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国道1号線の緊急事態~日常が暴走する|太陽が眩しかったせいさ

太陽が眩しい日だった。

オレはハンドルを握って、藤沢近くの国道一号線を走っていた。
あちこちが凹んだ20年モノのヴィッツ。
助手席にはホームセンターで買った荷物。

そして、バックシートには、珍しくついてきた中学生の息子。
年頃の息子との貴重な会話の時間でもある。
渋滞はないけれど、空いているほどでもなく、車は順調に流れている。

だが、家を出た時は、まだ薄ら寒くてトレーナーを着ていたのに、今は容赦なく射し込む太陽光のせいで、車の中は急激に気温が上がっていた。

暑い。

もはやトレーナーを着こんでいるような温度じゃない。
タイミングよく信号待ちになったところで、素早くシートベルトを外して、トレーナーを脱いだ…

いや、脱ごうとしたが、なにかが引っかかってうまく脱げない。

トレーナーを頭まで引き上げたところでひっかかっている。
どこが引っかかってるんだよ! 前が見えない!

「信号が変わったよ!」

後ろの席から息子の声がかかった。

焦って、力任せにトレーナーを引っ張ったら、インナーの長袖Tシャツまでが一緒に脱げた。

でも、トレーナーが両手首あたりで腕時計に引っかかってる。
絡まってて、そこから動かない。

上半身が丸裸だ!


息子が叫ぶ

「父さん、ハダカだよ!!!」


ハダカになっちゃったんだよ!!

道路の真ん中だ。
後続車も並んでいる。
停まっているわけにはいかない。

慌ててアクセルを踏みこんだ。

両手首で引っかかってるトレーナーは、左右が絡んで手が動かない。

これじゃ、まるで手錠だ!

ハダカで手錠をした男がハンドルを握ってる。

外れたままのシートベルトで、ピーピーと警告音が響いてる。

「あぶないよ!!」

わかってます! わかってるってば!!! 

こんな状況で事故を起こすワケにはいかない!

対向車線をすれ違う車の運転手は、ギョっとした顔でこっちをみる。

次々と何台も見てくる。見るな!! 

お前ら! ヨソ見してると事故るぞ!!


路肩に停めたいけど、停められる場所がない。
こんな時に限って、青信号ばかりが続く。

しつこく鳴り響く、シートベルトの警告音。

落ち着け、落ち着け、事故るわけにはいかない。
近所への買い物が、命がけの状況になってる。

あっ、あそこだ!

あそこなら止められる!!!

車寄せの幅がある!!

だってバス停だもの!!


人、並んでる!!!


でも、仕方がない。行くしかない!

緊急着陸するパイロットは、こんな気持ちのはずだ。
オレは車をバス停に滑り込ませた。

バス待ちの乗客たちが、ビックリした目で車内を見ている。

バスを待ってたら、上半身ハダカの男が運転するボロボロのヴィッツ来た。バックシートには人質みたいな男の子がいる。

「父さん、恥ずかしいよ!!」

オレだよ、恥ずかしいのは!


バス待ち客の視線を浴びて、焦りながらも、腕に絡んでいるトレーナーとインナーTシャツを外した。すぐにTシャツだけを着なおして、シートベルトを締めた。

バックミラーをちらっと見ると、真後ろにバスが近づいてくる。グングンと迫ってくる!

バスの運転手、服、着てる!

バス待ち客に、生着替えを披露したばかりのオレは、慌ててアクセルを踏んだ。

しばらく走っても、沈黙のままの息子。
いいんだ。お前の気持ちはよくわかる。

そうさ。すべては太陽のせいさ。


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ケイメイ 最後までお読みいただきありがとうございました。チップしちゃおうかなと思ったら、迷わなくていいんです。私がそっと背中を押しますからね!