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「チ。-地球の運動について-」と精神医学: かつて地動説は妄想だったか?~"妄想と優格観念"および"各キャラの精神科診断名"を精神科医が解説~【前編】 

皆様、こんにちは!

鹿冶梟介(かやほうすけ)です。

シリーズ「マンガ・アニメと精神医学」を開始してから、早いもので約3年が経過いたしました。

おかげさまで同マガジンは、多くの読者の皆様にご愛読いただき、好評を博しております。

この場をお借りして、感謝申し上げます😆!

今回ご紹介するのは、昨年から今年にかけて小生が最もハマったアニメ作品に関する精神医学的考察です。

今回ご紹介するのは「チ。-地球の運動について-(以後チ。と略す)」です!


小生は普段マンガを読むことは多いのですが、実のところアニメを観ることはそれほどありません。

その理由はマンガは速読が可能なので隙間時間にも楽しめますが、アニメはある程度時間をとらないと鑑賞できないためです(アニメを倍速で観てもきっと面白くない)。

そのため、小生のnote記事はこれまでマンガを読んだ上で執筆してきましたが、「チ。」に関しては珍しくアニメから入りました

このアニメに注目したきっかけは、小生の大好きなアーチスト「サカナクション」が主題歌を担当するいう情報を耳にしたことでしたが、早速YouTubeでプロモーションを見たところ... ...

「あ、これ絶対面白いヤツだわ!」

そう直感し、予約録画して同アニメを毎週欠かさず観ておりました。

美麗な星々と吸い込まれるような宇宙、登場人物の機微まで捉えた心理描写、そして魂を揺さぶる哲学的問い... …。

見方によっては衒学的と捉えられる可能性もあり、それゆえ万人受けするようなテーマではありませんが、それでも小生は「感動した」のです!

あぁ、この感動をどうやって表現すべきか... ...、そんな想いを募らせ小生はある結論に至ります。

そうだ、チ。について精神医学的に考察しよう!」(←なんでやねん!?)

そこで、登場人物の性格傾向や精神疾患の可能性についてあれこれ考えてみましたが、あまり面白いネタが浮かびません...。

「うーん、こりゃちょっと無理があるかな」

なかなか同作を精神医学に絡めることが難しく、一時期は「ボツネタ」として封印しておりました。

ところが、物語が終盤を迎えるころ、某登場人物のセリフが小生にひらめきを与えたのです!

「今後真理は発見されるものではなく、作られることが前提になるかもしれない」

... ...ん!?ひょっとすると天動説・地動説を軸にすれば、「チ。」を精神医学的に考察できるかも...??

... ...ということで、どうにか記事としての体裁は整いましたので、小生が近年最も感動したアニメ「チ。-地球の運動について-」の中心テーマである天動説と地動説について精神医学的な視点から解説いたします!

「チ。」をご覧になった方も、これから観られる方も本note記事をご高覧下さいな!

尚、本記事はネタバレ要素を含みますので、是非アニメ版を視聴してからのご高覧を推奨いたします!


↓主題歌の「怪獣」、名曲です!哲学的な詩が重苦しさと疾走感が交錯するメロディと共に昇華されております!


【チ。-地球の運動について-とは?】

天文学をテーマにした日本のメタフィクション漫画。

原作:魚豊

掲載雑誌:ビッグコミックスピリッツ(2020年~2022年)

単行本:全8巻、全62話

内容:15世紀前半のヨーロッパの架空の国「P国」が舞台。同国では神の名のもとにC教徒による異端審問が活発であり、聖書に書かれてある内容と異なる思想は弾圧の対象となっていた。天動説(地球が宇宙の中心であり、太陽や星々が地球の周りをまわっているという説)が信じられていた時代、「地動説」とはまさに異端思想の一つであった。これは地動説を信じ、その「知。」を命を賭して後世に伝えんとする若者たちの物語である。

アニメ放送:NHK総合にて2024年10月5日~2025年3月15日放送。


↓原作の全巻セット、是非!


