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京都ミステリースポット紹介 !昼は恋人たち、夜は呪いの神──貴船神社に眠る「丑の刻参り」の真実

京都には、美しい景色の裏に「決して夜には近づいてはいけない」と語り継がれてきた場所があります。

その代表格が、洛北の奥深くに鎮座する貴船神社です。

夏になると川床料理を楽しむ人々で賑わい、「恋愛成就のパワースポット」として若い女性やカップルが訪れる人気の神社。

しかし、その笑顔に満ちた昼間の姿だけを知っている人は、この神社がかつて京都一恐ろしい呪いの聖地と呼ばれていたことを知りません。

「京都のミステリーゾーンへようこそ」

かつてJR東海「そうだ 京都、行こう。」のCMで、長塚京三さんは静かに語りかけました。


「京都のミステリーゾーンへようこそ。
さて、どのコースをお選びになりますか。
金星からのUFO到来説。
天狗伝説。
義経生存説。
……信じられないって顔してますね。
嘘か本当か、ちょっと先に行って確かめてきます。」

このナレーションを聞いただけで胸が高鳴った人も多いでしょう。

京都には歴史だけでは説明できない、不思議な話が今も数多く残っています。

そして、その中心にある場所の一つが貴船神社なのです。

山奥へ誘われるように辿り着く神域

京都・出町柳駅から叡山電鉄に揺られること約30分。

終点近くの貴船口駅で降りると、街の喧騒は一気に消えます。

山々から吹き下ろす冷たい風。

耳に届くのは川のせせらぎだけ。

さらに約2キロ歩くと、朱色の灯籠が並ぶ幻想的な石段が姿を現します。

夏でも驚くほど涼しく、「京都の避暑地」と呼ばれる理由がよく分かります。

ここは古来より水神・高龗神(たかおかみのかみ)を祀り、雨乞いの神として朝廷からも篤く信仰されてきました。

ところが、この神社にはもう一つの顔があります。

「恋愛成就」は最近の話

現在の貴船神社は縁結びの神社として有名です。

恋愛のお守り。

水占みくじ。

カップルの記念撮影。

しかし、年配の京都人に

「昔の貴船は恋愛の神社でしたよね?」

と尋ねると、少し苦笑いしながらこう答える人がいます。

「……いや、昔は違う。」

そして、それ以上は語ろうとしません。

なぜなのか。

それは、この場所が何百年もの間、

「呪いの神社」

として知られていたからです。

真夜中二時、鬼が歩く

丑の刻。

現在の時刻でいえば午前2時頃。

草木が揺れる音しか聞こえない深夜。

誰もいない境内に、一人の白装束の女が現れます。

髪は乱れ、

顔には白粉、

唇には真っ赤な紅。

歯は黒く染められ、

胸には鏡。

一本歯の高下駄を履き、

頭には鉄輪。

その鉄輪には三本の蝋燭が燃えています。

暗闇に浮かぶ三つの炎。

まるで鬼です。

その女は無言で大木へ近づくと、

憎い相手に見立てた藁人形を取り出します。

そして、

カン――

カン――

カン――

夜の山に金槌の音だけが響きます。

一本。

また一本。

巨大な杉へ五寸釘が打ち込まれていく。

これが日本最古の呪術として知られる

「丑の刻参り」

です。

しかも一度で終わりではありません。

七日間続けて初めて願いが叶うと信じられていました。

その頃には、呪う相手だけではなく、自らの心も鬼へと変わってしまう――。

そう恐れられていたのです。

ダラシメンさん(笑)

見てしまった者も呪われる

さらに恐ろしい言い伝えがあります。

丑の刻参りは、

「誰にも見られてはならない」

もし目撃されたなら……

その目撃者を殺してでも秘密を守る。

そんな恐ろしい伝承まで残っています。

もちろん史実として確認できる話ではありません。

しかし、人々がそれほどまでに「呪い」を本気で恐れていた証拠でもあるのでしょう。

千年前から続く「呪い」の記録

実は、このような信仰は江戸時代に生まれたものではありません。

平安時代中期に成立した歴史物語『栄花物語』にも、貴船神が男女の愛憎と深く結びついていたことが記されています。

関白・藤原頼通が重い病に倒れた時、

どんな祈祷でも治らなかった病の原因は、

物の怪となって現れた貴船の神でした。

周囲は、

「女性問題が原因ではないか」

と悟ったといいます。

つまり千年以上前から、

貴船は恋愛の神ではなく、

男女の怨みを司る神

として恐れられていたのです。

その噂は宮中から庶民へと広がり、

やがて「貴船へ行けば呪いが叶う」という信仰へ変わっていきました。

あの和泉式部も鬼になりかけた

百人一首でも知られる歌人・和泉式部。

恋多き女性として知られ、

藤原道長から「浮かれ女」と皮肉られたほどでした。

若き日は数々の恋に生きた彼女でしたが、

やがて年齢を重ね、

夫・藤原保昌の心は別の女性へ移ってしまいます。

失われていく愛。

若さへの焦り。

眠れない夜。

彼女は最後の望みを託し、

貴船神社へ向かいました。

その時に詠んだ歌が今も残されています。

物思へば
沢の蛍も
わが身より
あくがれ出づる
魂かとぞ見る

「恋に苦しむ私には、沢を飛ぶ蛍さえ、自分の身体から抜け出した魂のように見えてしまう。」

魂が抜けるほどの恋。

あと一歩で、その想いは怨みへ変わるところでした。

もしここで彼女が呪いを選んでいたなら──。

そう考えると背筋が寒くなります。

神が返した一首

すると、不思議なことが起こります。

社殿の奥から、一首の歌が返ってきたと伝えられているのです。

奥山に
たぎりて落つる
滝つ瀬の
玉散るばかり
物な思ひそ

「山奥で砕け散る滝の水しぶきのように、そんなに思いつめてはいけません。」

それは貴船明神の声だったと伝えられています。

その言葉によって和泉式部は鬼になることなく心を取り戻し、

やがて夫の心も再び彼女のもとへ帰ってきたという逸話が残っています。

夏の昼と、真夜中の貴船

昼間の貴船神社は、川のせせらぎが響く癒やしの場所です。

しかし、もし真夜中の丑三つ時。

灯籠の火も消えた石段で、

どこからともなく

「カン……カン……」

と五寸釘を打つ音が聞こえたら。

あなたは振り返りますか。

それとも、

何も聞かなかったことにして足早に立ち去りますか。

千年の時を超えて語り継がれる「丑の刻参り」。

その舞台となった貴船神社は、恋愛成就の神社であると同時に、人間の愛が憎しみに変わる境界線を今も静かに見つめ続けているのかもしれません。

この夏、京都を訪れるなら、美しい景色だけでなく、その奥に眠る"もう一つの物語"にも耳を傾けてみてください。

もしかすると、川のせせらぎに混じって、千年前から響く金槌の音が聞こえてくるかもしれません。

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