「読めた/読めない」は体調だけじゃない。アプリの仕様が“読書”を破壊する瞬間について。
ここ最近、私は「聴く読書」によるリハビリの手応えを感じていた。
かつてあれほど苦戦していた長編シリーズ、 『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』(文庫版 全20巻)。 これを、BOOK☆WALKERの読み上げ機能を使って、一気に完走できたのだ。
本編だけでなく、以前は途中で挫折してしまった「後日談(外伝)」まで含めて、今のスタイルなら楽しみながら消化できた。
「ああ、だいぶ読めるようになってきたな」 「これなら、続編もいけるだろう」
そう思って、同じくBOOK☆WALKERに入っている続編、 『GATE SEASON2 自衛隊 彼の海にて、斯く戦えり』に手を出した。
しかし、そこでピタリと手が止まった。 急に、物語が頭に入らなくなったのだ。
物語がつまらないわけではない。 私の体調が悪化したわけでもない。
理由はたった一つ。 同じアプリなのに、この本だけ読書の「連続性」が断たれたからだ。
1ページごとなら読める、でもそれではダメなんだ
私が直面したのは、BOOK☆WALKERの仕様における不可解な壁だ。
実は、SEASON 1(文庫版)も SEASON 2も、電子書籍のデータとしては「章ごとの区切りがない」という点では共通していた。 しかし、決定的な違いが一つだけあった。
SEASON 1(既読): 挿絵が入っていた。どうやらこの「挿絵」がシステム上の区切り(息継ぎポイント)として機能したようで、スムーズに連続して聴くことができた。
SEASON 2(今回): こちらは挿絵が一切なく、かつ章の区切りもない。システムから見れば、膨大な文字データが延々と続く「巨大な一つの塊」になってしまっている。
その結果、何が起きたか。
「複数ページを選択して読ませようとすると、全く動かない」
長文の処理落ちなのか、読み上げが開始されない。 唯一の解決策は、「1ページごとに範囲選択をして再生する」ことだけ。
1ページ読み終わるたびに音が止まる。 画面をタップし、次のページを選び、また再生ボタンを押す。
元気な時なら、なんてことのない操作だろう。 「ページをめくる手間」と同じだと思えるかもしれない。
だが、今の私のような「リハビリ中の脳」にとって、これは致命傷になる。
回復期の脳は「再開」に弱い
なぜ、止まると読めなくなるのか。
「聴く読書」の最大のメリットは、「受動的でいられること」だ。 湯船に浸かるように、流れてくる物語に身を委ねていれば、勝手に世界が広がっていく。だから疲れない。
しかし、1ページごとに止まるとどうなるか。
音が消える(物語の世界から弾き出される)
「あ、終わった」と現実に引き戻される
スマホを手に取り、操作をする(意志力を使う)
もう一度、物語の世界に入り直す
この「入り直すコスト」が、今の私にはあまりに高い。 数十秒ごとに現実に引き戻され、そのたびに「よいしょ」と世界に入り直す。 それを繰り返しているうちに、「もういいや、疲れた」となってしまう。
内容が面白くても、没入感を維持するハシゴを外されてしまっては、登りようがないのだ。
結論:読めないのは、あなたのせいじゃないかもしれない
今回の件ではっきりしたことがある。
もしあなたが「本が読めない」「集中力が続かない」と悩んでいるとしても、それは必ずしも**「あなたの能力や体調の問題」とは限らない**ということだ。
同じ『GATE』シリーズでも、前作は読めた。
でも、続編は読めなかった。
この差は、私の中にはない。 「データの作り(挿絵の有無)」と「アプリの挙動」の相性が悪かっただけだ。
読書リハビリにおいて、「止まらないこと(連続性)」は、画質や機能の多さよりも遥かに重要なスペックだ。
もし、読み始めてすぐに疲れてしまう本があるなら、自分を責める前に疑ってみてほしい。 その本、そのアプリは、あなたの没入を邪魔していないだろうか?
「環境」を変えるだけで(あるいは本を変えるだけで)、嘘のように読めるようになることは、確かにあるのだ。
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