【noteでBL12弾】その恋、供養されません!~転生してもやっぱりお前か~
やってまいりました、noteでBL企画第12弾!
12……ということは1年経った!?
おめでとうございます🥳🎉🎉
今回のお題は四四田さんとのコラボ企画、表向きは「生きる時間」、真のテーマは「死」です。
死別カプ……お盆らしいですね!
私はお盆に飾る提灯(暗い部屋で光ってるやつ)が好きで、実家を出てからも「提灯買おうかな」とか思ってます。
買おうかな……。
お盆過ぎたらセールとかするかな?
さて、今回の企画の詳細はこちら🔽
なみさん、いつもありがとうございます!
またスペースやりましょ✨
皆さん、しっとりした雰囲気の作品を書かれるのでしょうか。
私は何やら様子がおかしくなりました。
通常運転とも言います。
いつものメンバーは殺しても死ななさそうだったので、今回は見知らぬキャラクターで書きました。
誰だ、お前たち。
いつにも増して癖のある小説になったので、こんな時間に投稿しております。
皆、寝てるかなー?
明日は祝日だから起きてる人もいるかなー?
私は今から寝ます。
若干グロイです。
バレンタイン企画の時と同じタイプのグロさです。
読むときは注意してね!
文字数は8355文字。
今回は1万文字までOKという大盤振る舞いなので、ガッツリ書かせて頂きました😚
それでは、「輪廻転生コメディ~不穏もあるよ~」な、かし子の作品をどうぞ!
゜。゜。゜。゜。゜。゜。゜。゜。゜。゜。゜。
三世の縁、というものがある。
三世とは前世、今世、来世の三つの世のこと。
主従は三世に渡るほど深い縁で結ばれているらしい。
この話を信じるならば、前世で主従の関係だった二人は今世だけでなく来世でも会えるようだ。
ということは、目の前でイチャついてる男女は来世でも出会ってイチャつくのだろう。
羨ましい。
爆発しろ。
「鷹継さま~」
「こら、今は鷹継じゃなくて、権三郎だろ?」
「そうだった! ゴンちゃん☆」
「なんだい、愛しの星空……」
「きゃーー!! 恥ずかしーーー!!」
ちなみに、星空は好きな女性を美しいものに例えた比喩表現ではなく、目の前の女の本名だ。
キラキラネームというやつである。
彼氏の名前との格差が凄くないか。
茶髪のチャラい男が権三郎って、結構ギャップあるぞ。
星空本人は名前の通りキラキラしている。その爪と髪は明らかに校則違反だな。
かくいう俺の名前は胡桃だ。
男にしては可愛らしい名前であまり好きではない。
目の前の二人は高校の中庭のベンチで、こんなノリのコントをずっと繰り返している。
気が散り過ぎて俺の読書はまったく進んでいない。
さすがにぶん殴ってやろうかと思った。
他の生徒は関わりたくないのか俺たちに近寄ろうとしない。
おかげで周囲には人がおらず、秘密の会話もバッチリできるというわけだ。
え?
もしかして俺もコイツらの仲間だと思われてる?
だとしたら、かなり嫌なんですけど!?
このアホ共は前世では殿と小姓だった。今世では男女に生まれ、自他共に認めるバカップルになっている。
前世もこんな感じだったが。
「で、くるるんは? 進展あったの?」
星空は俺のことを「くるるん」と呼ぶ。
というか知り合い全員謎のあだ名で呼んでいる。
こいつ、前世ではそんな癖なかったんだけどな。女に転生して何か意識が変わったのか?
