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《モコンさんの庭》:セルアニメ時代に合作作品を手がけたトップクラフト在籍時1972~1983年の覚え書き MEMO:01

トップクラフト合作作品を知るためのイントロ
セルアニメ制作の基礎知識・まとめ編

RANKIN/BASS&トップクラフトの合作作品の制作方法を説明する前に、まだ日本のアニメがセルを使っていた頃の制作過程を紹介します。以前の〈演出助手の仕事「朝日フィルム」+「東映動画」にて体験〉編部分から、自分のことを抜いてまとめたものになります。前回では書き切れなかった部分もあるので復習として読んでいただけたらとおもいます。ぼくが在籍していた頃、1969年の東映動画のテレビ放映アニメーションを例(『タイガーマスク』など)にして説明します。東映動画以外ではスケジュールや予算など違いますが制作工程はほぼ同様です。


〈国内向けテレビ放映アニメーション・シリーズ30分番組の場合〉

当時のテレビ放映シリーズ30分ものでのフォーマットは、オープニングとエンディングの合計が3分、本編は20分、次週予告が30秒というのが多かったように思います。もちろん作品によって本編の長さは多少違います。NHKはCMが入らないので本編の時間も長くなります。

オープニングとエンディングは、放映途中で変わらないことが多かったので、実際に作画する部分は本編のみで20分となります。本編は放映枠によって違いますであくまでも参考にしておいてください。

制作会社により違いますが、30分作品のスケジュールは大体作画期間が20日位で、1ヶ月から1.5ヶ月で1本納品のペース。これを何班かのローテーションを組み、毎週放映できるようにしています。ローテーションの中で制作会社は下請けの会社に発注することでスケジュールを確保します。制作会社も下請け会社も予定のスケジュール期間を守らないと固定費で赤字になります。

テレビ局へは、初号プリントで色補正などの調整がなされているポジフィルムを納品します。当時テレビ放映の場合、35㎜のネガフィルムを16㎜のポジフィルムに縮小していたと思うのですが、ちょっと記憶が定かではありません。

テレビ局では納品されたフィルムをフォーマット通りかどうかを検尺(フィルムの長さを確かめる)してから、1秒24コマのフィルムをテレビ放映用に変換します。この変換作業をテレシネと言います。テレビでの放映にはCMがついています。このCMの長さは変えることができませんので、納品された作品の長さを確かめる必要があるのです。

ぼくが子供の頃、慣れ親しんだウォルト・ディズニーのアニメ作品では、フィルム1秒間のコマ数24コマと同じ、24コマの1コマ1コマに描くフル・アニメーションでした。
これを東映動画の国内向けテレビ放映アニメーションでは、1秒間24コマの中で3コマを基準とする日本型リミッテッド・アニメーションにしたのです。

これだけで1秒間24枚の動画から、1秒間で8枚の動画で済むことになります。さらにキャラクターを止めにして口パクだけをすること、振り向きや走りやアクションでも大幅に枚数を減らすことができます。

さらにアクションの場合、止めの1枚のセル画を早いパンで引いて、止めの絵でも勢いを付けたりするテクニックやカメラワークで止まっている絵でも演出効果を付けるなどの工夫が多くなされています。また同じカメラ・ポジションを用い兼用を多く使うことも枚数と背景の節約になります。

セリフだけのシーンでは、止め1枚のセル画に口パクは3枚だけで、合計4枚というカットが出来上がります。口パクは閉じ口を1として母音の「あ」が3、その中間が2というのが定番です。日本語の母音は「あいうえお」と5つありますが、これを省略して2枚にし、「ん」の閉じ口をいれ合計3枚でセリフを言わせます。セリフ終わりは閉じ口にすることで声優さんのセリフ合わせがしやすくなります。

当然、動画枚数を減らすことで、動画や仕上げ作業も軽くなります。ぼくが東映動画に在籍していた頃は、1作品の枚数は3600枚以内で制作しなくてはなりませんでした。ぼくが関わった作品で2980枚という少ない動画枚数の作品があり、作業がかなり楽だったことを覚えています。


