毎朝、座って通勤できる家の探し方|「始発駅ハック」という選択肢


はじめに


家を買うとき、多くの人が最初に決めるのは「エリア」です。
職場から何分か。駅から何分か。予算はいくらか。
でも、実際に住み始めてから効いてくるのは、もっと地味な部分だったりします。
毎朝、座れるかどうか。
片道40分の通勤が、立ちっぱなしか座れるかで、体感はまったく違います。1日80分、年間で約320時間。この時間を立って過ごすか、座って過ごすか。10年住むなら3,200時間の差です。
私は不動産仲介の営業を8年やってきました。宅建士です。その中で「駅からの距離」ばかり気にして、「座れるかどうか」を見落とす人を何人も見てきました。
この記事では、私が個人的に一番コスパがいいと思っている買い方を書きます。
「始発駅ハック」です。

ターミナル駅の相場は、もう普通の人向けではない


まず前提の話をします。
このところ、都心のターミナル駅周辺の相場は、明らかに普通の会社員の手が届く水準を超えています。
新築マンションはもちろん、築20年の中古でも「え、この値段?」という物件が普通にあります。共働きでペアローンを組んで、ようやく手が届くかどうか。
じゃあ諦めて遠くに買うのか。
これも違うと思っています。単に遠くにすると、通勤時間が延びるだけで、生活の質は下がる。安さと引き換えに毎日の時間を差し出すことになります。
「近いか遠いか」の一本の軸で考えている限り、この問題は解けません。
ここで軸をもう一本足します。それが「座れるかどうか」です。

始発駅ハックとは何か


考え方はシンプルです。
始発駅、もしくは始発駅の1〜2駅隣に住み、駅から徒歩5分圏の物件を買う。
これだけです。
なぜこれが効くのか。理由は3つあります。

  1. 座れると、通勤時間の意味が変わる
    立って40分は苦行ですが、座って40分は自分の時間になります。本を読む、仕事を片付ける、寝る。同じ40分でもまったく別物です。
    「通勤時間が長いのが嫌」という人の多くは、実は「立っている時間が長いのが嫌」なんです。ここを分けて考えると、選べる駅が一気に増えます。

  2. 始発駅の「隣」は、相場が一段落ちる
    始発駅そのものは、その価値が知られているので相場に織り込まれています。でも1駅隣に行くと、相場は一段落ちる。それでいて、1駅戻れば座れる。
    この「1駅分の差」が、そのまま数百万円の差になることがあります。

  3. 駅徒歩5分圏は、将来の売りやすさに効く
    これは仲介側の視点です。
    将来売るとき、あるいは貸すときに、駅からの距離は最後まで効きます。同じエリアでも、徒歩5分と徒歩15分では、売れるまでの期間も価格も変わります。
    駅から遠い物件は、買うときは安いけれど、出るときに苦労します。
    だから「エリアで妥協して駅近を取る」ほうが、「エリアを取って駅から離れる」より、私は合理的だと思っています。

実例1:幕張本郷・幕張 ×「津田沼で10分待つ」


まず「乗換型」の例です。
以前この沿線に住んでいたことがあり、実際にこの方法で通勤していました。机上の計算ではなく、毎朝やっていた話です。
JR総武線の幕張本郷や幕張から、津田沼までは数分。津田沼では東西線直通や総武線快速に乗り換えができます。
ポイントは、乗り換えてすぐ乗らないことです。
津田沼で10分ほど待つ。すると津田沼始発の電車が来ます。そこで座る。あとは都心まで座ったまま。
「10分待つ」と聞くと損に感じるかもしれません。でも、その10分でホームに並んでいる間に、スマホでニュースを読むなり、メールを返すなりできます。そして座ってから先の30分以上が、完全に自分の時間になる。
差し引きで確実にプラスです。
そして相場の話をすると、幕張本郷や幕張は、津田沼と比べて一段安い。津田沼の利便性を使いながら、津田沼の値段は払わない。これが「隣に住む」ということです。
京成線も使える2WAYの立地があるのも、幕張本郷の強みです。
注意点
正直に書いておきます。
津田沼始発の本数は、朝の時間帯に集中しています。日中や夕方に同じことができるわけではありません。「いつでも座れる」ではなく「朝の通勤時間帯に座れる」です。
そして、ダイヤ改正で本数が変わる可能性は常にあります。購入を検討するなら、自分が実際に乗る時間帯の時刻表を、必ず自分で確認してください。

