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#183 既婚男性はなぜあなたにアプローチするのか

職場の既婚男性が、やたら優しい。

二人きりの食事に誘われた。「妻とはうまくいってない」と打ち明けられた。

そして、あなたは考える。

「なんで、私なんだろう」

辛口ペンギンから、その答えを先に言う。残酷だが、知っておいた方がいい。

あなたが特別だから、ではない。

あなたが「安全」だからだ。

既婚男性のアプローチは、恋愛感情の結果である前に、リスク査定の結果である。彼はあなたを、魅力の順番で選んでいない。

騒がなそう。バレなさそう。家庭を壊しに来なさそう。

その査定に通った人から、順番に声がかかる。

つまり「選ばれた」のではない。審査に通っただけだ。この構造を、5つに分けて解剖する。

1 彼が独身男より魅力的に見えるのは、当たり前である

まず、多くの女性が引っかかる入口の話をする。

既婚男性は、確かに魅力的に見える。余裕がある。聞き上手だ。気遣いが自然で、距離の詰め方がうまい。同年代の独身男が子どもに見えるほどに。

種明かしをしよう。

彼は「彼女の作り方」ではなく、「女性との暮らし方」を10年練習してきた男だ。

女性が疲れている時に何を言えばいいか。どのタイミングで褒めればいいか。何を言うと地雷か。全部、家庭で訓練済みである。

つまり、あなたに向けられているあの優しさは、あなた用に開発されたものではない。

家庭で量産された、既製品だ。

彼の会話力の練習台は、妻である。あなたは今、他の女性との生活で磨かれた技術の、出力先になっている。

「こんなに分かってくれる人、初めて」——当然だ。独身男は練習中で、彼は経験者なのだから。魅力の差ではない。練習量の差である。

2 彼が求めているのは、人生の「変更」ではなく「追加」

次に、彼が何を求めているかだ。パターンはいくつかある。

男としてまだいけるかの確認。日常からの逃避。家庭の愚痴の避難所。刺激の補充。

だが全パターンに、共通点が一つある。

彼は、人生を変える気がない。人生に「追加」したいだけだ。

家、妻、子ども、社会的信用。彼の人生の本体は、そのまま維持される。あなたはその本体に影響を与えない範囲で、追加されるオプションである。

ハッとしてほしい。

彼はあなたと、未来を作りたいのではない。現在を延長したいだけだ。

未来を作る気のある男の行動は、まったく違う形をしている。それは最後に話す。

3 常套句の翻訳辞書

既婚男性の口説き文句は、驚くほど定型化されている。翻訳を置いておく。

「妻とはもう冷めてる。うまくいってない」 翻訳:この一言は、口説き文句の中で最も費用対効果が高い。あなたの罪悪感を下げ、彼を被害者にし、そして検証が不可能だからだ。あなたは彼の家庭を見たことがない。彼の妻に確認することもない。反証されない話は、いくらでも盛れる。

「離婚は考えてる。タイミングの問題」
翻訳:期限のない「考えてる」は、#121でも書いた通り、決断ではなく延期の言葉だ。考え続けたまま、定年を迎える。

「お前と先に出会ってたらな」
翻訳:過去形の仮定は、何も約束しない。未来の話を一切せずに、特別感だけを渡せる魔法の構文である。

「こんな気持ちになったのは久しぶりなんだ」
翻訳:事実かもしれない。だが「久しぶりの気持ち」と「人生を清算する覚悟」の間には、太平洋くらいの距離がある。

共通点に気づいただろうか。全部、検証不可能で、約束を含まない。

既婚男性の言葉は、内容ではなく構造で見ろ。約束の入っていない甘い言葉は、コストゼロの投資である。

4 彼は、あなたの魅力ではなく「隙間」に照準を合わせている

ここが一番、耳が痛い話だ。

思い出してほしい。彼が距離を詰めてきたのは、いつだったか。

失恋した後ではなかったか。仕事で自信を失っていた時期ではなかったか。周りが結婚していって、焦りが出ていた頃ではなかったか。

偶然ではない。

既婚男性は、満たされている女性を狙わない。手間がかかり、リスクが高いからだ。彼らが照準を合わせるのは、承認に飢えている時期の女性である。

弱っている時の「分かるよ」「頑張ってるね」は、通常の何倍も深く刺さる。彼はそれを知っている。妻で学んだからだ。

あなたに響いたあの言葉は、あなたが特別だから響いたのではない。

あなたの防御が下がっている時期に、撃たれたから響いたのだ。

5 彼が離婚しない、本当の理由

「いつか離婚するかも」に賭けている人へ、構造を一つ教える。

彼が浮気にアプローチできるのは、家庭が壊れているからではない。

逆だ。家庭が安定しているからである。

帰る場所がある。生活の土台がある。何かあっても戻れる。その安全網があるからこそ、外で冒険ができる。#118で書いた通り、家庭を失いたくないまま浮気する男は普通にいる。

つまり、彼の家庭の安定と、あなたへのアプローチは、対立していない。セットなのだ。

家庭が本当に壊れたら、彼は冒険どころではなくなる。あなたに割く余裕ごと消える。

「妻と別れたら、私のところに来てくれる」——順番が逆である。妻と別れる状況になった男は、たいてい、あなたのところにも来ない。

では、本気の男はどう動くのか

比較対象を置いておく。ごく稀に、本気で人生をやり直す既婚男もいる。その男の行動は、はっきり違う。

先に、清算する。

別居する。弁護士を入れる。離婚協議を進める。子どもとの関係を整理する。それを全部、あなたと何かが始まる前に、自分の問題として進める。

本気の男は、懸けるものを先に清算してから来る。

「離婚するから、先に関係を」の順番を提案してくる男は、清算する気がない。清算前のあなたとの関係は、彼にとって離婚の動機ではなく、離婚しなくて済む理由になるからだ。

外に癒やしがある限り、家庭の問題は放置できる。あなたは彼の離婚を早めていない。遅らせている。

女性側の最適解

  • 「なんで私に?」の答えを、価値の証明として受け取らない。リスク査定の通過通知として読む

  • 甘い言葉は内容ではなく構造で見る。約束と期限が入っているか

  • 会える時間帯を見る。平日の昼と夜だけ、連絡が消える週末——それがあなたの、彼の人生における配置図だ

  • 「離婚したら来て」とは言わない。それは無期限の待機予約になる。言うなら「清算が終わった状態でしか、私は会わない」。そして実際に会わない

  • 弱っている時期の、急に距離を詰めてくる優しさを警戒する。防御が下がっている自覚がある時ほど

最後に

既婚男性のアプローチは、あなたの魅力の証明ではない。

彼の家庭が安定していることの証明であり、あなたが「安全」と査定されたことの通知である。

あなたに必要な承認は、リスク計算の末に差し出される既製品の優しさではない。

人生を懸けるものが何もない状態で、それでもあなたを選ぶ人間の言葉だ。

彼の「好き」には、担保が入っていない。

担保のない愛を受け取り続けた人の末路は、いつも同じだ。年数だけが積もり、彼の家庭は今日も安定している。

あなたの時間は、誰かのオプションになるために流れているのではない。

辛口ペンギンでした。


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