元気は、足すものではなく、戻ってくるもの。
元気は、足すものではなく、戻ってくるもの。
はじめに
「元気になるには、何をすればいいですか。」
そんな質問を受けることがあります。
何を食べればいいのか。
どんな運動をすればいいのか。
どんなサプリを飲めばいいのか。
どんな治療をすればいいのか。
私たちはつい、
「元気になるために何かを足そう」
と考えます。
でも、
身体を診ていると、
少し違うように感じることがあります。
元気は、
新しく作るものではなく、
本来持っているものが、
少しずつ戻ってくるものなのかもしれません。
今日は、
そんな「元気の戻り方」について、
考えてみたいと思います。
元気がない時、身体に何かを足したくなる
疲れている。
眠れない。
食欲がない。
朝起きるのがつらい。
そんな時、
私たちは何かを足そうとします。
栄養を足す。
運動を足す。
予定を足す。
勉強を足す。
もっと頑張る。
「これをすれば元気になるかもしれない。」
そう考えること自体は、
悪いことではありません。
でも、
身体にすでに余裕がない時、
そこへさらに何かを足してしまうと、
身体はますます忙しくなってしまいます。
元気になるために、
頑張る。
その頑張りが、
さらに元気を使う。
そんなこともあります。
身体には、「足す」より「減らす」ことが必要な時がある
身体が疲れている時は、
何かをすることよりも、
何もしないこと。
早く寝ること。
予定を一つ減らすこと。
考えることをやめる時間を作ること。
ゆっくり食べること。
深く息を吐くこと。
そんなことの方が、
身体にとって必要な場合があります。
元気がないから、
何かをしなければいけない。
そうではなく、
元気がないからこそ、
今使っている力を少し減らしてあげる。
それも、
身体を整える一つの方法なのだと思います。
元気は、「空いたところ」に戻ってくる
部屋に物がいっぱいあると、
新しいものを置く場所がありません。
身体も、
少し似ているのかもしれません。
予定でいっぱい。
頭の中もいっぱい。
身体も緊張している。
食事もゆっくりできない。
眠る時間も足りない。
そんな状態では、
身体が元気を取り戻すための余白がありません。
だから私は、
元気を取り戻す時には、
「何を足そう。」
だけではなく、
「何を減らせるだろう。」
と考えることも大切だと思っています。
一つ予定を減らす。
一つ考え事を手放す。
一つ我慢をやめる。
少し早く寝る。
その小さな余白に、
身体が戻ってくることがあります。
食事も、「何を食べるか」の前に
妊活では、
食事についてたくさんの情報があります。
タンパク質。
鉄。
葉酸。
ビタミン。
良い食材。
良い食べ方。
もちろん、
どれも大切です。
でも、
身体を診ていると、
その前に見たいことがあります。
ちゃんと食べられているか。
食べる量が足りているか。
食べたものを受け止められているか。
食事そのものが、
身体にとって負担になっていないか。
どれだけ良いものを選んでも、
そもそも十分に食べられていなければ、
身体に届く材料も限られます。
だから時には、
「何を食べるか」
より先に、
「まずちゃんと食べる。」
ことが大切なこともあります。
身体に必要なものを届ける。
そのための最初の一歩は、
意外とシンプルなのかもしれません。
食べられることは、身体の力でもある
食欲がある。
お腹が空く。
食べると美味しい。
食べた後に苦しくならない。
こうしたことは、
当たり前に感じるかもしれません。
でも、
身体に余力が戻ってくると、
こうした感覚が少しずつ戻ってくることがあります。
朝、
自然にお腹が空く。
「今日は何を食べようかな。」
と思える。
ご飯を食べて、
「美味しい。」
と思える。
私は、
こういう変化を大切にしています。
それは単に、
食事ができるようになったというだけではありません。
身体が、
「食べても大丈夫。」
と感じられるようになってきたサインなのかもしれないからです。
眠ることも、「何かをすること」
妊活をしていると、
休んでいる時間に罪悪感を持つ人がいます。
「今日は何もできなかった。」
「もっと運動しないと。」
「もっと身体を整えないと。」
でも、
眠っている間にも、
身体は仕事をしています。
今日使った力を整理する。
傷ついた場所を修復する。
明日に向けて身体を整える。
だから、
