夜、カレル橋で【夢の話、または短編小説の種 #13】
その夏、わたしたち家族はプラハに旅行に出かけた。ブリストルから出るのは初めてのイベントで、家族の誰もかもが国外旅行は初体験だった。息子のニックはまだ八歳で、レイチェルは五歳になったばかりだった。
プラハに着いてからの三日間、カレル橋の近くにあるアモール・ホテル・レジデンスに四人で泊まっていた。夫のサイモンが何カ月も前からインターネットで予約してくれていた。
最初の日、チェックインしてメゾネットタイプの二階建ての部屋に入ると、その広さと優雅さに家族全員が興奮した。どういうわけか「明日はプラハ動物園に行こうか?」とサイモンが提案する。部屋の豪華さに圧倒されていたニックとレイチェルがさらに喜んでベッドの上で飛び跳ねて、わたしにはそれがダンスのように見えた。
踊り疲れた子どもたちが寝静まったあと、サイモンが「少し散歩に行こう」と誘ってきた。わたしたちは子どもたちの寝息を何度か確かめ、ドアをそっと閉めてホテルを出た。ホテルの近くの横断歩道を渡るとき、サイモンが久しぶりに手をつないできて、わたしは少し気恥ずかしくなった。
夜の十時すぎのカレル橋には、少しだけ人がいた。わたしたちと同じ旅行者なのだろう。誰かに写真を撮ってもらう恋人たちや仲良く肩を並べて歩く老夫婦たちを見ていると、わたしはふと疑問に思った。なぜサイモンは急にプラハに出かけようと言い出したのだろう。
サイモンは前を向いたままゆっくりと歩きながら答えた。
「ちょうど一年前に夢を見たんだ。僕たち四人がちょうどこのカレル橋を歩いている夢をね」
「初めて聞いたわ」
「うん、今日言おうと思っていたからね。その夢は、僕たちがブリストルの街に帰って、チェコ旅行の写真をみんなで楽しく見ているシーンで終わった」
「不思議ね。家族旅行なんていままで一度も行ったことがないのに」
「そうなんだ。僕も不思議に思ったんだけれど、どうにも生々しい夢だった。写真に映る僕たちはみんな、とても幸せそうでね。『じゃあ、プラハに行って確かめてみようじゃないか』と思って、がんばって貯金したんだよ」
「もしかして煙草をやめたのも?」
「そうだ。幸せってやつがなんなのか、確かめてみたかったんだよ」
わたしはサイモンが「幸せ」と繰り返すのを聞いて、「もちろん幸せよ」と言いたかったけれど、黙っていた。言わなくても、サイモンならわかってくれているという確信があった。
わたしたちは望まれない結婚だった。いわゆる「ショットガン・マリッジ」で、結婚と妊娠の順番があべこべだった。二人とも心の準備ができていなかったけれど、迷わず結婚の道を選んだ。子どもを堕ろす選択肢は子犬の目ほども考えなかった。
でも、わたしの父も母も「うちの娘と結婚しろ」と脅すより、「よくもうちの箱入り娘を妊娠させたな」と怒り狂ってサイモンにショットガンを突きつける勢いだった。気のせいかもしれないけれど、足早に済ませた結婚式も、祝福する雰囲気は薄かったように感じる。誰もかれもの目が「物事には順序があるだろう」と訴えているように見えた。
それでも、とわたしは夜のカレル橋を歩きながら考える。どんな始まり方にせよ、ひたむきに生きていれば幸せは訪れるのだと。幸せはどこにもなくて、だからどこにでもあるのだ──そう思った瞬間、サイモンが手をぎゅっと握り締めてきた。
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