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スポーツと精神医学(8): テニスとメンタルヘルス〜プロテニスプレーヤーのメンタルヘルス問題を精神科医が解説〜

皆様、こんにちは!鹿冶梟介(かやほうすけ)です。

突然ですが、「最も孤独なスポーツ」と言えば何を思い浮かべますか?

色々なご意見はありましょうが、小生はテニスだと思います。

勿論ダブルスは違いますが、テニスは基本的に個人競技であり、プレー中にコーチから助言を得ることもできません。

実際、グランドスラム8度の優勝を誇るアンドレ・アガシは、

テニスは時計無しで孤島にいるようなもの

...と、その孤独感を表現しました。

このアガシの言葉を知り、プロテニスプレーヤーのメンタルヘルス問題について興味を抱いた小生ですが、最近イタリアで行われたプロテニスプレーヤーに関する研究を発見したので、皆様にご紹介したいと思います。

そして本記事の後半では、皆様もご存知の現役あるいは元テニスプレーヤーのメンタルヘルス問題について精神医学的考察したいと思いますので、最後までお付き合いいただけると幸いです🎾


【研究紹介】

Obsessive-Compulsive and Depressive Symptoms in Professional Tennis Players. Marazziti D et al., Clin Neuropsychiatry, 2021

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8785425/


<目的>

プロのテニスプレーヤーにおける抑うつ症状、強迫症状、そのほかの精神障害に関して調査を行う。

<方法>

対象: イタリアテニス連盟で募集された25名のプロテニス選手(男性18名、女性7名、平均年齢±SD:42.32±13.45歳)が本研究の対象となり、うち13名(男性10名、女性3名、平均年齢±SD:35.86±13.89歳)が現役選手、12名(男性8名、女性4名、平均年齢±SD:51.67+10.18歳)が元選手であった。

大学生、研修医、看護師から募集されたスポーツを職業としていない同様の健康な被験者グループ(男性13人、女性12人、平均年齢±SD:33.76±11.87)を対照群とした。

方法: いずれも定期的な臨床検査と健康診断で評価された内科的疾患を持たず、喫煙者でもなく、向精神薬を服用していなかった。全対象者は、試合の前日と試合後に、一定の温度に保たれたリラックスルームで、精神科受診と構造化面接を受け、I軸またはII軸障害の有無を評価した。精神病理学的評価は以下の評価尺度を用いて行われた。

心理テスト

Mini-International Neuropsychiatric Interview (M.I.N.I.) :精神疾患の診断と統計マニュアル第4版(DSM-IV)または国際疾病分類第10版(ICD-10)に従って、主要な精神症状を調べ、いくつかの精神疾患を診断するためのスクリーニング・ツール。

Self-Assessment Scale for Depression (SAD) : 抑うつ症状や不安症状を評価する自己記入式テスト。

Yale-Brown Obsessive Compulsive Scale (Y-BOCS) : 強迫性障害の重症度を評価する自己記入式テスト。

統計分析:

データは年齢、性別、スポーツ活動別に分析、比較された。さらに、分割表、χ2検定、群統計、対検定、独立検定、Mann Whitney検定によって統計分析を行った。

<結果>

女性1名が過去(思春期)に拒食症を患っていたが、そのほかのプロテニスプレーヤにおいてDSM-IVのI軸またはII軸の障害に該当するものはいなかった。しかし、25名中12名の選手が精神疾患の傾向を持っていた(強迫性(8名)と不安性(4名))。

Y-BOCSの総合得点は、現役アスリート、引退アスリートともに対照群より有意に高かった(5.96±5.76対1.24±2.65、p=0.001、t=3.72)。

アスリートの大多数(23人)は迷信的儀式や魔術的思考を持っていた。秩序と対称性への強迫観念および/またはそれに関連する儀式は、5人の現役選手に見られ、特に大会の宿泊施設、特に浴室、ベッドサイド、テーブルの布や個人的な道具を正確な秩序と対称性に従って整理していた。10人のアスリートは、管理儀式で自分の物をとても大切にしており、特に2人の現役テニスプレーヤーは、汚染を恐れてラケットを念入りに掃除し梱包していた。

SAD質問票の分析では、有意なグループ間差は認められなかった。

<結論>

本研究では、プロテニスプレーヤーは対照者よりも強迫症状や迷信が強いことが示された。

【テニスプレーヤーのメンタルヘルス問題】

さて、ここからは話を少し変えます。

タイトルにもあるように、今回は実際の現役あるいは元テニスプレーヤーのメンタルヘルス問題についても触れておきたいと思います。

皆様もご存知の方もいらっしゃると思いますが、小生の個人的意見というよりは本人がカミングアウトした内容や文献をもとに構成しております。

<佐藤次郎: 1908~1934>

群馬県出身の男子テニス選手。小学生の頃からテニスを始める。早稲田高騰学院(現・早稲田大学)に入学後目覚ましい躍進を遂げる。1930年の全日本シングルスで優勝。デビス杯には1931年から1933年にかけて連続出場し、シングルスで14勝4敗、ダブルスで8勝2前の成績を残し、1933年には世界ランク3位になる。1934年、デビス杯出場のため航行していた途中、マラッカ海峡で頭身自殺した。家族、婚約者、庭球協会長、友人にあてた遺書には心身の不調のためテニスができず、「この醜悪さ、何と日本帝国に対して謝って良いか分かりません」と、自責の念が綴られていた。


<アンドレ・アガシ:1970~>

米国出身の元プロテニスプレーヤー。4歳からテニスをはじめ、16歳でプロになった。

1992年に初めてウィンブルドンで優勝。

四大大会での優勝回数は8回。

自伝「OPEN」で、1996年に世界ランク1位から転落してからうつ状態に陥り、1997年頃、覚せい剤であるメタンフェタミンを使用していたと告白。


<セリーナ・ウィリアムズ: 1981~>

米国出身の元女子プロテニスプレーヤー。五歳ごろから姉ビーナス・ウィリアムズとともにテニスを始め、1995年(14歳)でプロに転向。グランドスラム合計39回優勝は男女通しても歴代3位。2002年から2003年、2014年から2015年にかけて史上4人目のグランドスラム4大会連続優勝達成。

ウィリアムズも2010年ごろに肺血栓が見つかった際に、気分が落ち込み鬱状態に陥ったとのちに告白、また2017年に第2子を出産した後、産後うつ病に罹る。


<伊藤竜馬:1988~>

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