〈日本のアニメ制作手順・簡単な作業の流れ〉

※ここでは、例として「東映動画」のスタイルを参考にしています。

【脚本】

当時の一般的な例として、脚本は主にテレビ局のプロデューサー、製作会社のプロデューサー、脚本担当者など関係スタッフが集まり、打ち合わせを経て作成されます。原作がある場合もあれば、オリジナルのものの場合もありますが、通常、脚本家は簡単なプロット、これを『箱書き』と言いますが、これを一同で読み、意見を出していきます。この場で盛り込んで欲しいアイデアや具体的な内容などを打ち合わせていきます。これらの意見をもとに脚本を書きます。

当時の脚本家は、ペラという200字詰めの原稿用紙に鉛筆や万年筆を使って手書きで作業していました。出来上がった脚本は、再度打ち合わせの席で内容を修正・加筆・削除し、最終的に決定稿となります。決定稿は印刷されて本の状態で担当演出に届きます。1970年代初期ですので、今のようなワープロはありません。

【絵コンテ】

脚本は担当演出に渡され、その担当話数の演出が絵コンテを描きます(『絵コンテを切る』という言い方をしています)。当時の東映動画では、ぼくの周りの演出の方々には実写から転向してきた方が多く、いわゆる丸チョンの絵でキャラクター表通りの絵を描けない方もいました。そのため、絵コンテにアタリ(大まかなキャラクターの配置)やセリフ、ト書き(シーンの説明や登場人物の動作・状況を記述する文章)を書き、作画監督に清書してもらうのが一般的でした。

この絵コンテ用紙は、現在とは異なりカーボン紙付きの用紙でした。よく見かける請求書と同じようなものです。これに描くと、カーボン紙によって下の紙に転写されます。これを原版として輪転機にかけて印刷しました。これは、当時の学校で配られていたプリントとほぼ同じようなもので、20部も刷ると、ほとんどかすれてしまいます。そのため、必要最低限の絵コンテしか刷りませんでした。さらに、1作品につき100枚という決まった枚数しか使用できませんでした。絵コンテは主要なスタッフのみに配布されました。東映動画の制作管理は、この頃からすでにしっかりと管理されていました。

【作画段階での行程】

レイアウト&原画作業
ぼくが演出助手をしていた頃の東映動画では、通常絵コンテが上がったら美術監督と背景の打ち合わせをして、先に背景原図を出してもらっていました。この背景原図をもとに原画に入るのですが、スケジュールが立て込んできて、美術監督が追いつかなくなる事態が発生すると、原画がこの背景原図にキャラクターと背景を描き込むようになりました。当時の演出達はこれをレイアウト方式と呼んでいました。

レイアウトは絵コンテをただ清書するのではなく、キャラクターの配置、カメラポジション、パースや構図、空間の処理など、実写で言えば監督と撮影を兼ねたような作業になります。後に原画作業の基にもなるので、絵コンテより画面構成がしっかりとできている必要があります。

できあがったレイアウトは演出チェックを経て作画監督に渡されます。レイアウトのチェックも作画監督の重要な仕事で、作画監督によってはしっかりとキャラクターを描き込んだり、画面構成にこだわったりするなど、作品の質を上げるための重要な作業となります。

原画&原画チェック
仕上がった原画は演出が、自分のプラン通りになっているかをチェックします。当時の東映動画の演出の多くが、タイムシートの中割りで、例えば振り向きの動きに中割り4枚使っていたとすると、これを3枚にしたりして枚数を削っていました。少なくともぼくが演出助手をしていた頃はこれが当たり前でした。今では絶対にやらない方法です。

演出チェックされたものは、作画監督に廻され、キャラや動きの修正を加えます。アニメではこの作画監督が作品の仕上がりに大きく関係してきます。作画監督によっては、キャラクターの修正だけではなく、動きに手を加えたり、場合によっては作画監督自身が描き直すこともあります。作画監督は作品の魅力を引き上げ、作品としての統一感をも描くことで表現するのです。

動画
演出チェックがOKになった原画は動画に行きます。タイムシートにある中割り指定の通りに動画にしていきます。

動画検査
上がった動画は動画チェックに送られ動きがおかしくないかを確認します。時間のあるときは動画担当者にリテイクしますが、時間がないときやリテイク内容が動画担当者の技量を越えている場合などは動画検査が直します。

