里の庭のタヌキたちの暮らし(絵と文)
今日は庭にやってくるタヌキたちのお話しをしたいと思います。
毎年秋になると、庭先にタヌキたちは決まってやってきます。
でも見た目も性格もみんな違います。目次の中から気になる子の話だけでもご覧いただけたら嬉しいです。
初めて出会うタヌキグループ
秋も深くなってきた夕闇の中、車で近所の畔道を走っていると、車の前にどこかからタヌキたちが現れました。
車の前を急ぐ様子もなく早足(歩きと駆け足の間の歩様)でトコトコと仲良く前進して行きます。タヌキの行進です。車のライトがタヌキたちに当たって、みんなでふわふわの毛や尾っぽをポワポワと揺らしながら楽しげに前進してゆきます。私たちは車の速度を落として、そのままタヌキたちの後ろを見守りながら徐行運転していました。どのタヌキも焦りもしないし、逃げもしません。
しばらく徐行運転でタヌキたちの後を走っていましたが、急に道を逸れて、道なき森の闇の中に消えてゆきました。タヌキってなんだか呑気で憎めないと感じたことをよく覚えています。
夜の庭はタヌキの集会場所
市街地から田舎へ移住して数年が経って、暮らしが少し落ち着いたある日のこと。春の夕べに、庭でバーベキューをしていました。お肉や、エビを焼きながら外でおむすびを食べていました。バーベキューが終わりかけて、火も消えかけて、満腹になり、静かに残りを突いていました。
すると、山から、ゴソゴソ、カサカサと音が少しずつ近づいてきます。薄暗い山に目を凝らしていると藪の中からタヌキが顔だけを出しました。
1頭、2頭とまだゴソゴソと音がするので数頭いるようです。
反対側からもさらにタヌキの気配がします。さすが鼻の利くイヌ科のタヌキでしょうか。
そもそも私たちが夜に外にいることもなかったので、実は毎日来ていたのかもしれません。
私たちから10−20mほどの距離をうろうろ、1頭、また1頭・・・わたしたちを見ても、逃げる様子もなく、どんどん山から降りてきました。
うろうろ何かを探したり、たまにこちらを見たりします。街灯に照らされて、黒く浮かび上がるシルエットに、足の細いこと。
集合住宅で育った私にとっては、野生動物との関わりは何とも言えない嬉しさが込み上げてきました。しかも、我が庭でみんなで楽しそうに過ごしているのです。

中央の少し上に細い足で佇んでいます

それから、毎年のように秋になるとタヌキは山から降りてくるようになりました。でも、よく考えたら、夜に謎のガサガサ、ゴソゴソの音は聞こえていたので、私が知らなかっただけのようですが。
今では安心したのか、覚えが良いのか、昼だろうと、朝だろうと、庭や畑や小さな果樹園をうろうろして何か探し回っています。私たちのことなんて、まるでいないみたいに無視して、色々なところに頭を突っ込んでは、トコトコ歩きまわるのです。我が家には、ニワトリやヤギもいるので、彼女たちの(みんな女の子)食べ残しなのか、トンビが落とした何かなのか、昆虫なのか私にはわかりませんが、とにかくうろうろしています。
庭にあるビオトープは生き物たちの水飲み場や、水浴び場、出会いの場などになっているようですが、タヌキたちもまた昼間に平然と水を飲み、寝そべって、日向ぼっこしたり、仲間を連れだってきたり、知らないタヌキ同士で出会って、なんだかタヌキ同士の駆け引きが始まったりすることもあります。1、2m先でタヌキの会話が繰り広げられるのです。
私はタヌキたちのことを心を込めて無視するようにしているので、タヌキも私など興味もなく、近くにいても気にしていません。ある日、私の目の前で落ち葉の中に一生懸命何かを隠していることもありました。しばらくして見てみましたが、何もありませんでした。やっぱりすぐに食べてしまったのかと思うと、おかしくて、私は一人でくすくす笑います。
それにどうもタヌキは大食いのようです。時に仲間のために何かを持ち帰って分け合っていることもあるようです。子供なのかもしれません。タヌキと話して、どんな関係なのか聞けたらどんなに楽しいことかと思うばかりです。
裏山の悲しげな声のわけ
ある年、聞きなれない声が毎晩聞こえます。
なんとも言えない、少し悲しげな声です。オオカミのように、強さは無いけれど遠吠えのようです。気になって耳を澄ませてみると、呼応する声はここまでは大きくないのです。

