り》
“約1万株、12種類のつつじが咲き誇る関東屈指の名所。
伝統儀式「御戸開扉」──毎年5月3日早朝開催”
美沙(心の声)
「……へぇ、そんなお祭りがあるんだ」
つつじの写真。斜面いっぱいに広がる色とりどりの花々。

まるで、山が花で染まってるみたいな風景。
美沙
「これは……すごい……」
(スマホで少し調べながら)

美沙(つぶやく)
「儀式……ただの花の名所じゃないんだね」
⸻
(地の文)
越生という町は、ただ“自然がきれい”なだけじゃない。
そこに、人の手と、時間と、祈りが積み重なっている。
“いま”に、ちゃんと“むかし”が生きている。
美沙(心の声)
「……こういう町、好きかも」
(つつじ祭りのポスターをもう一度見て)
美沙
「このつつじも、見てみたいなあ……」
美沙(小さく笑って)
「越生に来たばかりなのに……もう、また来たくなっちゃった」
(ナレーション)
人と自然と、歴史と暮らし。
そのすべてが、静かに息づいている町。
この春の日に、ひとつの駅から始まった小さな旅は、
美沙の心に、“もう一度ここへ来たい”という確かな種を蒔いていた。
