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ウズベキスタンの建設労働者に労災保険を届けたい 3

前回の記事でウズベキスタンの労災補償について紹介した。日本のように単一の労災保険がなく、3つの制度が労災のリスクをカバーしている。国が提供する基本的な医療、長期の障害と遺族年金は年金基金が、そしてそれ以外の労災補償は事業主の責任をカバーする民事賠償責任が補っている。制度が複雑だけど、労災のリスクは担保されているようだ。でも、どうして7割近い建設労働者が労災のリスクにさらされているのだろう。

働く人が登録されていない?

日本だと会社が従業員を雇い入れた際、健康保険と厚生年金は年金事務所で、労働保険は労働基準監督署で必要な手続きをする。ウズベキスタンでも従業員を登録する義務があり、登録した従業員について社会保険料(社会税)を払わないといけない。事業主の民事上の賠償責任をカバーする民間の保険にも、従業員を雇い入れたことを申請して、給与の一定額の保険料を払わない限り、保険は適用されない。保険には加入手続きをしないと入れない、それはそうだ。

2025年の7月。ウズベキスタンで金融・保険市場を監督する省庁の高官の方が、建設労働者の多くが保険から漏れる原因のひとつを端的に説明してくれた。彼は会議室の窓の外に見える10階建てくらいの工事中のビルを指さして、「ほら、あそこに建設現場が見えるだろう。たくさんの人が働いているけど、登録されているのは数人かな」と。7月のタシケントは内陸性気候のせいで40度を超えていた。そんな酷暑の中働く人たちが、労災に入ってないことをにわかに信じられなかった。

そもそも働く人の保険加入手続きがなされていない。どうしてなんだろう。

事業主には雇用者を保険に加入させる法的な義務があるが、徹底されていないという。建設業界団体の方に聞いたところ、中小の建設会社では現場監督をするような正社員は登録するけれど、有期契約の労働者や日雇い労働者は登録しないことが多い、と。社会保険料を払わずに済ませてしまうわけだ。

事務所や工場と違って、建設工事は有期だ。着工してから完工するまで数カ月から長くても数年だ。工事のフェーズによって必要とされる労働者の数が変動する。工期が遅れると臨時で人を雇い入れることもある。だから建設労働者の雇用は日雇いや短期など不安定なものが多い。

労働法上、1日でも人を雇えば登録する義務が生じるが、順守されていない。大手建設会社の人事の方が「うちは法を守るよ。日雇いでも登録する。下請け会社にもそう要請している」と言った。だけど、下請けや孫請け会社が連れてきた労働者が保険に入っているかどうか、工事現場で毎日確認しているのだろうか。

アジア開発銀行(ADB)はウズベキスタンでもインフラ構築事業に融資している。建設工事の監督を担当する人が教えてくれた。「以前、抜き打ちで現場に行ったら、契約書をもらっていなかったり、保険に入っていない労働者が何人もいた」と。ADBが政府に融資し、政府がゼネコンと契約する。契約先は大手なんだろうけれど、それでも現場の労働者が保険から漏れている。それで、ADBの担当者が是正を要請している、と。やっぱりそうか。

雇用・貧困削減省と協議した際、労働基準監督官が足りていない、と率直に話してくれた。確かにそうだ。日本だって、全ての建設現場を回って法令順守をチェックして回れるほどの数の労働基準監督官はいないだろう。

じゃあ、どうすれば建設会社に労働者を登録し、保険に加入させることができるのだろう。法令順守の啓発活動が有効なのだろうか?

でも、問題は登録漏れだけではない。そもそも、ウズベキスタンの建設労働者のうち4分の1以上の人が、そもそも保険の対象外だ。次回、この点について書きたい。





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