『「介護時間」の光景』(272)「内容証明」。8.10。
いつも、このnoteを読んでくださっている方は、ありがとうございます。おかげで、こうして記事を、書き続けることができています。
この『「介護時間」の光景』を、いつも読んでくださってる方は、「2003年の頃」から読んでいただければ、これまで読んで下さったこととの、繰り返しを避けられるかと思います。(終盤に、今日、「2026年8月10日」のことを書いています)。
初めて読んでくださっている方は、見つけていただき、ありがとうございます。
私は、臨床心理士/公認心理師の越智誠(おちまこと)と申します。
「介護時間」の光景
この『「介護時間」の光景』シリーズは、私自身が、介護をしていた時間に、どんなことを考えたのか?どんなものを見ていたのか?どんな気持ちでいたのか?を、お伝えしていこうと思っています。
それは、とても個人的で、しかも断片的なことに過ぎませんが、それでも家族介護者の気持ちの理解の一助になるのではないかとも思っています。
今回も、昔の話で申し訳ないのですが、前半は「2003年8月10日」のことです。終盤に、今日、「2026年8月10日」のことを書いています。
(※ この『「介護時間」の光景』シリーズでは、特に前半部分の過去の文章は、その時のメモと、その時の気持ちが書かれています。希望も出口も見えない状況で書いているので、実際に介護をされている方が読まれた場合には、気持ちが滅入ってしまう可能性もありますので、ご注意くだされば幸いです)。
2003年の頃
1999年から介護が始まり、2000年に、母は長期療養の病院に入院したのですが、私は、ただ病院に毎日のように通い、家に帰ってきてからは、妻と一緒に在宅で、義母の介護を続けていました。
ただ、それ以前の病院といろいろあったせいで、うつむき加減で、なかなか、医療関係者を信じることができませんでした。それでも、3年がたつ頃には、この病院が、母を大事にしてくれているように感じ、少しずつ信頼が蓄積し、その上で、減額措置なども教えてもらい、かなり病院を信じるようになっていました。
それでも、同じことの繰り返しの毎日のためか、周囲の違和感や小さな変化にかなり敏感だったような気がします。
2003年の頃には、母親の症状も安定し、病院への信頼も増し、少し余裕が出てきた頃でした。これまで全く考えられなかった自分の未来のことも、ほんの少しだけ頭をよぎることがありました。
それでも、それまでと同様に、毎日のように、メモをとっていました。
2003年8月10日
「病院へ午後4時40分頃に着く。
着いたら、母は横になっていた。
昨日は、風が強くて、でも、今日は天気でよかった。
夜は、確か、近くで花火大会があるので、それを見ることを母に聞いてみる。
大丈夫そうだった。
夕食は午後5時30分からで、今日は30分で終わったので、早い方だった。
母はずっとまともに見えて、ふと退院のことも思ったりもするが、でも、しゃべっていると、妙なズレがあって、やっぱり無理だろうと思う。
食事の後、個室に戻って、母と一緒に甲子園の高校野球を見る。
神奈川代表の横浜高校の試合を見ていたが、負けてしまった。
そのあとは、美空ひばりが歌っている姿を見て、そのうちに午後7時30分になり、花火大会を見るために、カギを開けてもらって、母と一緒に屋上へ行く。
少し涼しい。
いい風が吹いている。
花火を待つ。
時間が長い。
待つ。
日程を間違えたのかも。
そういえば、今日でしたっけ?病院に着いた時に、看護婦長さんに言われた。
あと5分待ってみよう。
ちょっと花火が見えた気がしたけれど、それは誰かがあげている普通の打ち上げ花火だったようだ。
午後7時55分に諦める。
母に謝ったら、「いいのよ。夕涼みにはなったし」と言ってくれた。
病棟に戻って、花火大会がなかった話をしたら、今日は、昨日の川の大増水のために、中止になったのかも、という話を看護婦さんに聞いた。そうかもしれないが、やっぱり調査不足で間抜けな話だった。
午後8時に病院を出る。
久しぶりに病院の送迎バスではなく、民間の路線バスに乗った。
一人でバス停で待っていると、もしかしたら、来ないのかも、というような気持ちにもなったし、最後に駅まで乗ったのは、自分一人だけだった。
これから帰って、今度は義母の介護をして、夜遅く、というか、朝の午前4時くらいまで起きていて、昼近くまで寝て、起きた時から、最近は、とても体が重い。
疲れは溜まり続けているのだろうけど、どうしようもない」。
内容証明
自分の病気をみてもらって、そこから母の病院へ向かう時は、いつもよりも小さい送迎バスに乗る。
同じグループの病院にしたので距離も近いし、バスもある。
