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#6 数学って、自由だ。~パズルから生まれる問い、問いからひろがる数学~

こんにちは! かぴまるです。
今回は、私が考えたオリジナルのパズルを題材に、そこから見えてくる数学的な構造をご紹介したいと思います。
きょう取り上げるのは、格子状のマス目に 1 または 2 を書き入れるパズルです。

パズルのルール

縦 m マス × 横 n マスの長方形のマス目があります。
この mn マスのそれぞれに、1 か 2 のいずれかを、次の決まりにしたがって書き入れてください:

  • 1 が書き入れられたマスと隣り合う上下左右には、1 と書かれたマスがちょうど 1 個だけある。

  • 2 が書き入れられたマスと隣り合う上下左右には、2 と書かれたマスがちょうど 2 個だけある。

どのマスについても上の決まりが成り立つように、mn マスのすべてを 1 または 2 で埋めてください。
ただし、ここでいう「隣り合う」とは、辺を共有して接することとし、斜めの位置関係にある 2 マスは、「隣り合っている」とはいわないこととします。

1 の隣には 1 が 1 個だけ、2 の隣には 2 が 2 個だけにする
決まりを満たしている書き込み方と、そうでない例

まずは、m = 2 の場合から考えてみる

まずは、m = 2 (縦が 2 行だけ) の場合から考えてみましょう。
n = 1, 2, 3 の各場合について考えてみると、下の図のようにできます。
この様子だと、一般の n に対してルールを満たす書き込みができそうです。
それを示すのが、問題 1 です。

m = 2 の場合。n = 1, 2, 3 くらいまで試せば、一般化できそう。

問題 1 (m = 2 の場合の一般化)

m = 2 の場合、すべての自然数 n に対し、ルールを満たす 1, 2 の書き込み方が存在することを証明しなさい。

問題 1 の解答

証明.まず,次の主張を示す.

主張.すべての自然数 n が,1 と 2 を交互に加えた和で表せる.
主張の証明.n を 3 で割った余りは,0, 1, 2 のいずれかである.
余りが 0 のときは,1, 2 を必要な数だけ繰り返せばよい.
余りが 1 のときは,1 から始めて 1 で終わればよい.
余りが 2 のときは,2 から始めて 2 で終わればよい.(主張の証明終)

上の主張により,任意の自然数 n は 1 と 2 を交互に加えた和で表せるから,その 1 に対応させて縦に 2 マス並んだ 1 を,2 に対応させて縦・横 2 × 2 = 4 マス並んだ 2 を並べれば,ルールを満たす書き込み方が得られる.(証明終)

例:n = 7 のときの考え方

m ≧ 3 のときはどうか?手を動かしてみる

m = 2 の場合は、n がどんな値でも答えがあることがわかりました。
それでは、m が 3 以上の場合はどうでしょうか。
ここから、パズルらしい感じになってきます。
それが次の問題 2 です。

問題 2 (パズル。手を動かして解を探そう)

次の m, n の値の組に対し,ルールを満たす 1, 2 の書き込み方を 1 つずつ示しなさい。
(1) (m, n) = (3, 4)
(2) (m, n) = (4, 6)

実際に手を動かして、答えを探してみましょう

問題 2 の解答例

下の図のような解が存在する.

問題 2 の解答例

1 が入るマスの隣には、1 のマスが他に 1 個しかないので、1 のマスは 2 個セットでかたまりを作って孤立するはずです。
一方、2 が入るマスは、隣に 2 のマスがちょうど 2 個あるので、それをたどっていくと輪ができるはずです。
これを踏まえると、(1) の答えはおのずと上の図のようになるはずです。
(1) が解ければ、(2) はその応用で、2 つ合体させたような答えが見つかります。

ルールをいじってみる(もう少し楽しみたい)

なぜ 1 と 2 だけなのか。3 や 4 はダメ?

ここで、このパズルのルールについて振り返ってみます。
各マスには、1 または 2 を書き込むことになっていました。
少し考えてみると、各マスには 4 個のマスが隣接しているので (端のマスを除く) 、3 や 4 を書き込むマスがあってもよさそうです。
ところが、4 と書かれたマスが 1 個でもあると、都合の悪いことが起こります。
というのも、4 のマスがあると、その周囲が連鎖的に 4 にならざるを得ず、最終的にマス目の端まで到達してルールを満たさなくなってしまうのです。

4 と書かれたマスがあると、全部のマスが 4 になって、破綻する

同じようなアイデアによって、3 が書かれたマスが存在しないことも示せるので、それを問題 3 とします。

問題 3 (4 がダメなのと同様、3 もダメ)

ルールを満たすためには、3 が書かれたマスが存在できないことを証明しなさい.