当時朝日フィルムでは動画検査を設けていなかったので、演出助手が全カットの動画を確認し、もし不備があればリテイクするのが普通でした。

【美術・背景】

美術監督は美術設定を作ります。様々な場所の設定をB4用紙に描くのが普通でした。
当然設定だけでなく美術ボードも作成します。

背景の色は彩色にも関係があるので、美術ボードにキャラクターの色見本を乗せてなじむように調整します。

また背景と色の調和が必要な場合があるので、仕上がった背景から色を合わせることもあります。

【仕上げ段階での行程】

色指定
作品のキャラクターの色を決めたり、動画に色指定を入れたりします。

トレス&トレスマシン
ハンドトレスがメインだった東映動画にも、この頃トレスマシンが登場し『タイガーマスク』はすべてトレスマシンを使っていました。当時のトレスマシンは、専用のキャリアにタップが付いていて、動画をセットしその上にカーボン紙(裏表あります)をのせ、その上にセルをかぶせます。

このキャリアをローラーに通すと熱が加わり、線の部分のカーボンがセルに転写されるのです。カーボン紙の裏表を間違えるとセルにではなく動画にカーボンが付いてしまってえらいことになります。このトレスマシンはひとりで簡単に扱えます。

当時の東映動画にはアニメ用ゼロックスもありましたが、大型で数人いないと使えないほど面倒な工程になっていました。夜などに手伝うことが度々ありました。

トレスマシンを使い始めた当初、まだカーボン紙の質が悪く、線によっては出ないことや、かすれ、スポッティング(穴あき)がありました。これはハンドトレスで修正します。
また、トレスマシンは使うにつれて加熱していき、動画の線が綺麗に転写されなくなります。このために2台のトレスマシンを交互に使い熱くなりすぎないようにします。

ハンドトレスされたセルは裏返して色を塗りますので絵の具のはみ出しに気をつけなくてはなりません。これに対してトレスマシンでは同じく裏返して彩色するのですが、カーボンはトレスとは反対に裏についています。そのために絵の具がカーボンのわずかな出っ張りで止まりすごく塗りやすいのです。ただカーボンの質がまだ良くなかったせいか、カーボンの線にスポッティングやかすれなどがあり、手作業で補正していました。

彩色
指定された色でセルに色を付けます。この当時はまだセル画なる言葉はなくて、アニメ雑誌が出版されるようになってから一般的になりました。『タイガーマスク』の彩色はぼくも経験しましたが、色数も少なく比較的やりやすかったです。これが『マジンガーZ』になったらロボットのアップサイズで影などがきっちりとついていると面倒で手強かったです。

特殊効果
エアーブラシを使って、ハイライトをつけたりする作業が多かったと思います。あと霧などの表現にも使います。他には稲妻などの発光しているものに使ったり、塗りの煙がベタッとしないようにブラシで立体感を出してもらいました。

その究極がタツノコプロの『ガッチャマン』で使われていた爆発シーンの特殊効果ではないでしょうか。

仕上げ検査
彩色の終わったセルは仕上げ検査で1枚ずつ、線のかすれ、汚れ、塗り間違い、塗り漏れ、絵の具のはみ出しなどをチェックされます。

【撮出し】

仕上がったセルと背景を組み合わせて撮影に出せるように準備します。当時の東映動画では演出が、セルより大きめの背景に演出助手がセルをのせて確認します。

背景は1カットにつき1枚ではありません。空などは兼用で何度も使います。あと同ポジを使うカットも1枚の背景で数カット使うことはざらにあります。撮影に出せる状態になっているかを確認する作業になります。

【撮影】

撮影はタイムシートをもとに、セルを変えて撮影していきます。カット袋にFIXとあるものは固定のカメラ台で撮影します。カメラワークのT.U.、T.B.、段を組むマルチなどはカメラを上下できる台を使います。当時はモノクロからカラーへの移行時期でもありました。

『タイガーマスク』はカラーです。カラーだとライトの光量もモノクロとは違います。
カメラは普通の35ミリ実写カメラの速度をギアで落として使っていました。ギアを外せば普通に実写を撮影できます。

