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【エッセイ】高級イタリアン食べていいの?

文章教室のあと、先生とイベントの打ち合わせも兼ねて ランチに行くことになった。
先生と言いつつ10年の付き合いになるので、ほぼ友達だ。

「 行きたいところがあるの。そこでいい?」

と先生が言う。
場所を聞いたらピンと来た。 ちょっと高級なイタリアンだ。
ランチでも確か、 3000円ぐらいしたような・・・。
平日に習い事をして、 豪華なものを食べていいのだろうか。
何に対してかわからないが、少し罪悪感が出てきた。 でも断る理由もないし、ちょっと行きたい気持ちもふつふつと湧いてきた。

店が近づくとシャッターが降りてるのが見える。
「 えー 休みかも」
先生が残念そうな声をあげる。
一方、私は内心 ホッとする。
休みなら仕方がない。

しかし 近づくと、シャッターが閉まっていたのは隣の店でイタリアンの店は開いていた。
「あいてる!」
先生が喜ぶ 横で、さっと黒板に書かれたお値段をチェックした。
「 2200円。 高級だねぇ」
思わず声が出た。
先生が目を丸くして
「大丈夫?」
と聞く。 でも黒板のメニューを眺めているうちに食べたい気持ちが大きくなっていく。
3000円じゃなくて 2000円だし、いいよね。言い訳ならいくだって出せる。
「 うん 大丈夫!  入ろう」
私は扉を開けた。
笑顔の素敵な女性が気持ちの良い声で「いらっしゃいませ」 と 出迎えてくれた。
店内はこじんまりとしたかわいいお店だった。
堅苦しい感じは全くない。
メニューにある3種類のパスタはどれも美味しそうだ。

「 イタヤ貝って何ですか」

「 ホタテ貝のような感じの・・・」
お店の方の丁寧な説明を 「へえー 」とうなづきながら、別のメニューが気になる。
この流れだとイタヤ貝のクリームパスタを頼むべきなのだろうが、

「 でも」
と切り出し、

「 蒸し鶏と新ごぼうのオイルパスタ にします」

「 違うの 頼むんだ」
先生に間髪入れず つっこまれた。
お店の方は目を細くして にっこり「かしこまりました 」と注文をとってくれた。

ところで 罪悪感って何でしたっけ?

前菜もパスタ もデザートもどれも美味しかった。
先生は 帰り際に 店員さんに美味しかったと伝えると同時に
「2200円て覚えやすくて良いですね」
と謎のコメントをしていた。
お店の方はやっぱりにっこりしていた。無言だったけど。

家に帰り、主婦モードになると 2200円はちょっと特別すぎたかなと思い始めた。 横のテーブルで歓送迎会 らしきことをしていたグループのことも思い出して、 そういう店 だよね と罪悪感 らしきものが にじみ出てきた。

「高級なランチを食べた」
黙っていられず夫に告白した。
ところが、夫は「ふうん」と 一言 興味がなさそうだ。
もう少し興味を持ってくれない?
写真で気を引こうとスマホを取り出した。
しかし スマホに映っていたのは前菜とデザートだけ。
パスタの写真は撮り忘れていた。
どれだけがっついていたのだろう 。


おいしかったなー 
1人で写真を眺めて余韻をかみしめた。

そしてようやく「食べていいに決まっている」と本当は思っていることに気が付いた。



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