
ふっ。
老人は
ロウソクの火を消しました。
この高い高い塔には
何人いるのでしょう。

彼らは、休むことなく
ロウソクの間を歩き回ります。
ロウソクは
一つひとつが誰かの命。
その命が
争いに飲まれるとき
炎は、暗い黒色に変わります。

老人が「ふっ」と
息を吹きかけると
地上で互いに向けられた銃口は
そっと下ろされ
争いの芽は静かに摘まれます。
人々は
なぜ自分が踏みとどまったのか
考えないまま
同じことを繰り返します。

ある日
一本のロウソクが
禍々しい黒に染まりました。
その黒は
隣の小さな炎へ
また隣の炎へ、、、
またたく間に広がっていきます。
大変だ。
戦争が始まってしまう。

老人は息を吹きかけました。
ふっ。ふっ。
黒い炎は消えません。
何十人もの老人が集まり
息を吹きかけます。
ふっ。ふっ。ふー。

それでも
広がる黒には届きません。
一人の老人が
静かに首を振りました。
私たちが消しているのは
生まれてしまった黒だけだ。
それぞれが
気づかない限り
この火は消えない。

やがて
黒い炎の底から
真っ赤な火があふれ出しました。
深い悲しみの火。
赤と黒は混ざり合い
塔の天井を突き破って
空へと昇っていきました。

地上では
終わりへ続く大きな戦争が
始まりました。
塔に残されたのは
黒く焦げた芯と
のぼっていく煙だけ。
戦争を消してくれる魔法など
最初から
どこにもありませんでした。

静まり返った塔の中で
老人がぽつりと呟きました。
私たちは
火を消すことばかりを
してきたけれど
本当に必要だったのは
最初から火をつけない
ことだったのか。

それ以来
老人たちは
ロウソクの火を消すのをやめました。
あなたの胸の中で揺れる
小さなロウソク。
その炎は何色ですか。
