「忙しくて学ぶ時間がない」あなたへ。会社員時代に見つけた、究極の業務効率化とは
「温度、湿度、電力量、ガス量、熱量、CO2濃度……」
会社員時代、エネルギーコンサルタントとしての私の日常は、ビルから吐き出される膨大なデータと格闘することから始まりました。
無駄なエネルギー消費を見つけ出し、お客様に省エネ施策を提案する。それがエネルギーコンサルタントの業務です。
真面目で優秀な人ほど、どこまでも深くデータを分析し、大量の集計結果を美しくまとめ上げようとします。
そんなとき、私はよく彼らにこう問いかけていました。
「それ、本当に必要な作業ですか?」
私たちがつい目を奪われてしまうのは、「どうやって効率よくやるか」ということです。
AIを使いこなす、ショートカットキーを覚える、手順を自動化する。それらも素晴らしいことですが、私が長年の仕事で見つけた本当の発見は、もっとシンプルな場所にありました。
究極の業務効率化とは、「必要のないことを、やらないこと」です。
そもそもやる必要のない作業をどれだけ高速化しても、生み出される価値は変わりません。「効率よくやる」ことばかりに気を取られていると、その作業自体が本当に必要なのかという本質的な問いが置き去りになってしまいます。
今年、私は会社員を引退しました。現役の後半、私は「業務効率化」や「AI活用法」を社内に広めるための研修もしていました。
しかし、そこでひとつの切ない壁にぶつかります。
本当に伝えたい「現場で忙しく頑張っている人」ほど、研修に来てくれないのです。
「研修を受ける時間すらないほど忙しい」というのが、彼らの理由でした。
一方で、研修に積極的に参加してくれるのは、すでに日々業務効率化を進めているような人たちです。彼らは研修で新しい手法を学び、さらに業務を改善し、学ぶための時間を新しく生み出していくという好循環の中にいました。
この光景を見るたび、スティーブン・R・コヴィー氏の『7つの習慣』に出てくる「木こりのジレンマ」を思い出さずにはいられませんでした。
森の中で、休む間もなくノコギリで木を切り倒そうとしている男がいます。 通りかかった人が「刃を研いだらどうですか? そのほうが早く切れますよ」と助言すると、男は汗を拭いながらこう吐き捨てるのです。
「切るのに忙しくて、刃を研ぐ時間なんてあるもんか!」
現場で必死に汗を流している人ほど、ノコギリの刃を研ぐ時間が取れない。そのせいで刃がこぼれ、余計に切るのに時間がかかってしまう。まさにあの木こりの姿が、社内の現場と重なって見えたのです。
どうすれば、時間のない彼らに「刃を研ぐ技術」を届けられるだろうか。
悩んだ末に私が行ったのは、イントラネットに研修の動画や研修資料を残すことでした。まとまった時間が取れなくても、業務の合間のほんの数分、隙間時間で閲覧できるように工夫をし、社内へアナウンスを続けました。
引退した今でも、ふと思うことがあります。
あのイントラネットに置いてきた動画や研修資料が、今日どこかの現場で、疲れ果てながらデータや作業と格闘している誰かの目にとまっていればいいな、と。
「ノコギリの刃を研ぐ時間」を作ること。
そして、「その作業自体が本当に必要なのか」と一度立ち止まること。
真面目に頑張る人ほど、自分を追い込んで作業の渦に飲み込まれてしまいがちです。この記事が、今まさに忙しさに追われている誰かに届き、ほんの少し肩の力を抜いて「やらない選択」をするきっかけになれば、これ以上に嬉しいことはありません。
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