【京便り・0628】 宝ヶ池の女狐、京都あるあるの夜咄し、
妖怪・怪談話には、こと欠かない町、京都、
その夜咄しの、町1番の伝道師さんは、タクシーの運転手さん?ではないのかしらん、などとよく聞く、
タクシーさんに乗りこんで、短い距離でも、ちょこっと、その手の話しの話題を持ちかけたりすると、
「いや、実はね、最近ちょっと、聞いた話しなんやけどね、、」、と、待ってました、とばかりに始まって、その「さわり、」やら、短めのストーリーを、人から聞いた話しと言っては、こっそり、聞かせてくれたりする、ものだった、
京都人の多くは、さほど多くはない京都市内のタクシー会社さんの中から選んで、ご贔屓にしている、特定のタクシー会社さんに電話予約して乗る、決して、他社に乗り換えたりはしない =「浮気をしない」という気風から、結局、おんなじ運転手さんに何度も、乗っけてもらうことも多く、あったりする、
コロナの数年間で、古くからの地元出身のタクシー運転手さんの多くが、引退やら商売替えされてしまい、この頃は、他府県出身やら多国籍の運転手さんやらが多くなってしまってはいるのだけれど、地元出身の運転手さんと聞くと、ほっと、したりする、
京都でよく聞く、地元の怪談話しのトップ3は、
1。「雨の夜に京都駅前から深泥池まで乗る、ずぶ濡れの女」、
2。「深夜に化野念仏寺に向かう色白の美女」、そして、
3。「宝ヶ池に棲む狐、」、
いろんな人から聞くことはあっても、自分自身が、実際にそんな怖いことに遭遇したり、また、ご本人自らがそんな体験をした、などという運転手さんに、お会いしたことなどは、今の今まで、なかった、
けれども、とうとう自分自身が、それに近い体験をすることになったのが、先月の末のこと、、
地下鉄烏丸線の終着駅の「国際会館」駅まで行かなくてはならない用事が、急にできてしまった時のことだった、、
洛北では、古くからあると言われている、鞍馬口通り近くの特定郵便局に立ち寄り、その前の街路樹の脇に、自転車を駐輪して郵便局に入った、そのわずか一瞬の間に、駐輪取り締まりの市役所の車に、スッと、持ち去られてしまった、それが、「ことの起こり、」だった、、
消えた自転車があった地面には、その保管先が、地下鉄の終着駅「国際会館」の中にあり、その駅舎下まで、引き取りに来るように、と記された紙が一枚、パラリと、置かれていた、
「国際会館駅」は、京都に住むようになってから、今まで一度も行ったこともなければ、たぶん、一生に一度も立ち寄ることはないであろう、などと思っていた駅、
そんな縁のないはずの駅に立ち降りて、入り口の外から、外観を見た瞬間、はるか昔に、その風景を、夢の中で見たことがある「記憶」が思い出されてきた、
夢の中で見たことがあるという記憶の風景は、自分の大学か職場の先輩たちと、京都郊外の大原あたりから団体バスに乗ってきて、地下鉄に乗り換えるために、駅の入り口を探している自分たちの姿、そんな光景だった、、
過去の夢の中で見た光景の記憶が、目の前にある実際の光景と酷似している、
駅前の学校のグラウンド、その前のバス通りの先に見える東山の峰々、
陽の光、立ち木の葉影、空の青さ、など、微細かつ鮮明な光景、
夢とも現実とも見極めのつかない、風景の中を、保管所から取り戻した自転車に乗って、北山通り方向に向かって走り出すと、国際会館駅の正面とは反対側の入り口となり、その辺りには、サリーをまとったインド人女性が数人たむろしている、
その先を南に向かって森の中の道を走って行くと、四十年ほど前の開業当時に、何度か来たことの円形ホテルの入り口の前に辿り着く、
さらにずっと北山通り方向に向かってペダルと漕いでいき、かなり走ったはずなのだけれど、気がつけば、また、元の国際会館駅前に来ている、
あれっ?と、スマホ地図を見直して、もう一度走り始めると、ついさっきと同じように、ホテル入り口への道の前に着く、
今度は、方向を間違わないようにと、昼でも暗い、森の中の道を突き抜けてさらに走ったはず、だったのだけれど、さらにまた再び、同じ光景が目の前に広がっている、
ならば、逆方向へ向かおうと思い直して、北山通り方向を目指せば、いきなり、長いトンネルが目の前に現れてくる、
意を決してそのトンネルに入り込んで、抜けたところまで来たら、やっと現実に、見覚えのある、山懐の宝ヶ池へと向かう別れ道とぶつかった、
宝ヶ池のホテルは、80年代の開業当時から、幽霊話の噂が多々あったのだけれど、自分自身が宿泊したその時には、そんな体験をしたことは、一度もなかった、
その後、北王子駅から国際会館まで地下鉄烏丸線が延長されて開業したのが、1997年だから、まだまだ静かな山の中だったのだと思う、
それから40年が過ぎて、今の時代になって、国際会館駅まで呼ばれ、そして森の中を3周も、「狐に騙された?」かのように、チャリで歩くことになろうとは、、、
やはり、宝ヶ池の周りには、人を惑わす、「お狐さん」が棲んでいらっしゃるのではないのかと、思わず昔聞いた噂話を思い出す、
トンネルから出て、急勾配に婉曲した山道を下れば、あっという間に、北山通りに道は重なり、松ヶ崎の見慣れた現代の街の風景になるのだけれど、この急な坂の横に、今も残る、旧道は、180度のヘアピンカーブだったところで、現在は、歩行者・自転車専用道路になっている、
そして、その道の名前は、宝ヶ池通りの「通称・狐坂」、
やっぱり、妖怪狐坂の怪、の話しは、本当のお話しだったのかと、あらためて、背中にゾクッと、寒気が走る、、、
女狐さん、雄狐さん、山の狸さんたちは、きっとこのあたりに、お住まいなのであろうと、糺の森近くに戻ってから、北山に向かって、手をあわせる、
夜ではなく、昼間のできごとで、よかったのだけれど、今度は、油揚げを持参して、森の中の祠にお供えしよう、などと、思う、
「そんなんでええのん?」、という声が、遠くから、聞こえてきそうやけど、、、