「手伝ってやろうか? 前世からのよしみで一肌脱いでやってもいいぞ」
こちらを心配するというよりも絶対面白がってそうな男の申し出はすっぱりと断った。
「何か変なことになりそうだから遠慮しておく」
こいつらが変な行動を起こして、俺の平穏な高校生活が崩壊しても困る。
「くるるん、色仕掛けは? 綺麗な顔してるんだし。あんまり前世と顔変わってないよね? すぐにわかったもん」
「そうだ、あいつの家にでも行って二人きりになって迫ってやれ。そんで押し倒せ。ん? お前達、どっちがどっちだっけ」
「うるせー、下ネタやめろ! 俺はお前らとは違って奥ゆかしいんだよ」
目の前のバカップルと同じく、俺には前世の記憶とやらがある。
俺の前世は武家の五男坊だった。
悲しいかな目の前にいる男はかつての主君だ。
ということは権三郎とは来世でも出会うということか。マジかよ。
前世の俺はコイツに小姓として召し抱えられた。
星空は小姓仲間だ。殿の寵愛を受けてめちゃくちゃ出世し、殿の子どもの後見人とかもやって、傍から見れば充実した人生を送っていた。
まぁ、殿が早逝して仕事くらいしかすることなかったからかもしれんが。
俺は寵愛とは程遠かったが、ほどほどの人生を送った。
父親が古株の家臣だったから、それなりに優遇されてたのである。
ただ、わりと若くして死んだけどな!!!
恋人とイチャイチャする暇もなく死に別れたんだ。ちきしょう。
俺には恋人がいた。
しかも今世で再会済みだ。
俺の場合は主従関係ではなかったし、前世で恋人同士ではあったが夫婦にもなっていない。男同士だったし。
だから出会えた時はすごく嬉しかった。
ところが、ここで俺に試練が訪れた。
恋人同士だったことを思い出したのは俺だけで、相手は全く思い出していなかったのだ。
可愛い笑顔で「はじめまして!」と言われた時、俺は膝から崩れ落ちた。
俺が何をしたというのだろう。
今は「お友達ポジション」で我慢をしている。
いつかお友達から恋人に昇格してやるんだ……!
「あれ? くるるん、どこ行くの? まだ昼休み終わってないよぉ」
「教室戻るんだよ。お前達のせいで静かに本も読めない」
「何だよ、家でも本は読めるだろう。せっかく今世でも会えたんだから楽しくやろうぜ」
「いや、前世だけで十分です」
「つまらない」と文句を言う二人を後に残し、俺は中庭を去った。
あいつら、二人だけの世界にいるくせに何で俺を巻き込もうとするんだ。
教室に戻ると、何やら異常事態が発生しているようだった。
休み時間は静かとは言い難いクラスだが、それにしても騒がしい。廊下からでも教室内がざわついているのがわかる。
何事かと廊下から室内を覗こうとすると、クラスメイトの一人が俺に気付いた。
「あ! 胡桃戻ってきた! ヘルプ、ヘルプー!」
「なんだよ、突然」
嫌な予感がした。
クラスメイトが俺を頼るということは。
「慧を止めてくれ! また死のうとしてる!」
「おおおお!? どうしていつもグッバイ世界しようとするんだよ!」
悪い予感は当たるものだ。
俺の前世の恋人、何で死のうとしてるんだよ!
これで何回目だ!?
「慧!」
慌てて教室に入ると、カッターの刃を喉元にあてている慧がいた。
周囲のクラスメイトは固まっている。
「あ、胡桃ちゃん。今までありがとう。最期に挨拶できて良かった」
最期の挨拶と言いつつも、「また明日ね~」くらいの気軽さだ。
「何でそんな冷静に死のうとしてるんだよ! 今度は何が理由だ! とりあえず手に持ってるカッターよこせ!」
俺は慧の手からカッターを叩き落とした。
何も考えずにはたき落としてしまったが、慧は怪我一つしていなかった。
良かった。
慧はよく死のうとする。
最初は構ってちゃんで可愛いなと思っていたが、構って欲しいどころか本当に死のうとしているのだと最近わかった。
表情はいつもにこやかだが、「生きててごめんなさい」みたいな気持ちになる時があるようだ。
かといって、リストカットの痕はない。
一思いにグサッと死のうとしてくる。
マジで怖い。ひやひやする。
慧の手からカッターが離れたことに周囲は安心したのか、皆自由に動き出した。
止まっていた時が動き出したかのようだ。
「俺たち教室の外にいるからさ、慧が落ち着いたら声かけてくれよ」
「あと10分くらいで午後の授業始まるから、それまでによろしくね」
「お、おう……」
慧の自殺騒動に慣れたクラスメイトは、俺に全てを押し付けてさっさと教室を出て行った。
いや、クラスメイト薄情だな?
