パキポディウムと梅雨
実生の良さは、日本でパキポディウムを種子から育てることで、ある程度その環境に適応していくこと。ある条件を満たせば、梅雨の長雨を過度に恐れる必要はないと考えている。
もちろん排水性の悪い用土や、長期間過湿状態が続く環境では根腐れのリスクは高まる。しかし、適切な粒径と通気性を備えた用土を使用している場合、降雨そのものが直ちに根腐れへ繋がるわけではない。長雨を利用すれば、驚くほど成長が促進される個体もあるのだ。梅雨の管理は「リスク」と「恩恵」を立体的に捉えることが重要となる。
雨水が用土を通過する過程では、新しい空気が引き込まれる。用土中の古い空気は押し出され、水が抜けた後の孔隙には再び酸素を含んだ空気が入り込む。この現象は土壌のガス交換を促し、根の呼吸を支える重要な働きを持つと考えている。
根は水を吸収する器官であると同時に、酸素を利用して呼吸を行う器官でもある。そのため問題となるのは「雨に当たること」ではなく、「水が停滞し続けること」だ。
実生株の場合、活発に伸長する細根が多く、十分な酸素供給が行われれば梅雨時期でも根は成長を続ける。むしろ適度な酸素と水分が維持されることで、乾燥を繰り返す時期よりも根の伸長が促進される場合さえある。
雨上がりにパキポディウムを観察すると、株が内部から潤い、表皮がしっとりとしているのがわかる。雨ざらしにする期間は、用土の排水性や肥料の量によって左右されるが、実生1〜3年程度の株は常に雨にあてている。この期間は水を与えるべき期間であると考えているからだ。
雨が降り続いて用土が完全飽和状態になると、一時的には酸素濃度はむしろ低下する。しかし、粒の大きな用土や団粒構造が保たれた用土では排水と再通気が繰り返されるため、結果として根の呼吸が維持されやすくなる。

梅雨は植物とさらに強く、深い信頼関係が築ける期間でもある。パキポディウムにとって梅雨とは根の状態や環境づくりを見直す絶好の機会でもある。晴れの日だけで植物は育たない。雨の日にどう向き合ったかが、夏以降の成長の差となって現れるのである。
