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本当にあった奇妙な話|事務職の⾼過ぎたハードル

SFドラマ『ウエストワールド』では、人間と見分けのつかないロボットが、人間を支配する未来の恐怖が描かれていました。しかし、それは本当にドラマの中だけのことでしょうか?
今回の主⼈公の名前は、新垣さん(アラガキさん)。彼⼥は社内で異動したばかりの20代の⼥性です。しかし、彼⼥はそこで、想像もしていなかった体験をするのです。


都内に勤める新垣さんは、人事異動で別の部署に配属されました。

そこは、彼⼥の他には2⼈しかいない⼩さな部署。
1⼈はその部署を仕切っている年輩⼥性の朝倉(あさくら)さん、そしてもう1⼈はいつもボンヤリとしているオジサンです。

新垣さんが、朝倉さんの細かさに気づいたのは、配属されたその⽇のことでした。

給湯室の棚に⾃分のコップを洗ってしまっておいたら、さっそく朝倉さんに叱られたのです。

ちょっと︕ コップの取っ⼿の⾓度は、ちゃんと揃えて置いてくれないと気持ち悪いでしょ︕

給湯室のコップの置き⽅って、そこまで気にしなければいけないものなんだろうか︖

新垣さんは少し疑問に思ったけれど、朝倉さんの剣幕が怖かったので、素直に置き直しました。

彼女は、それからも、机に広げたノートや鉛筆の⾓度など、様々なモノの⾓度で𠮟られることになりました。

しかし、「慣れ」とは恐ろしいもので、似たような経験を繰り返しているうちに、少々のことでは驚かなくなってきたと⾔います。

そんなある⽇のこと。
新垣さんは、総務部に文房具の申請書を提出することになりました。

内容的には何のことはない申請書ですが、電子化はされておらず、未だに定型⽤紙の記⼊欄に⼿書きで必要事項を記⼊して、上司である朝倉さんの判⼦をもらわなくてはなりません。

彼女は、さっそく申請書に記入して、朝倉さんに提出しました。
しかし、その書類をみた朝倉さんはスゴイ剣幕で、彼⼥を怒り出したのです。

あなたね。なんなの、これは︕ こんな書き⽅で通るわけがないでしょ︕ すぐに書き直して︕︕

新垣さんは、朝倉さんの凄まじい剣幕に驚きましたが、いったい「何を怒られているのか」⾒当がつきませんでした。

どんなに書類を⾒直しても誤字や脱字はないし、判⼦だって⾓度に注意して押してあります。

仕⽅がないので意を決して、朝倉さんに何が悪かったのか質問しました。

あの…。わたし、何がいけなかったんでしょうか︖

朝倉さんは、「常識」を教えてくれました。

そんなこともわからないの︕ この申請書のタイトルの⽂字はゴシック体でしょ。だからゴシック体で書かなきゃいけないじゃない︕︕ そんなの常識でしょ︕

あの…。⼿書きで書くんでしょうか︖

あなた︕ ゴシック体も書けないで社会⼈をやってるの︕︕

⼿書きでゴシック体を書くなんて聞いたことがありませんでした。
でも、朝倉さんは本気でそう思っています。

新垣さんはパソコンを⽴ち上げて、画⾯にゴシック体で⽂字を打ち、それを⾒ながら⼿書きで⽂字を書きました。

ようやく書き終えて、再び朝倉さんに提出します。

こんなのはゴシック体とは⾔えません︕ 社会⼈なんだからそれぐらいキチンと書きなさい︕ やり直し︕︕

「…」

⾃席に戻って、再び「手書きゴシック体」を書く新垣さん。
彼⼥が、ようやく書類を認められたのは1時間も後のことでした。

新垣さんは、ついにゴシック体をマスターすることができたのです。

しかし、彼⼥は今、とても悩んでいます。

だって来週に提出することになっている申請書のタイトルは、明朝体で印刷されていたのです。


手書きでゴシック体を書く。それは「デジタルのアナログ化」という、想像さえしなかった未来への進化を辿る第一歩なのでしょうか。

おそらく朝倉さんは、やがて人類の支配者となる機械⼈間のひとりで、密かに我々の能力を試しているのでしょう。そして、今、新垣さんは転職を考えはじめているのです。

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ケイメイ 最後までお読みいただきありがとうございました。チップしちゃおうかなと思ったら、迷わなくていいんです。私がそっと背中を押しますからね!

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