しかも全員出ていきやがった!
委員長とか保健委員くらいは残れよ!
広い教室に二人だけ。
それなのに全くときめくシチュエーションでないのが悲しい。
「で? 今日は何で死のうと思ったの? 空が青かったから?」
「そんなことで死なないよ……僕、そんな繊細じゃないよ」
心外だ、とでも言うように慧は頬をふくらました。
確かに、本当に繊細だったらこんな騒動起こさないか。逆に精神が図太いのかもしれない。
いや、でも繊細だからこそ、日常のちょっとしたことで死にたくなるのか?
ん?
死にたいと思ったことがないからわからない。
「じゃあ何でだよ。別にテストの結果も悪くなかっただろ」
慧はおっとりした見た目に反して、めちゃくちゃ成績がいい。
しかもガリ勉ではない。
運動だって……変なところで転ぶこともあるが、基本的には得意だ。
すごいだろう、俺の前世の恋人。
「うん……あのね、僕、探してる人いるでしょ」
「ああ、前世の恋人ね。そのうち会えるだろ」
慧は俺のことは思い出せないくせに前世に恋人がいたことは覚えているらしい。
そして前世の恋人に執着していることも明らかだった。「早く会いたい」とずっと言っている。
そこがもう、俺にとってはもどかしいのなんのって。
ちなみに周囲の人間は慧のことを「夢見るロマンチスト」と評価している。
よかったな、可愛い顔で。
「でも全く会える気がしないんだ。権三郎くんと星空ちゃんはすぐに見つかって一緒にいるのに」
慧が深いため息をつく。
眉を下げてショボンとした顔は叱られた時の犬っぽい。
「アイツらは恋人同士って言うのもあるけど主従関係もあったからな。お前もそのうち会えるだろ」
目の前にいますけどね。
「自信ない……」
「会えなくてもいいじゃん。っていうかまだ16歳だぞ。これから会える可能性は十分ある!」
俺が励ますと、慧はパッと顔をあげた。
どうやら俺の言葉が心に届いたようだ。
その顔はキラキラしている。眩しい!
「でね、今世で出会えないなら、もう死んじゃおうかなって」
「何でそうなった!? 俺の慰めの言葉聞いてた!?」
それ、笑顔で言うセリフじゃないからね!?
「来世に期待?」
「するなするな、今世で会えなかったら来世も無理だろ」
俺たちは主従じゃなかったんだ。
来世で会えるかわからないだろう!
っていうか、夫婦でもなかった俺たちは今世で出会えただけでもラッキーなのだ。
今世チャンスを逃してはいけない。
「そうか、どうしよう」
慧は悩んでいる様子だ。
いいか、慧。お前が俺に気付けばすべて解決なんだぞ。
でも俺からは言わない。
言って「え? そうなの?」ってガッカリされるのが怖いからだ。
それよりは慧が密かに思い出して、俺の知らないところでショックを受けてくれていた方がまだマシである。
「っていうか、死ぬとか言うなよ。寂しいだろ」
これは本当にそう。
前世の縁とか関係なく、しばらくはお別れなのだ。
最悪、永遠に会えないことだってある。慧のいない未来なんて嫌だ。
寂しいどころの話じゃない。
そんなことになったら俺は成仏できずにさまよえる魂となるだろう。
「寂しいの? そうだよね、胡桃ちゃん僕以外にお友達いないもんね……」
「失礼だな!? そういうことじゃねぇからな!?」
いるよ!?
