一休さんと屏風のトラのお話~一休さんがトンチを捨てた日(朗読付き)
むかしむかし、一休さんと言う、トンチで評判の小僧さんがいました。一休さんのトンチの評判を聞いて、お殿様がお城に一休さんを招き入れました。
「さっそくじゃが、そこにある屏風のトラをしばりあげてくれぬか。夜中に屏風から抜け出して悪い事ばかりするので、ほとほと困っておったのじゃ」
もちろん、屏風に描かれた絵のトラが出てくるなんて、うそに決まっています。しかし有名な絵描きが描いたのでしょうか、屏風に描かれたトラはキバをむいて、今にも襲いかかってきそうでした。
「本当に、すごいトラですね。それでは、しばりあげてごらんにいれます。縄を、用意してください」
「おおっ、やってくれるか」
「はい。もちろんですとも」
一休さんはそう言うと、ねじりはちまきをして腕まくりをしました。そして家来が持ってきた縄を受け取ると、殿さまに頼みました。
「それでは、トラを屏風から追い出してください。すぐに、しばってごらんにいれます」
それを聞いた殿さまは、思わず言いました。
「なにを言うのじゃ、一休。追い出して、もしもお前が喰われてしまったらなんとする。よし、ワシが縛り上げるから、お前が追い出しなさい」
「えっ?」
お殿様はさっそく立ち上がると、屏風の前で構えました。
「さぁ、早く。トラを追い出すのじゃ!」
「いやいや、お殿様に何かあっては一大事でございます。わたしが縛り上げますので!」
「子供は国の宝じゃぞ! お前が追い出しなさい」
「あの、実は私は子供ではありませぬ。発育の遅れた大人なのです」
「好きな食べ物は?」
「唐揚げとハンバーグ」
「子供ではないか! 気遣いはいらぬ。さぁ追い出しなさい。早く!」
「あの、今日は、ちょっと調子が悪くて」
「ワシなんぞは毎日調子が悪いぞ。さぁ、追い出すのだ!」
「そうだ、お殿様! トラを追い出す必要はありません」
「んっ? なぜじゃ?」
「屏風ごと縄で縛ればよいのです。そうすればトラは悪さをできませぬ」
「では、なんで最初にトラを追い出せと言ったのじゃ? お前が言ったんじゃぞ。トラを追い出せと」
「はて? 私が? 追い出せと?」
「ゴマかすのか!! 一休! トンチはどうしたのじゃ」
「お殿様、トンチなんぞ、うまくできた『言い訳』にすぎませぬ。それよりも、このトラは、よく見ると発育がいい猫ではありませぬか。放っておきましょう」
「猫でもトラでもいいから早く追い出すのじゃ! お前は口先だけか。ほれ、一休、追い出せ。さぁ、早く!!! どうした!? ほらほらっ!」
「うわーーー」
とうとう一休さんは、ビリビリと屏風を破ってしまいました。
「あっ!破った」
「トラは退治しました。これで暴れることはございませぬ」
「あの、トンチは?」
「ご安心ください。ついでに破り捨てました」
-完-
【朗読版】
今回は「読み聞かせ」のための朗読版を作ってみました。さぁ、みんなで一休さんと知恵比べをしましょう!
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