問題 3 の解答

証明.3 が書かれているマスの中で,最も左にあるマスを 1 つ選ぶ.
この選び方とルールより,このマスの上・下・右隣のマスは 3 である.
この上隣の 3 が書かれたマスでも同様のことが成り立ち,3 が書かれたマスをたどってこの列を上に進んでいくと,上端に達する.
この上端のマスでも,これより左に 3 が書かれたマスはないので,このマスに隣り合うマスで 3 と書かれているものは 2 個以下である.
これは,ルールに反する.
よって,ルールを満たすためには,3 が書かれたマスは存在しない.(証明終)

3 のマスがあった場合も、やはり連鎖によって端で破綻する

1 と 2 だけだと不自由なので、増やしたい

3 や 4 があるとダメだということはわかりましたが、やはり、1 と 2 しか使えないのは不自由です。
というのも、ここまでで見つかっているこのパズルの答えは、限られたパターンしかありませんでした。
もっとも、m = 2 の場合に限っては、n がどんな値でも答えがあることがわかっていますが、それも同じパターンの繰り返しなので、ある意味 1 種類と数えることもできます。

1 と 2 しか使えないのはかなり窮屈。もし 0 も使えたらどうなる?

そこで、「もし 0 も使えることにしたら、このパズルの答えはどれだけ増えるのだろう」という疑問が湧いてきます。
実は、0 を使うことを許すと、とたんに (m, n) がどんな値の組でも答えが存在するということが示せてしまいます。
それが次の問題 4 です。
これが、最後の問題です。

問題 4 (0 を使っていいなら、何でもあり)

0 を書き込むマスがあってよいとすると,(m, n) がどのような自然数の組でも,ルールを満たす書き込み方が存在することを証明しなさい.

問題 4 の解答

証明.図のような,3 行 × 3 列のベースを用いる.
このベースは,縦・横にコピーして繰り返すことで,いくらでも大きなマス目を埋められる.
ただし,(m, n) の値の組に合わせて,必要に応じてカットしなければならない.
カットしてよいのは,図の赤線で示した部分のみである.
(2 マスの 1 のかたまりや,4 マスの 2 のかたまりを分離してはならない.)
あとは,このベースをコピーして十分大きなシートを用意すれば,どのような (m, n) の値の組に対しても,適切なカットの仕方があることを示せばよい.
まず,問題 1 の証明中の主張より,m, n はそれぞれ,1, 2 を交互に加えた和で表すことができる.
m の式を行の分割に,n の式を列の分割に対応させ,

  • 1 の行と 1 の列が交わる各マスには,0 を書き込む.

  • 1 の行と 2 の列,2 の行と 1 の列が交わる領域の各マスには,1 を書き込む.

  • 2 の行と 2 の列が交わる領域の各マスには,2 を書き込む.

上のように 0, 1, 2 を各マスに書き込むことで,1 のかたまりや 2 のかたまりを分離することなく,ルールを満たした書き込み方が得られる.(証明終)

3 × 3 のベースを繰り返して敷き詰めれば、いくらでも大きなシートが作れる
縦と横で問題 1 と同様の分解を行い、それらを組み合わせてシートを作る

まとめ (何気なく作ったパズルから始まった)

今回、なんとなく作ってみたこのパズルですが、考え始めると、思いのほかいろいろな数学的な要素が絡んできて、おもしろいことが見つかりました。
最初は具体的な (m, n) の値の組に対して答えを見つけて楽しんでいましたが、いろいろ試すと、意外にも答えがあるパターンはそう多くないことがわかりました。
それでも条件を絞って一般化してみると、シートの長さを 3 で割った余りがひとつのカギとなって答えが導けることがわかりました。
また、3 や 4 のマスを許すと端のほうで破綻することや、0 のマスを許すととたんにどんな場合でも答えが見つかることまで示すことができました。
ひとつ問題が解決すると、また新たな疑問が湧いてきて、考えたくなる
思いのほかおもしろい構造が見つかったので、今回記事にまとめてみました。

おまけ (つぶやき)

このマス目って、別に格子状じゃなくてもいいですよね。
例えば六角形 (ハニカム構造) みたいにしたら、どうなるんでしょうね?
気が向いたら (おもしろそうだったら) 、また続きをやりたいと思います。


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