友だちくらい。
星空と権三郎とか……、友人枠かと言われると微妙なところだが。
すまん、やっぱり友達いなかったわ。
「じゃあ、何で寂しいの? 他にもお友達いるから大丈夫だよ」
こいつ……たった今、俺の心臓を抉ってきたことをスルーしてきた。
「友だちいない」という事実を突き付けることを失礼だと思ってないようだ。
しかも友達一人死んでも他にもいるから大丈夫って、どんなサイコパス理論だよ。
確かにこいつは前世からそうだった。
天然というかなんというか。
やっぱ前世で坊さんだったから変なとこ悟ってんのかな。
普通の人と考え方が違うんだろうか。
「お前みたいな宇宙人に何て説明すればいいやら……ほら、例えば俺が死んだらどうするよ」
これで俺の気持ちを伝えることはできるだろうか。
「悲しい」みたいな反応を返してくれればいいのだが。
「え? 食べるよ」
……はい?
慧はさも当然といった顔をしているが、予想外の答えがきた。
どういうこと?
当たり前だが俺は聞き返した。
「食べるってeat?」
「うん、普通に食べるよ。血だってすするし、髪の毛も食べる」
やめろやめろ、グロ注意だ。
そんな話を笑顔でするんじゃない。
「なんで?」
思考が追いつかない。
よかった、クラスメイトは全員教室の外にいる。こんなスプラッタホラーな会話、思春期の生徒に聞かせられない。
想像力豊かな子が聞いたらトラウマになるレベルだ。
「だって胡桃ちゃんのこと好きだから。嫌でしょ、焼かれて骨だけになって墓の下なんて。どうせ骨だけにするなら、それ以外のところ僕にくれてもいいじゃない?」
待て待て、よくわからない倫理観の間に何かすごいこと言われた気がする。
「え? 好きなの?」
「うん、好きだけど?」
慧はきょとんとした顔でこちらを見ている。
可愛いな!!!
「だってお前、前世の恋人探してるんだろ。その恋人、俺じゃないんだろ」
「探してるよ。うん、恋人見つかってないのは事実。でも胡桃ちゃんのこと好きなのもほんとだよ」
慧の言葉に俺は混乱してきた。
「前世の恋人じゃないのに?」
いや、前世の恋人ですけどね!?
慧は俺のこと前世の恋人だって気付いてないからさ。
「だって、胡桃ちゃんのことは好きっていうより、一緒にいて安心する感じなんだ。きっと前世では家族だったのかもね。それか、親友とか。だから今世でもすごく好きなのかも」
「おい、何言ってんだお前」
嬉々として話す慧に、俺はツッコミをいれた。
内容がどんどん恥ずかしくなってきたぞ。
それって最早告白じゃないのか。まさか、俺たち両想い?
権三郎の言うように押し倒したらワンチャンありなのか?
「何となく、胡桃ちゃんと高校に入る前から一緒にいた感じするんだ。あ、ごめんね。そんなこと言われてもわからないよね。忘れて!」
本人も恥ずかしいことを言っていると気づいたのか、突然慌てだした。
俺の顔の前で手を振ってるが、そんなことで記憶は消えないぞ。
「いや、忘れないけどさ……」
前世から好きだった子にこんな嬉しいことを言われて忘れるわけがない。
さっきまでの「死んだら食べる」発言は前世が坊主ジョークということにしてスルー確定である。
「何で!? 胡桃ちゃんの意地悪!」
ほんの数秒前まで照れて慌てていたのが、今度は怒りだした。
忙しいな。
「そんなインパクトのあること言われたら、忘れられないだろ。普通は」
今までの一連の会話は、俺の脳内慧メモリーの中に永久保存しておく。
「前世で恋人だった子はね、胡桃ちゃんみたいに髪の毛つやつやでお人形さんみたいにきれいで、それで僕のことよくわかってくれてて、たまに叱ってくれて、いつも優しくしてくれてた! 意地悪じゃなかった!」
褒めてるのかけなしてるのかわからない文句を言われた。
待て待て、そこまで前世の恋人の解像度が高いのに、何でわからないかな?