10人乗りくらいのワゴン車。運転席の上には「飲食厳禁」の張り紙。ほとんど人が乗っていないが、一つとばしてその前の席に初老の男性が座っている。
手元で読んでいるのが、内容証明の手紙なのが見えてしまう。かなりの金額のお金の事らしいのが分かる。
(2003年8月10日)
この生活は、まるで終わらないように続いたのだけど、その翌年、2004年に、母親の、内臓の病気が見つかった。
手術をして、いったん落ち着いたものの、2005年には再発し、2007年には、母は病院で亡くなった。
義母の在宅介護は続いていたが、臨床心理学の勉強を始め、大学院に入学し、2014年には臨床心理士の資格を取得し、その年に、介護者相談も始めることができた。
2018年12月には、妻と一緒に在宅介護をしていた義母が103歳で亡くなり、19年間の介護生活も突然終わった。2019年には、公認心理師の資格も取得した。
昼夜逆転のリズムが少し修正できた頃、コロナ禍になった。
2026年8月10日
昨日は、夜にかけて3回、洗濯をした。
昼間は晴れていて、暑かったのだけど、夜になって、雷の音が聞こえてきた。
外へ出て、手をかざしても、雨は降っていないけれど、これだけゴロゴロと鳴っている時は、やっぱり、そのうちに降るだろうと思っていたので、洗濯物を室内に干すことにした。
雷はまだしばらく鳴っていて、一度は、ビクッとするくらい大きい音を立てて、それから、だんだん小さくなって、雷は遠くに行ったのかも、と思っていたら、雨が降り始めた。
本当に嫌になるくらい、暑い昼間、夕方以降に雷が鳴り始め、そして雨が降る、という規則性を繰り返す日が多くなった。
晴天
今日は、午後から出かけることになっていて、だから、なるべく用事を減らしたくて、洗濯をしなくて済むように昨日のうちになるべく洗うようにしていた。
起きたら、晴れていた。
室内の洗濯物は、妻が物干し場へ出してくれていた。
洗濯カゴには、まだあまり洗濯物が溜まっていないから、今日は洗濯機を回さなくて済みそうだ、と思う。
空を見上げると、夏空だった。
あちこちに、もしかしたら積乱雲に育つかもしれない、今の時点では白くてふわふわしてして見える雲がある。
最近、入道雲、というような、どこかのどかな響きがある言葉を使わなくなったのは、ゲリラ豪雨と言われるように、雷だけではなくて、雨の降り方が激しいので、そうした表現を使うのが合わなくなった、ということかもしれない。
セミの声は聞こえている。
ヤングケアラー
ヤングケアラーという存在が広く知られるようになったのは、毎日新聞の報道がきっかけになったと言われている。その新聞の連載が単行本化された書籍を、不勉強で恥ずかしながら、初めて読んだ。
取材対象を探すのに、かなり苦戦もしているのもわかって、だけど、途中で、「ヤングケアラー」という年齢区分にとてもこだわっていて、それは、報道という視点から考えれば、必要なことだとはわかるのだけど、まず家族介護者全体の支援があって、だから、ヤングケアラーの支援にも繋がりやすいはずなので、介護者全体の取材をしてほしい、と思ってしまった。
この書籍の中でも、途中で、取材対象を、家族介護者全体にまで広げるかどうか、という迷いが出るところがあって、そのときに、そのための人員は足りないし、何より、そこまで広げると記事になりにくい、といった描写があって、勝手に残念な気持ちになった。
ヤングケアラーという存在に光があたり、透明な存在ではなくなり、支援の体勢ができてきたことは、とても素晴らしいことなのだけど、さらに大勢のヤングではない家族介護者の存在は、まだその詳細は明らかになっていないと思う。
それもあって、今も2週間に1件の介護殺人事件が起こってしまっているのではないかと、介護者相談の担当をしている立場としては、偏った見方かもしれないけれど、そんなふうに思ってしまったのだった。
夜間
出かけて、帰ってきたのは、午後10時くらいだった。
自分自身は、介護を始めてから、介護が終わってからも、夜間に出かけることが少なくなった。だから、夜の外出になると、ちょっと緊張してしまう。
だけど、地下鉄や電車を乗り継いで帰ってくるときは、人が結構多くて、窓の外は暗いけれど、あまり夜という感じはしない。
それでも、自宅の最寄駅に着いて、家に向かって歩いていると、空は暗くて広くて、やはり、夜は深くなっているように思う。
(他にもいろいろと介護のことを書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。
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