眠ることは、
何もしないことではありません。
身体にとっては、
大切な仕事をしている時間です。
休むことも、
元気を取り戻すための行動です。
元気は、急に戻らない
昨日まで疲れていた人が、
今日突然、
完全に元気になる。
そんなことは、
あまりありません。
少し眠れるようになる。
朝起きるのが少し楽になる。
食欲が戻る。
疲れが翌日まで残らなくなる。
気持ちが少し軽くなる。
そして、
少し動けるようになる。
身体の変化は、
こうした小さなところから始まることがあります。
だから、
「まだ元気じゃない。」
と判断する前に、
「昨日より少し楽だったことは何だろう。」
と見てみてほしいと思います。
元気を測るものは、数字だけではない
妊活では、
数字を見る機会がたくさんあります。
AMH。
ホルモン値。
内膜の厚さ。
採卵数。
受精率。
胚のグレード。
妊娠判定。
数字は、
治療を考える上で大切な情報です。
でも、
身体の元気まで、
数字だけで測れるわけではありません。
朝起きられた。
食事が美味しかった。
よく眠れた。
少し笑えた。
前より疲れなくなった。
身体の力が抜けた。
そうした変化も、
身体が戻ってきている大切なサインです。
結果だけを見ていると、
見落としてしまうものがあります。
身体は、戻る力を持っている
私は、
身体には、
元に戻ろうとする力があると思っています。
もちろん、
すべてが自然に元に戻るわけではありません。
必要な治療が必要なこともあります。
医療の力を借りなければならないこともあります。
それでも、
身体には、
「少し楽になりたい。」
「少し眠りたい。」
「少し食べたい。」
「少し休みたい。」
という方向へ向かう力があります。
その力を邪魔しないこと。
そして、
その力が働ける場所を作ってあげること。
それも、
身体を整えるということなのだと思います。
臨床で感じる、「元気が戻ってきた瞬間」
施術をしていると、
身体が少しずつ変わっていく瞬間があります。
最初は、
とにかく疲れている。
話していても、
身体に力が入っている。
呼吸も浅い。
眠りも浅い。
食欲もない。
そんな状態だった人が、
「最近、朝起きるのが少し楽です。」
と話してくれる。
その次には、
「ご飯が美味しく感じます。」
そして、
「最近、前ほど疲れないんです。」
そんな言葉が出てくる。
私は、
こういう変化を見るのが好きです。
妊娠という結果の前に、
身体が少しずつ生きる力を取り戻している。
その過程には、
その人にしか分からない変化があります。
元気とは、
そういう小さな変化の積み重ねなのかもしれません。
元気になってから、未来へ向かえばいい
妊活では、
どうしても未来を急ぎます。
早く妊娠したい。
早く結果を出したい。
一周期でも早く。
その気持ちは、
当然だと思います。
だからこそ、
身体が疲れている時には、
「もっと頑張らなきゃ。」
ではなく、
「少し元気を取り戻そう。」
と考えてほしいと思います。
未来を諦めるためではありません。
未来へ向かうためです。
身体に余力が戻れば、
その力は、
また次の一歩に使うことができます。
最後に
元気は、
どこかから買ってくるものではありません。
誰かから与えてもらうものでもありません。
身体の中に、
もともとある力。
その力が、
疲れや緊張や我慢の中で、
少し見えにくくなっているだけなのかもしれません。
だから、
元気がない自分を責めなくていい。
何もできない自分を責めなくていい。
まず、
使っている力を少し休ませる。
食べる。
眠る。
呼吸する。
笑う。
何もしない。
一つ予定を減らす。
身体に、
戻ってくる場所を作ってあげる。
すると、
少しずつ、
「今日なら、少し動けそう。」
という瞬間がやってくる。
その小さな力こそ、
身体が戻ってきた証なのだと思います。
元気は、
足すものではなく、
戻ってくるもの。
そして、
その元気が戻ってきた時、
身体はまた、
未来へ向かう力を使い始めます。
焦らなくていい。
急いで元気にならなくていい。
今日、
少し休めたなら、それでいい。
今日、
ちゃんと食べられたなら、それでいい。
今日、
少し眠れたなら、それでいい。
身体は、
あなたが休んでいる間にも、
ずっと働いています。
そして、
あなたの中にある元気は、
なくなったのではなく、
ただ、
戻ってくるのを待っているのかもしれません。