「くるるんだね」
「胡桃だな」
いつの間にか教室に入って来ていたバカップルが呆れたようにつぶやくが、慧には届いていない。
そのまま「胡桃ちゃんのバカ!」とプンスコしながら教室の隅にある自分の席へと戻ってしまった。
「いや、お前そこまで思い出してて何でわからねぇんだよ!!!」
と叫ぼうとしたところで、焦れたようなクラスメイトの声が聞こえてきた。
「胡桃~、チャイム鳴ったし教室入って良い?」
「お、おう……」
その後、さっきのことを慧に問いただそうとしたが、奴はすべて忘れていた。
「何の話だっけ?」
だそうだ。
マジかよ……。
俺の今世チャレンジは前途多難である。
学校から少し離れたカラオケボックスは、権三郎と星空のお決まりのデート場所だ。
今日も今日とてカラオケに来ている。
権三郎は歌うことが好きらしい。星空は一緒にいられればどこでもいいが、気持ちよさそうに歌う恋人の姿が好きだった。
それに、この場所なら人目を気にせずに会話ができる。
今度は胡桃と慧を誘ってもいいかもしれない。
「あいつらは今世でも前途多難だな」
権三郎が端末を弄りながら話しかけてきた。
今日は慧が自殺騒動を起こしていた。今年に入って何度目だろう。
高校入学前の慧を知っている人によると、過去はそんなことなかったらしい。
どうやら高校生になってから情緒不安定になっているようだ。
「くるるんはアホだけど、けいちゃんも愛が重たいからなぁ」
慧の精神が落ち着かない原因はひとつしかないだろう。
星空は胡桃と慧の最期を知っている。
慧が前世でやらかしたのが原因で、今世になってこじれているとしか思えなかった。
「そういえば、お前が死んだのは蓬翠の後だったか。この中では一番長生きだな。何歳まで生きたんだよ」
権三郎は選曲が終わったらしく、マイクを構えていた。
「殿が長生きしろって言うから、頑張って生きたの~。まぁ蓬翠さまもすぐに逝っちゃったけど。うーん……殿の玄孫は見た記憶があるから……90だったかなぁ」
「あの時代で90歳って伝説級だぞ!?」
驚く彼氏をよそに、星空は先程の慧の言葉を思い出していた。
「ほんと、今世でも何も変わってないんだから」
その小さな声は流れてきた音楽に消され、誰に聞こえることもなかった。
あまり上手とは言えない権三郎の歌声を聞き流しながら、星空は前世の記憶に思いを馳せる。
それは遠い遠い昔の話。
とある武家の男が死んだ。
まだ若いというのに病であっけなくこの世を去った。
男に妻子はおらず、両親は既に他界、兄弟や親戚とは跡目争いで諍いがあってから疎遠となっていた。
結局、親しかった瑠璃若が埋葬の手はずを整えることとなった。
共に埋めてやろうと遺品を用意し、山奥にある瑞蓬寺を訪ねることにした。
この寺は故人である桃春とは縁が深い。
この寺の僧侶である蓬翠と桃春は恋仲だったのだ。
二人は隠していたようだが、瑠璃若は気づいていた。他にも気づいていた者はいただろう。
美貌の僧侶と小姓上がりの恋なんて、別に珍しい話でも何でもない。
敷地内を探してみると、蓬翠はお堂で物思いに耽っている様子だった。
桃春のことでも思い出しているのだろうか。
光の当たらないお堂の薄暗さが、今の蓬翠の心情を表しているようだ。
どこか痛ましさを感じる後ろ姿に声をかける。
「蓬翠さま」
「瑠璃若殿ですか」
声をかけると落ち着いた声が返ってきた。
泣いていたわけではなさそうだ。
「ええ、お勤めの最中でしたら出直しますが」
「いいえ。ただ考え事をしていただけです」
蓬翠はこちらを振り向くこともなく、静かに語り出した。
「瑠璃若殿。あなたもかつて愛する人と死に別れた。どうやってその苦しみを乗り越えたのでしょうか」
やはり桃春のことを考えていたのか、と瑠璃若は目の前の僧侶を憐れに思った。
己自身、愛する主を亡くして数年が経った。
