5⁻4『フライパンと私の7年間戦記』― 起業・輸入・挫折 ―― それでも挑戦は続く
第5章 販路を切り開く
第4話 百貨店・大手量販店・展示会への挑戦
2018年の秋ごろから、私はひとつの大きな決断をしました。
それは「本格的に展示会へ出展しよう」という挑戦でした。
RISOLIを日本で広めたい。けれども、ECサイトでの販売はなかなか伸びない。マルシェやフェスでは手ごたえを感じるけれど、それはあくまで一過性の場。やはり「本流」に乗せるには、百貨店や大手小売店に並べてもらうしかない――そう考えるようになっていたのです。
ちょうどその頃、東京商工会議所の会員となっていた私は、毎月届く会報誌をその時はたまたまチェックしていました。その中に目を引く記事がありました。「販路開拓バイヤーズセレクション」――なんと、百貨店のバイヤーと直接商談ができる企画だと書かれていたのです。
普通なら問屋を通さなければならない世界です。小さな輸入会社が百貨店に直接取引を持ちかけるなど、本来ならば不可能に近いこと。それが、このプログラムを通じれば実現できるかもしれない。私は迷わず応募を決めました。
同時に、展示会出展の可能性も模索していました。東京商工会議所では、展示会出展をサポートする助成金制度が用意されていたのです。最大150万円まで支援が受けられると知り、これを活用しない手はないと思いました。
ただし、この申請作業は決して容易なものではありませんでした。まずは説明会に参加し、制度の概要を理解します。そこから申請書の作成。事業計画、予算見積、出展目的などを細かく記載しなければならず、初めての私は正直とても骨が折れました。提出すると修正点をいくつも突っ込まれ、再提出。けれども、こうした手続きは「本気度」を問われているようでもあり、私は一つひとつ丁寧に応えていきました。
結果、満額ではなかったものの120万円ほどの助成金が決定。これで展示会出展の足がかりができたのです。
三越伊勢丹バイヤーとの出会いは、
一方、「販路開拓バイヤーズセレクション」にも応募しました。書類審査を経て、いくつかの百貨店のバイヤーと直接商談できる機会が巡ってきたのです。その中に、三越伊勢丹のバイヤーがいました。
RISOLIというブランド、イタリア製の高品質調理器具。その背景や理念を熱心に説明すると、相手の表情が変わっていくのを感じました。「これは百貨店のお客様に合うかもしれない」。そんな手応えを得た瞬間でした。
このつながりが後に三越でのイタリア展出展へと結びついていきます。
幕張メッセでの挑戦
2019年1月、幕張メッセで開催された「国際キッチン&テーブルEXPO」。ここにRISOLIとして初出展することになりました。
会場は巨大で、前日搬入の段階から圧倒されました。パネルを組み立て、商品を並べ、什器を配置する。大きな企業のブースは立派な装飾や広いスペースを誇っていて、小さな私のブースは他とも見劣りしない、デザインも洗礼された本当に素敵なブースが出来上がりました。偶然にも場所もよく展示会としては嬉しい角地です。「ここが私の戦いの場」と心を奮い立たせました。
当日は、なんと友人や知人たち延べ20人も入れ替わりで手伝いに来てくれました。笑顔で商品説明をしてくれたり。中には「これ、私も欲しい!」と声を張り上げて盛り上げてくれる人もいて、まるでチームのように一丸となってブースを支えてくれました。もちろんそこにはロッサーナの姿も!3日間泊りがけで手伝ってくれました。
開場と同時に人波が押し寄せ、RISOLIのブースには次々と来場者が足を止めてくれました。「この緑色のコーティングは何?」「本当に焦げつかないの?」「ちょっと重いけど、しっかりしてるね」。会話の一つひとつが、新しいブランドに興味を持ってくれた証でした。会の主催者からは、一番ここが混んでますねと言われたくらいです。
この展示会で交換した名刺は、なんと300枚。厚みで手が痛くなるほどの重さがありました。それは単なる名刺の束ではなく、RISOLIの未来につながる可能性そのものに思えました。
成果と広がり
この展示会には、三越伊勢丹のバイヤーも視察に訪れてくれました。ブースに立ち寄り、実際に商品を手に取って見てもらえたことは大きな前進でした。そしてその後、2019年3月には日本橋三越で開催されたイタリア展への出展が決定します。
さらに、この幕張の展示会で出会ったバイヤーとのつながりから、大手量販店との取引も進展しました。その一つがヨドバシカメラ。家電量販店で調理器具を扱うというのは当初の想定外でしたが、むしろ幅広い層にアプローチできるという点で新しい扉を開いてくれたのです。
三越でのイタリア展では目標の売上100万円には届かなかったものの、一定の成果を残せました。何よりも「百貨店にRISOLIが並ぶ」という事実そのものが、私にとっては大きな意味を持っていました。
展示会を終えて
振り返れば、2018年秋からの数か月は、助成金申請に奔走し、展示会準備に明け暮れ、同時に販路拡大のために商工会議所を頼り、バイヤーにプレゼンをし続けた日々でした。
小さな会社、限られた資金、――どれも厳しい現実でしたが、それでも「挑戦する舞台」に立つことで、少しずつ道がひらけていったのです。
展示会を経て、RISOLIは確かに日本市場での存在感を増し始めました。私自身も、ECの片隅で孤軍奮闘していた頃とはまったく違う景色を見ていたのです。
