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《モコンさんの庭》:セルアニメ時代に合作作品を手がけたトップクラフト在籍時1972~1983年の覚え書き MEMO:02

RANKIN/BASS&トップクラフト合作制作の手順~作画に入る前の作業

国産アニメとRANKIN/BASS合作アニメーションの作業の違い
国産TVアニメーションでは、セリフ、音楽、効果音をフィルムができあがってから録音する、いわゆるアフレコ方式なのですが、RANKIN/BASSとの合作では、35㎜のシネ・テープをトップクラフトに送ってきます。セリフのシネテープと音楽のシネテープで、これをもとにして、セリフと音楽が動きに合うように作画しますので、国産TVアニメーションにはない作業がいくつかあります。

これをプレスコ(Pre-recording)方式といい、作画段階で、セリフの口の形を発音にピッタリ合わせることはもちろん、音楽に合った芝居をつけることも、効果音に合わせた動きをつけることもできる方法です。プレスコ方式は始めからヴォイス・トラック(セリフ)に合わせたアニメーションを作ることを目的とする方法のひとつなのです。この方法は国産アニメでも、音楽とシンクロさせた動きを必要とする作品で使われることがあります。

作画に入るまでの作業(1)
始めにRANKIN/BASSプロダクションから、SCRIPT(脚本)、CHARACTER(キャラクターのラフ・スケッチと背景などの参考資料)、VOICE & MUSIC(セリフと、ラフに音楽が入っているスケッチ的なカセットテープ。主にVOICE(セリフ)を聴くためのもの。)が、送られてきます。

脚本は英語なので、すぐにトップクラフトで翻訳し、それをもとにストーリー・ボード(絵コンテ)を作成する作業に入ります。以降、作品によりプリプロダクション手順が変わることがありますので基本的なもので解説いたします。

作画監督は送られてきたラフなキャラクター・イメージを整理し、実際に使用するキャラクター表を作成します。美術監督は参考資料や脚本から(原作があれば原作からも)背景設定を作成する作業を進めます。ストーリー・ボードの作成は、脚本とセリフの入ったカセットテープを何度も聞きながら、キャラクター表や背景設定をもとにして作成します。

作成したストーリー・ボードは、RANKIN/BASSプロダクションに送られてチェックを受けます。これはまだ完成ストーリー・ボードではありません。

ストーリー・ボードを作成している時期に、またはストーリー・ボードをRANKIN/BASSプロダクションでチェックしてから、RANKIN/BASSプロダクションではセリフのタイミングや音楽の位置などを再調整したシネ・テープを完成させます。これは、ヴォイス・トラック(セリフ)、ミュージック・トラック(音楽)と別々に分かれていて、35㎜のシネ・テープ〈後記〉に録音されています。音楽もラフなものから本番用になっています。効果音はトップクラフト側の作業になります(ラッシュフィルムの編集が終わった後でダビングがあり効果音はそのときにつけます)。RANKIN/BASSプロダクションより届く完成版のシネテープが実際に作画する時のフォーマットになります。

RANKIN/BASSプロダクションでは、トップクラフト側で描かれたストーリー・ボードに対する要望を記したコメントと共に、前出の完成されたヴォイス・トラック(セリフ)とミュージック・トラック(音楽)のシネテープを送ってきます。

トップクラフトでは、RANKIN/BASSプロダクション側の要望に沿ってストーリー・ボードを再構成し、決定稿を作成します。この時に注意することは、RANKIN/BASSプロダクションから送られてきた完成版シネテープでは、仮の音楽から完成されたミュージック・トラックになっているので、タイミングを再度確認します。さらに脚本にはなく、後から付けられた楽曲は、音楽シーンとして新しく絵コンテを描きます。また場面によってはRANKIN/BASSプロダクション側で作成した絵コンテが送られてくることもあります。このような大きな変更は長編ではありましたが、30分ものではなかったと思います。

ストーリー・ボードの再構成やキャラクター、背景設定などの作品の下地が整うと、RANKIN/BASSプロダクションよりプロデューサーのAR氏が来日して、チェックとミーティングを行います。ミーティングではトップクラフトのHT社長、キャラクターデザイン・作画監督のKT氏、場合によっては美術監督のNM氏が加わります。このとき必ず、RANKIN/BASSプロダクションの日本でのプロデューサーであるIM氏が立ち会います。作品によってはAR氏がトップクラフトのスタジオに来ることもありました。

このときに再構成したストーリー・ボードの確認、キャラクター、背景設定のチェック、さらにキャラクターの彩色見本や背景見本などもチェックします。この時の打ち合わせてでは、作品内容については、実質AR氏とKT氏とで細部まで詰めていきます。その後はKT氏が主導となり、トップクラフトでの作業が始まります。

作画に入るまでの作業(2)
①シネ・テープについて
合作においては、ヴォイス・トラック(セリフ)が始めに完成しているわけですが、どうやって声(音楽)に絵を合わせるのでしょうか?

