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車検なんですけど、20年前のヴィッツなんですけど、すみませーん

車検の時期が近づいてきて憂鬱なのです。

だって、20年近く前のヴィッツに乗っている。

車検、通るのかな?

そもそもクルマに興味がないし、走ればいいと思ってる。

できれば、30センチだって運転したくないタイプだ。

車検の見積もりを取るために、ディーラーに連絡するところからして、すでに気が重いのです。

自慢じゃないけど、こちとらイイ歳こいて人見知りだからね。

もうね、電話する時点でビビってる。

さすがに仕事の時には割り切れるけど、普段は、外食で電話予約することさえ、深呼吸してから、踏ん切って電話をかける感じ。

ディーラーへの電話は、さらにハードルが高いんだよ。

でも、これは営業の方から「新車はいかがですか?」と、売り込まれるのがイヤだとかってことじゃないんです。そもそも、そんな声をかけられることはないし。

ちなみに、これには理由がある。

10年前ぐらいのこと、車検の見積を取るためにディーラーへと赴いた。

そこで担当の方から新車への買い替えを薦められたわけ。もちろん、それが仕事がなんだから当たり前のこと。

奥さんにも「いい加減に買い替えなよ」とは何度も言われてたけど、その必要性を感じてなかったんだよね。だって走ればいいんだもの。

オレはクルマを預けて、相談コーナーのテーブルでコーヒーを飲みながら、なんとなくショールームに展示されたピカピカの新車を眺めていた。すると、その視線に気づいた営業担当がやってきた。

「そろそろ、おクルマを買い替えるご予定などはありませんか? 」

「いやぁ、自分も買い換えたいとは思ってるんですけどね」

「本当ですか! どんな、おクルマをお探しですか?」

それがダメなんですよ。私は買いたいと思ってるんですよ、ホントに。でも、奥さんがどうしても許してくれないんです

「そうなんですか」

そうなんですよ。『ダメ!』の一点ばりで。つまりね、私がクルマを交換しようと思ったら、まずは反対してる奥さんを交換しなきゃいけない、っていう順番になるんです」

「…」

「協力してもらえます?」

「えっ? 奥さんのことですか?」

「はい」

「それはちょっと…」

こんな会話を交わしてからは、新車の話が出ることはなくなった。営業担当が変わっても、その伝統は律儀に守られている。

だが、新車の話がなくても、気分的なハードルは高いままだ。

だって、毎回、クルマを持ち込むたびにギョっとされる。

安全運転は心掛けてるけど、細かいことは気にしないから、オレのヴィッツは傷だらけだし、あちこち凹んでいる。

おまけに、洗車は、雨でまかなっているから、いつもくすんでいる。

綺麗に清掃されたディーラーの営業所に、場違いなクルマが入り込む。目立たない隅っこに、こっそり止めたいけど、明るい場所に誘導されてしまう。「こっち見ないでー」という気持ち。

クルマを止めると、待ち構えていた営業担当者が、まずは点検前に傷の確認をするために駆け寄ってくる。

でも、あまりの傷の多さを目にして立ち尽くすから、オレはすかさず声をかける。

「確認しなくて大丈夫ですよ。傷が増えたとしても気づかないし、気にしないから」

営業担当者の安堵した表情。

傷だらけなのはボディだけじゃない。ホイールキャップだって傷だらけだ。

いつぞやは走っている最中に、縁石に擦ってしまい、ホイールキャップが外れて、気づいたら、車と並走してコロコロと走っていたから仰天した。

車を預けると、やがて、申し訳なさそうな顔で、整備担当者がやってきて、こんな会話が交わされる。

「あの、左の前輪のホイールキャップなんですけど、かなりヒビが入っておりまして。一度外してしまうと、付けられるという保証ができません。外すことはできるんですが…

「大丈夫ですよ。つけるのは自分でやりますから」

整備担当者の安堵した表情。

DVD式のカーナビは、新車で購入してすぐにDVDをなくしたから、全く機能していない。ついでにデジタル放送にも対応していないから、テレビもつかない。

そんな風だから、履き古したスニーカーを履くような感覚で走らせている。

駐車中に、「クルマに傷をつけられたらどうしよう」なんて心配する必要はない。むしろ、あとから隣に停める車の方が、勝手に心配して、できるだけ距離を取って停めてる。盗難を心配したことだってない。

運転以外のことから、気持ちを自由にしてくれるクルマ。

出先から帰れば、次の出番までおとなしく駐車場で眠りにつく。まるでベッドの脇で老犬が眠るみたいに。

部品交換が必要になっても、もう取り寄せられるかもわからない。

いつまで一緒にいられるかな。

車検、通るといいな。

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ケイメイ 最後までお読みいただきありがとうございました。チップしちゃおうかなと思ったら、迷わなくていいんです。私がそっと背中を押しますからね!