実例2:妙典 ×「当駅始発」というもう一つの型


型は一つではありません。
津田沼のパターンが「乗換型」だとすると、もう一つが「当駅始発型」です。
東京メトロ東西線の妙典。ここは車両基地が近く、当駅始発の電車が設定されています。乗り換えなしで、自分の駅から座って乗れる。
朝の時間帯には、当駅始発がまとまった本数用意されているようです。乗り換えの手間がない分、津田沼型よりシンプルです。
ただし、ここが面白いところ
「当駅始発があるなら確実に座れる」かというと、そう単純でもないようです。
実際には、こんな事情があるようです。
• 妙典駅のホームには、始発待ちのための並ぶ位置のマーキングがある。次の始発に乗れる列と、その次の始発に乗れる列が分かれている
• 始発電車には座席の少ないワイド車両が入ることがある。乗降をスムーズにするため座席が減っている車両で、後ろに並ぶと座れない可能性がある
• 時間帯によっては10分以上待つことも普通にある
つまり、当駅始発型でも「並ぶ」という行為からは逃れられない。津田沼で10分待つのと、構造は同じです。
「始発駅だから座れる」ではなく、「始発を待つ人は、どこでも待っている」というのが実態に近いと思います。
だからこそ、始発駅かどうかだけで判断せず、実際に自分でその時間に行ってみることが大事です。

候補駅の見つけ方(自分で探す手順)


同じ理屈が成立する駅は、他にもあります。探し方を書いておきます。

手順1:車両基地・折返し設備のある駅を探す
始発が設定されるのは、車両を留め置ける場所がある駅です。「路線名 車両基地」「路線名 始発駅」で検索すると、だいたい見つかります。

手順2:その駅と、1〜2駅隣を候補にする
始発駅そのものは相場が高めです。1〜2駅隣で、始発駅まで数分の駅を候補に入れます。

手順3:時刻表で本数を確認する
ここが一番大事です。
自分が乗る時間帯(例:7時30分〜8時30分)に、始発が何本あるかを見ます。1本しかないなら、その1本に生活を合わせることになります。3本以上あるなら現実的です。

手順4:実際に行ってみる
平日の朝、実際にその駅に行って、並んでみてください。
何分待てば座れるのか。どのくらいの人が並んでいるのか。ホームに屋根はあるのか。冬に10分立つのはつらくないか。
これをやらずに買うと、住んでから「思っていたのと違う」になります。

駅が決まっても、判断はここから


ここまで駅の話をしてきましたが、正直に言うと、駅選びは家探しの入口にすぎません。
同じ駅の徒歩5分圏でも、物件によって数百万円の差が出ます。その差が妥当な差なのか、それとも売り手の言い値なのか。ここを見抜けるかどうかで、最終的に払う金額が変わります。
• その価格は相場に対して妥当か
• その物件に、資料に書かれていない弱点はないか
• 営業マンの説明のうち、どこが事実でどこがセールストークか
このあたりは、また別の記事で書きます。

まとめ


• ターミナル駅の相場は、もう「近いか遠いか」の一本軸では解けない
• 軸をもう一本足す。それが「座れるかどうか」
• 始発駅、もしくはその1〜2駅隣 × 駅徒歩5分圏が、コスパの良い選択肢になる
• 型は2つ。乗換型(津田沼で待つ)と当駅始発型(妙典など)
• ただし「始発駅だから座れる」は単純化しすぎ。並ぶ手間はどこでも発生する
• 最後は必ず、自分の乗る時間帯に、自分で行って確かめる

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※現在は情報提供のみを行っており、個別の物件のご案内・仲介は行っていません。

※本記事の所要時間・始発の有無は執筆時点の情報です。ダイヤ改正等で変わる可能性があるため、購入検討の際は必ず最新の時刻表と現地でご確認ください。相場に関する記述は筆者の主観的な見解であり、投資判断を保証するものではありません。

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