寂しくないと言えば嘘になる。会えるものなら幽霊でも良いから会いたいくらいだ。
でも、そんなことはできないのだと悟った。
「本当は殿と一緒に死にたかったですけどね。主の命に背くことはできませんから。主従は三世の契りなので、来世に期待です」
そう思えるようになるまで、どれくらいの時間が必要だったか。
蓬翠も愛しい男の思い出を過去に変えるまで、長く苦しい時間を過ごすのだろう。
「あなたは強い。眩しいほどです。でも、私は耐えられません。いっそ死んでしまおうかとも考えているのです。こんなに胸が苦しくて、息ができないほど。もう今生では悟りを開けそうにありません」
声は淡々としているが、内容はつらい胸のうちの告白だ。
その気持ちはわかる。
自分も同じ経験をしているのだ。
だからこそ、どこか達観することが必要なのだと理解している。
「人間そんなもんですよ。それだけ好きだったってことでしょう? 縁が強ければ来世も一緒に生きられますよ。だから、来世で忘れないように記憶を魂に刻んでから死にましょう。今死んだら、中途半端にしか思い出せませんよ。それでなくても蓬翠さまは忘れっぽいんだから」
瑠璃若は努めて明るく答えた。
「ふふ、本当ですね。来世でもあの子に叱られてしまいそうです」
くるりとこちらを向いた蓬翠は、思ったよりも元気そうな顔をしていた。
だが、その口元に赤いものが付いていた。
「蓬翠さま、血が」
瑠璃若は蓬翠が何か病を患っているのではないかと心配になった。
亡き友の姿を思い出す。
肺の病は血を吐く。そんなことが頭に浮かんだ。
元々青白い顔をしていた蓬翠だが、桃春の訃報を聞いてからの覇気の無さは通常の比ではない。
今も表情は明るいが、肌は死人のように白い。
少しばかり茶色くなった血がやけに目につく。
病は気からとも言うし、弱った心が体まで蝕んでしまったのか。
「ああ、これは私の血ではないのです。どうか心配なさらないでください」
「は?」
では、口元の赤は何なのだろう。
女が使う紅とも違う。
「お見苦しいものをお見せしました。どうも食べ方がわからず、獣のように噛みつくしかなくて……身だしなみには気を遣っているつもりでしたが、拭き忘れていたようです。申し訳ない」
何の話をしているのだ。
瑠璃若の頭は混乱していた。
僧侶が血のつくような肉や魚など口にするわけがない。
しかも食べ方が分からないとは一体どういうことだ。
まさか。
嫌な汗が瑠璃若の背中をつたった。
「蓬翠さま、桃春の、遺体は」
口がかさついてうまく喋ることができない。
やっとの思いで出した声は、いつもの自分の声ではないような弱々しいものだった。
そんな瑠璃若の様子を見て蓬翠がにっこりと微笑んだ。
慈愛の権化のような優しい表情だ。
いつもなら安心するはずの表情だが、今日はどうしようもなく怖い。
「そんな心配なさらずとも、式は滞りなく行いますよ」
「最後に友の顔を」
震える声で懇願するが、返ってきたのは無情な一言だった。
「……もう、埋めてしまいました」
そう言って蓬翠は口元を拭った。
仏像のような穏やかな表情は晴れやかにすら見える。
瑠璃若はあまりの恐怖に、しばらくその場を動けなかった。
亡骸すらない友を弔ってくれているのだろうか。
近くの部屋で誰かが読経している声が聞こえた。
《了》
゜。゜。゜。゜。゜。゜。゜。゜。゜。゜。゜。
イメージは上田秋成の『雨月物語』の1作、「青頭巾」から。
かし子は「仏教っぽい話にしたかった」などと供述しており……。
蓬翠は死体食べてお腹壊して死んだんだろうなぁと思ってるけど、慧がしょっちゅう死のうとしてることを考えると、自害しちゃったのかもしれない。
今回、一番大変だったのは名前を考えることです。
お寺とか、うっかりしていると既存の名前になっちゃうのでね!