それにはまず「シネ・テープ」について説明しなければなりません。シネ・テープというのは簡単に言うとフィルムと同じ幅で、同じようにパーフォレーション(穴)がある磁気テープのことです。これを音響スタジオにあるシネ・コーダーという、シネ・テープ専用のレコーダーにかけて再生(録音もできます)します。シネ・コーダーは映写機と完全に同調するようになっています。簡単に言えば、フィルムが1秒進めばシネ・テープも同様に1秒進むのです。

シネ・テープはフィルムと同様のパーフォレーションを持ち、1秒あたり24コマで再生される磁気テープです。これは音響スタジオの機器なのでトップクラフトでは別のものを利用していました。詳しくは後述。

シネ・テープで何をするのかというと、もし、シネ・テープに「YES」というセリフが録音されていれば、「Y」は何コマ、「E」は何コマ、「YES」というセリフ全体で何コマというように、セリフをコマ単位で拾う作業になります。こうして、シネ・テープに入っている音を拾い出せば、セリフの通りにアニメーションを作ることができるというわけです。

RANKIN/BASSプロダクションから送られてくるシネテープは2種類で、RANKIN/BASSプロダクションの表記では、ヴォイス・トラック(セリフの入ったもの)、ミュージック・トラック(音楽が入ってもの)は35㎜幅のシネ・テープです。このオリジナルのシネテープはダビングのときだけしか使いません。実作業では35㎜のシネ・テープ、つまりヴォイス(セリフ)、ミュージック(音楽)のトラックをミックスし、16㎜シネ・テープに録音したものを使用します。さらにスタッフ用にカセットテープで必要な数だけ複製を作ります。

②スポッティング
16㎜シネ・テープから、セリフ、音楽を拾い出す作業をスポッティングといいます。トップクラフトの場合は検尺機に、シネ・テープ用の再生ヘッド(オープンリールのテープレコーダーについている再生ヘッドと同型のものを)を取り付けて、シネ・テープを再生できるように改造しています。このシネ・テープを再生しながら、セリフや音楽のタイミングをシネ・テープの表面にマークしていく地味な作業です。セリフの場合「a」とか「i」とかいう発音の場所をデルマトグラフ(デルマ鉛筆)で記入していきます。音楽の場合は、リズムや歌詞、曲のポイントになる部分などをマークしていきます。

面倒ですが非常に大切な作業なのです。この作業がうまくできていないと、当然セリフと口の動き(リップ・シンクロといいます)が合わなくなったり、音楽にアニメーションの動きが合わなかったりします。シネ・テープにマークされたセリフの発音や音楽の位置などはスポッティング・シートという用紙に書き写されます。この用紙の1マスがフィルムの1コマにあたります。

③ダイアローグ・ナンバー
セリフは英語ですので、発音をアニメーターが聴いて、それに合うような口パク(セリフ)を各自の感覚で描くと、作品全体では統一が取れなくなります。

そこで、発音する口の形を便宜的に番号にしておきます。これは8つの基本形からなり、閉じ口「n」に母音の「a」「i」「u」「e」「o」を基本に、英語特有の「th」「v/f」を①~⑧とナンバーを振っておきます。このような口パクだけのキャラクター表を各キャラクターごとに作成しておきます。スポッティング・シートに「a」という発音があればダイアローグ・ナンバーは④というように、タイム・シートに記入しておけば、どんなアニメーターでもセリフ通りの口の形を正しく描くことができます。

ただ、「n」の閉じ口=①から「a」=④の口の形になるような場合は動きが大きくなるので、その中間にあたる形を入れたりして、なめらかな動きになるようにしていますから、実際のセリフの枚数は8枚以上になります。国産アニメーションでは、セリフは3枚(閉じ口、大きい口、中間の口)で、セリフの長さ分だけ適当に動かしていますが、合作では発音と同じ口の形を作画して、セリフと合わせるのです。これをリップ・シンクロと呼んでいます。

スポッティング・シートに記入されたセリフは、カセットテープを聴きながら確認しつつ、ダイアローグ・ナンバーをスポッティング・シートに書き足しておきます。

④タイム割り~タイム・シートの作成
スポッティング・シートは、タイム・シートと同じマス目で作成されています。カットごとに必要な秒数は、ヴォイス・トラック(カセットテープに録音したものを使用)を聴きながら、ストーリーボードにそって決めていきます。

ですから、カットごとの秒数は、スポッティング・シートで正確に決まります。カットごとの秒数に、ストーリーボードのカット番号を、スポッティング・シートに記入していく作業を「タイム割り」と呼んでいます。

記入し終わったスポッティング・シートをコピーして、カットごとにタイム・シートに貼り付けます。そうすることによってカットごとの秒数が正確にタイム・シートに反映され、セリフもダイアローグ・ナンバーを見れば一目瞭然ですし、音楽の始まりやタイミング、効果などの位置も正確に知ることができ、音に合わせたアニメーションの作成が可能となります。ここまでが国産のアニメにはない作業です。

© 2024「モコンさんの庭」プロジェクト

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