実際に使う用語としては、T.U.(T.I.=Track In)、T.B.(T.O.=Track Out)、の他にフォロー(Follow)、パン(PAN)、画面振動、回り込み、オーバーラップ(Dissolve)、ダブらし(WXP)、透過光、スーパーインポーズ(Superimpose)、マルチプル・プレーン(multiple plane)、ぼかし、FO、FI、などがあります。

これらの用語はネット上で検索するとたくさんでてきますので、興味のある方は調べてみるとよいかと思います。

【オールラッシュ】

編集で現像所から上がってきたフィルムを絵コンテの順番にそのまま繋ぎます。『タイガーマスク』の時はまだ35ミリのムビオラ(ポジフィルム用の簡易編集機)しかなかったので、モノクロの35ミリプリントを使用していました。

色間違いなどを見るためだけに16ミリのカラープリントを焼いていました。これは後に、16ミリのムビオラが導入されて、35ミリプリントでの編集はなくなりました。

【編集】

映画は編集で作られるとも言います。編集ではフォーマットより長めに撮影されているプリントを、セリフや動きのタイミングでカットしていきます。東映動画ではまだ実写の名残で記録係がいます。編集で使わないカットやリテイクのカットを教えてくれます。アフレコ台本も作成してくれます。

編集の時は深夜までかかることが多く、夜食の手配と無線タクシーの手配をします。これは制作進行の仕事ですが、ぼくは演出助手と制作進行を兼ねていたので全部やりました。
ちなみにこの頃は24時間コンビニなんてありませんでした。当然スマホもありませんでした。夜食は深夜まで営業している近所のバーのママさんにお願いしておき、約束しておいた時間になったら取りに行きます。

【アフレコ・ダビング=音響】

アフレコ
記録係が作成してくれたアフレコ台本をもとにアフレコをするのですが、このアフレコ台本はセリフのあるカットしか書いてありません。そのために演出または演出助手がセリフのきっかけを出さないと、声優がどのタイミングでセリフを発するか分からなくなります。

今のアフレコ台本は全カット、セリフのないシーンも書いてあるので順に進めれば問題ないのですが、この当時は音響監督を設けていないため、演出がすべてのセリフのきっかけやニュアンスまで含めてすべてを決定するのです。

予告のナレーションについては演出助手の仕事です。

この東映動画方式は音響監督を必要としないので、ものすごく勉強になりました。おかげで、声優さんとキャラクターの性格付け、音楽の入りのタイミングや効果とのバランスなど基礎的なことはすべて習得することができました。

この当時のアフレコは動撮(着色されていない動画ラインだけの撮影)とか白味(絵が何も入っていない空白のフレーム)などはなく、全カットちゃんとすべてのカットが予定通りに完了していました。アフレコの所要時間は約2時間程で大体終わっていました。

ダビング
セリフと音楽と効果音をこの段階でまとめます。音楽のイメージは事前に記録係と打ち合わせしておくことで、音楽の選曲がすんでいます。効果音も同様です。ダビングの時に全部を合わせて、もし変えたい音楽があればオリジナルのテープがあるのでそこから拾います。また効果音を足したり、その場で生音(足音とか)を入れたりします。

映画の要素である、セリフ、音楽、効果音を調節して、必要ならフィードバックやエコーなどの加工をして音を整えます。ミックスしてサウンドトラックができあがります。

【ネガ編集+リテイク差し替え】

ネガ編集とは、編集されたポジプリントに合わせてネガフィルムを編集する作業を指します。その際に撮影し直してOKとなったリテイクカットも差し替えます。

【初号プリント】

現像所では、編集されたネガの色合いを修正する作業を行います。これは、カメラや撮影時の照明条件によって色が微妙に変化するためです。この修正作業は「タイミング」と呼ばれ、最終的にネガからプリントされたフィルムが完成します。

最初に完成したプリントフィルムは「初号プリント」、初号前に実験的に焼かれたものは「0号」と呼ばれます。

初号試写で問題がなければ、フィルム納品となります。

納品されたフィルムは、テレビ放送用にフィルムをテレビジョン信号に変換する「テレシネ」という作業を経て放映されます。

© 2024「モコンさんの庭」プロジェクト

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