見出し画像

【読書感想文】六内丸栄先生『This コミュニケーション』──終末世界のコミュケーションは、ちっともウォームじゃない

全12巻の少年漫画です。ジャンプスクエアだから、ちょっと青年向けかな。
SNSで話題になっていたので、読んでみました。想像を裏切られる面白さでした。

舞台は終末。
地球は「イペリット」というモンスターに襲われている。イペリットは、人間を滅ぼすべき対象と認識し、さらなる努力を惜しまず、人間を殺すために進化していく。地球の人口は減り、人類は追い詰められている……。
元軍人のデルウハは、ご飯を食べることが大好き。だけれど、終末地球で三食にありつくことは困難。ご飯を求めてたどり着いた日本、長野県の山奥の研究所では、イペリットに対抗する「ハントレスト」という少女たちを製造していた。デルウハは、三食を得るために、「ハントレスト」を率いてイペリットたちとの戦いに挑む。

よくある終末ものの設定なんですが、読ませる、読ませる。
デルウハという主人公。この人が……感情移入できない!
つきぬけた合理主義。ハントレストを上手く操縦するため、彼女たちの自分に対する信頼度をあげてゆくのですが、そのためにはなんでもします。このなんでもする、ということの徹底ぶり。芽生える愛情や、友情を、即座に、ぶつんと踏み潰し、消し去ります。「なんでそんなことするの!?」という怒りであったり「なんでそんなこと思いつくの!?」という驚きであったり、感情を揺さぶられるのですが、わたしのよう悪い意味で感情的な人間には、このつきぬけた合理主義がまったくわからず、まったく感情移入できません。
デルウハは、最後までこれを貫きます。貫く、という能動的なものでなく。かれがかれとしてあっただけなのですが。
最終巻は、かれが一人で立つ絵が表紙なのですが。この絵がみごとだな、と思いました。まさしく、Thisコミュニケーション。

ハントレストの少女たちも可愛いです。六人いるのですが、個性的で、読むにつれ愛着が湧いてきます。

いちこは、最初に生まれたハントレストで、長姉として皆のリーダーになりたい。
にこは、性格悪い、とみんなに云われる子で、ギャルっぽい愛らしさ。
みちは、無口で何を考えているのかわからないけど、可愛いものが大好き。
よみは、いちばん強い子。だけど、不安定。自分の存在意義を欲しがっている。
いつかは、気の良いぼくっこ。わたしはいつかが推しです。
むつは、上手に喋れないけど、実はものすごく頭の良い子。

人に持ち得ぬ怪力を得た、されど多感な少女たちを、底の抜けた合理主義者デルウハがどのように率いて戦ってゆくのか。
一気読みしてしまうくらい、面白かったです。

タイトルもめちゃめちゃ格好良いですよね。
「この」コミュニケーション。終末世界のよすがはそれであり、それでしかない。

最後に、わたしがお気に入りの一節を引用します。
…お気に入りではなかった。「こいつまじひどい!」てめっちゃ怒ったところです。

暴走した部下A。
俺の言うべき言葉を言った部下B。
そして、反応できない速度の敵。
俺は…何から殺せばいい!!?

This コミュニケーション3/六内丸栄/p97

▼ 読んでいただければ幸いです

いいなと思ったら応援しよう!

川とうる 応援いただけると、感謝感激です。いただいたチップは、創作活動に使わせていただきます。たくさんの資料本に囲まれて生活するのが夢です。

この記事が参加している募集