【チ。-地球の運動について-の主な登場人物】

ラファウ: TVアニメ「チ。-地球の運動について-」公式サイトより引用

ラファウ:本作第1章の主人公。頭脳明晰で弱冠12歳で大学に合格する神童。計算高く、世渡り上手、合理的と自負していたが、異端思想「地動説」に出会い、彼の運命は思わぬ方向に動き出す... ...。


ノヴァク:TVアニメ「チ。-地球の運動について-」公式サイトより引用

ノヴァク:第1章から第3章まで登場する元傭兵の異端諮問官。異端者を処刑することを生業とする冷徹な人物。ラファウの殉教ともいえる姿勢を目の当たりにし、地動説を敵視するようになる。


オクジー: TVアニメ「チ。-地球の運動について-」公式サイトより引用

オクジー:第2章の主人公。代闘士(代理で決闘を行う人)だが、極端な悲観主義者で早く天国に行くことを望んでいる。優れた視力を持つが、空を見ることに恐怖心を抱いている。


バデーニ: TVアニメ「チ。-地球の運動について-」公式サイトより引用

バデーニ:第2章に登場する修道士。優れた頭脳を持つが、修道士らしからぬ野心、そして純粋に知を求める探求心を持つ。教会の規律に従わず右目を焼かれ田舎に左遷される。ラファウが遺した未完成だった「地動説」を完成させる。


ヨレンタ: TVアニメ「チ。-地球の運動について-」公式サイトより引用

ヨレンタ:第2章と3章に登場。第2章では天文研究助手として宇宙論の大家ピャスト伯の施設で働く。女性であるため学問をする機会を奪われる。絶望の中、オクジーとバデーニに出会い「地動説」の研究に協力する。第3章では異端解放戦線組織長を務める。


ドゥラカ:TVアニメ「チ。-地球の運動について-」公式サイトより引用

ドゥラカ:第3章の主人公。移動民族の少女。頭脳明晰で利に聡いが、父親の死をきっかけに強迫的に金を稼ぐようになる。偶然オクジーが遺した本を読み「地動説」の重要性を見抜く。


アルベルト・ブルゼフスキ:TVアニメ「チ。-地球の運動について-」公式サイトより引用

アルベルト・ブルゼフスキ:最終章の主人公。ポーランド国に実在した天文学者。青年時代はパン屋の手伝いをしていたが、とあることをきっかけに学問嫌いになる。しかし、教会の司祭に告解したことをきっかけに学問の道に進む。教え子に「地動説」を唱えたニコラウス・コペルニクスがいる。

【天動説と地動説】

ここで物語のキーワードである天動説と地動説について触れておきます。

天動説とは、地球が宇宙の中心にあり、その周りを太陽、月、星々が回っているという考えです。これは2世紀ごろに活躍した天文学者プトレマイオスの考えに基づくと言われております。

地動説とは、太陽が宇宙の中心であり、その周りを地球は他の惑星が回っているという考えです。この説は前述のニコラウス・コペルニクスが16世紀に提唱いたしました(作中ではアリスタルコスの説としておりますが、実はピタゴラスが先に地動説を唱えたという説もあるそうです)。

天動説はギリシャ時代から存在し、ローマ帝国時代においては広く「定説」として受け入れられていました。

その後、キリスト教がローマ帝国の国教となると、このプトレマイオスの天動説は聖書の教えと好相性であったことから、「真理」へと格上げされます。

プトレマイオスの天動説では、地球を含めた数々の天体の最も外側に固定された天球があり、そこに神が座して地球を常に監視・統括するという構図でした。

中世のヨーロッパ人は、こうした神学的構想を内包したプトレマイオスの宇宙観を受け入れ、地球の上方に天国を、地球の下方の中心に地獄を想定したようです。

つまり、コペルニクス前の欧州では天動説が絶対的真理であり、その真逆である地動説は異端思想であるため、大衆に受け入れられる余地はありませんでした… …。

【かつて地動説は妄想だったか?】

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