ジャンル殺人事件の目撃者~あなたが最後に手をくだすのです
雷が鳴る雨の中、オレは車を走らせていた。
地方の古びた洋館に到着する頃には、すっかり日も暮れていた。
蔦が絡まるゴシック建築の館は、不気味な空気に包まれている。それは決して気のせいじゃない。5年前、この洋館で起こった殺人事件は、まだ未解決のままだからだ。そして事件当日、オレもこの洋館に滞在していたんだ。
執事に案内された部屋で一息ついていると、インターホンが鳴った。呼び出された広間に行くと、そこには5人の男女が所在なさげに集まっている。オレと同じように招待状を受け取ったのだろう。探偵のアガサは、オレの姿を確認すると、少し芝居がかった様子で皆に話し始めた。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。あらためて、探偵のアガサです」
髭を蓄えた紳士が、不愉快そうに口を開いた。
「いったい何だというんだね。呼び出される方は迷惑なんだよ」
「すみません。未解決の密室殺人事件を皆さんと解決しようと思いまして。窓もドアも内側から鍵がかかっている。秘密の通路も、何かが通る隙間さえもない、5年前の完全密室殺人の謎を…です」
「警察にも解けなかった謎が、きみには解けるというのかね?」
「消去法で考えれば正解に辿りつきます。この密室に自由に出入りする方法が、一つだけあるんです」
一同は息を飲んで、アガサを見つめた。
「犯人はタイムマシンを使ったんです。タイムマシンなら、未来のこの部屋から過去に飛んで殺人を犯し、また逃げることが可能です」
「ちょっと待ってくれ。これはミステリーなんだろ? タイムマシンが出てくるなんて反則だ。それともこれはSFの話なのかね?」
「そうとも言えます。ただ謎を解いたらこうなっただけで...うぐっ!」
アガサは奇妙な叫びをあげ、血飛沫と共に頭から真っ二つになった。後ろの壁から突然、マスクを被った大男が斧を振り落としたのだ。大男は、狂気に満ちた目で、斧についた血を振った。
紳士が叫んだ。
「みんな逃げろー! これはSFなんかじゃない。ホラーだったんだ」
皆が我さきへとドアへと駆けだした。逃げ遅れた最後尾の女性は、後ろから旋回してきた斧に首を飛ばされた。コロコロと転がった首と、一瞬、視線が合ったが、その目玉はゆっくりと垂れ下がっていった。
逃げなきゃ殺される。無我夢中でキッチンを走り抜けると、何も知らない老婆がダイニングテーブルに座っていた。振り返ると、マスクの大男が老婆の後ろに立っていた。殺られる!!
しかし、大男は老婆の姿など目に入らない様子だ。老婆は何事もないかのように、カメラ目線で喋り出した。
「むかーし、むかしのことじゃった。ある洋館で起こった悲劇の話をしよう。これは、狂った大男が斧を持って暴れた話じゃ」
なんだ? これは昔話だったのか?と、戸惑った瞬間に目が覚めた。夢だったんだ。これが夢オチというやつなんだな。
オレが目を覚ました場所は、白い壁に囲まれた病室だった。最初に天井が目に入った。ここはどこだろうと思う間もなく、うるんだ瞳の美しい女性がベッドのオレに抱き着いてきた。彼女の頬を涙が伝っている。
「よかった。ずっと心配してたんだからね。あなたがいない世界なんて、私には意味がないの。愛が全てなのよ。愛だけが不可能を可能にするの!」
なんだこの陳腐なセリフは? こんな都合のいい展開があるはずがない。ナンセンスだ。そうか、これはナンセンスだ。この物語に意味なんてなかったんだ。
いや、待て。そんなはずがない。それじゃ人生と同じじゃないか! 意味を、意味をくれ! 適当に物語を投げ出すのはやめてくれ!
ベッドから起きようともがいたオレは、病室にいた和尚に一喝された。
「落ち着くのじゃ! 良いか、人生の意味は、己自身が見つけるものじゃ」
空気を震わすような、よく通る大きな声だった。「己自身を見つける」とは…そうかスピリチュアルだったんだな。精神の旅をしているのか! でも、どうしてここに和尚がいるんだ? そもそもこの女性は誰なんだ?
「教えてくれ、きみはいったい誰なんだ?」
「そんなことより、あなた。戻ってきてくれて本当によかった。さぁ、これを食べて元気を出して。今夜はカニ鍋よ!」
彼女は満面の笑みを浮かべて、カニ鍋セットを差し出した。
これはアフィリエイトだったんだ。
◇「今夜はカニ鍋よ!」彼女が満面の笑みで差し出したカニはこちらから!

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