名前だけで手いっぱいで、名字まで考えられませんでした。
この話だけのキャラなのでそこまで深く考えてませんが、ちょっとだけキャラの説明。
胡桃(前世では桃春)
ツッコミ要員なので口調は信夫っぽいけど、見た目は違う。
陰キャだけど周囲からは愛されている。
でも慧が自殺騒動を起こした時くらいしか頼りにされない。
中性的な美男子。でも表情とか雰囲気が暗いので美形認定されてない。
きっと前髪とかも長くて重い。
名前は先に「くるるん」っていうあだ名が思いついて、そこから考えた。
前世の名前は「胡桃」から「桃」を取った。「桃華」とかも考えたけど、中国風に「桃春」にした。
杜子春みたいな。
ものすごく申し訳ないけど、前世はどんな子だったのか全く考えてない。
慧(前世では蓬翠)
真面目だけど天然。
わりとよく死のうとする。
前世もそんな感じ。
可愛い系のワンコっぽい見た目。
でも、なよなよしてるとか中性的ではなくて、ちゃんと男の子。
眉毛とかも太い。女の子に間違われることはない。
名前は先に前世が決まっていたので、そこから「翠」にしようと思ったけど、やめた。
で、「彗星」の「彗」に仮決めしてたんだけど、何か途中で間違えてずっと「慧」で小説書いてたので、そのまま「慧」に決まった。
適当でごめんね。
星空(前世では瑠璃若)
ギャル。
アホなように見えて打算的だし周囲をよく見てるタイプ。
愛嬌があって社交的、ついでに有能なので、わりとどんな世界でも出世する。
今ではあまり見かけない、髪の毛バリバリに染めて、爪とかスマホとか持ち物をラメとかシールでデコってるタイプのギャル。
名前は「きらら」「きらり」とかそんな名前にしようと思って、「キラキラネーム 女の子 きらら」で検索して出てきた漢字を当てはめた。
前世は武家というよりも貴族の家柄のイメージ。
そんな家柄の子が武家でお世話になるものなのかはわからないけど……。
「瑠璃若」は幼名だけど、殿が気に入ってる名前だから字(あざな)として残している。元服後の名前は「綾常」。
藤原綾常瑠璃若、みたいな。
藤原じゃないけど。
権三郎(前世では鷹継)
チャラ男というか最早不良。ガラが悪い。
身長も態度も声もデカい。
ガサツだけど成績も面倒見も良い。カリスマ性がある。
これは前世で殿やってた影響ということにしてる。
名前は適当。
「権三郎」はおじいちゃんっぽい名前で考えた。
「鷹継」は戦国武将っぽいかな、と思って決めた。
そしたらさ~、文フリの新刊に出て来る「崇継」と読み方といい漢字といい丸被りしてたんだよね~。
やべっ!
でも漢字一文字違うからいいか!
設定はそんな感じです!
あと、今回は皆の信夫が主人公じゃないので、タイトルつけてみました!
信夫が登場する話のタイトルは、なみさんが考えてくれた「俺たちの信夫」で行こうと思います。永遠に。
他の方のうてなっぷる、楽しみにしております✨
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