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答えとまちがいさがし【八〇〇文字の短編小説 #28】

三時すぎ、玄関の鍵ががちゃりと開いた。小学四年生の娘が帰ってきた。小気味良いリズムで階段を登ってきて、声をはずませた。

「ねえねえ、ママ、わたしの作文が句のコンクールで教育長賞に選ばれたよ!」

「すごいじゃない! なんて題名?」

「『答えとまちがいさがし』っていうの。結構時間がかかったんだから」

「どんな内容なの?」

「うーん、それは秘密」

表彰式で朗読するから、それまでの楽しみにしてほしいのだという。娘なりに親を喜ばせたいのだろう。わたしは「楽しみだわ」とだけ答え、夕食の準備を始めた。娘は茶色いランドセルを置いて着替え、地域のバレーボールクラブの練習に出かけた。

わたしはまた一人になった家で玉ねぎをみじん切りしている。「答えとまちがいさがし」という題名にどきりとした自分を忘れるように、玉ねぎを細かく切っていく。

何が答えで、何がまちがいなのかなんて誰にもわからない──。

大学三年生のわたしが妊娠したとわかったあのとき、社会人一年生だった夫は目を伏せて「できれば堕ろしてほしい」と告げてきた。わたしの両親も夫の両親も猛反対してきた。わたしの心は折れかけた。誰ひとり味方はおらず、だからこそ意地を張った。「絶対に産むわ」と言い、大学をいさぎよく辞めた。

後ろ向きの「授かり婚」は誰にも祝福されなかった。夫は何もかもしぶしぶ受け入れた感じだったけれど、まったく望まれずに生まれた娘をいまでは誰よりも溺愛している。娘は娘で正真正銘のパパっ子だ。

九年前の冬の夜、生まれたばかりの娘のか細い泣き声を聞いて、夫は「歌を聞いているみたいだ」とつぶやいた。それから数日たって、夫が「名前はのぞみにしよう」と言ってきたとき、わたしは反対しなかった。むしろ、わたしたちの子にふさわしい名前だと思った。

それにしても、のぞみの『答えとまちがいさがし』はどんな内容なのだろう。まったく想像がつかないけれど、その感覚が気に入っている。

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