昼間に畑仕事をしていると明らかに病気の個体が現れました。疥癬(かいせん)です。病気の影響で、ほぼ全身の毛が落ちていました。これから寒くなると言うのに、弱々しい足取りで、臭いを嗅ぎまわりながら無駄足を踏んで、庭を彷徨っています。
まるで裸ん坊で、今夜の寒さを思うと切ない気持ちになります。
気になって観察していると、私がいても、足元まで来てぶつかって気がついて、スローモーションでややおののきます。でもそれだけです。目が悪いのかもしれないと思いました。すると突然大きな声で鳴きます。それで、私は初めてタヌキの声を知ります。そして、離れた場所から呼応する声が聞こえます。でも、その声はそんなに大きな声ではありませんでした。
ササヤブから顔だけ出すタヌキ
その子には、もう一頭連れのタヌキがいて、その子は健康そのもので凛々しいタヌキで、上品な鳴き声です。

(アイフォンで撮影)
ササヤブの中心から、ぼそっと顔だけをを出して辺りを伺っています。まるでアニメのワンシーンの様です。
(でも、よく考えたらアニメではなくタヌキが先なのですが・・・)
声を聞いて近くまで来ると、匂いを確認して、その子の周りをぐるぐる回ったりして気遣っています。遠吠えは、少し離れたところにいる時に、お互いに位置などを確認しているような気がします。
「おーい、ここだよ」といった感じでしょうか。
ある夜、裏山からタヌキの気配がして鳴き声を真似をしてみると、山から遠吠えが返ってきました。
暗くて何も見えない山から目が離せません。時折、ガサゴソと気配が聞こえます。もう一度、鳴き真似をしてみます。するとやはり、鳴き声が返ってきます。
しばらくして、私は体調の悪いその子に私はこっそりパンをあげるようになりました。そうして近くで時間を過ごして、観察するようになりました。
女の子のような気がします。パンをあげる前に、私がタヌキの鳴き真似をするのです。すると、タヌキは一度で理解しました。タヌキの物覚えの良さにも驚きました。
こちらを探して畑の端からノコノコ(目が悪いため、歩くのが遅い)歩いてやってくる姿に胸が締め付けられます。たまに、何かにぶつかりますが、すぐに外れてまた前進してこちらへやってきます。
春に山へ帰るときまで、その2頭のタヌキはずっと一緒でした。動物たちの揺るぎない絆を知ることができた春でした。
イタズラタヌキ
お天気の良い秋の夕暮れで、庭がオレンジ色に煌めいています。
突然、ニワトリたちが騒がしくしている鳴き声が聞こえてきました。私は家の反対側にいたので、ぐるりと走って家を半周してニワトリ小屋へ向かいました。
見慣れないタヌキがニワトリ小屋に入ろうとして、前足が敷居を跨いでいます。私はまだニワトリ小屋まで数十メートルの距離があったので、声を出して威嚇すると、足早に去ってゆきました。これまで私が見た数少ないタヌキの中で最速の動きで駆けてゆきます。
タヌキの鳴き真似本当に役にたちました。
扉を潜り抜けて敷地から出たところで一度止まり、こちらを振り返りました。門扉越しに姿が見えて、目が合います。怒られていると理解しているかの様です。
鼻梁が狭く、少し毛色も濃い顔つきで、毛は生えていても痩せているのがわかります。尻尾はところどころ毛がなくて、次に姿を見せたときも容易に個体識別することができました。見かけるたびに私は威嚇をして、庭には入れません。ニワトリたちへの被害は出ませんでした。
立派なタヌキ
タヌキたちを観ていると山から降りてきた、秋の初めが一番警戒心が強く、日ごとに馴染み、春にこなれた頃、山へ帰って行くのが常です。
でもある年のタヌキは、秋の初めにも関わらず悠然と姿を現しました。そして、ゆったりした歩き方、振り返り方です。良い毛並みで見えない体つきも立派なのがわかります。秋の初めに現れたそのときから、そのタヌキは庭を優雅に歩き回っています。

紙に鉛筆とパステル
遠くで他の2、3頭がそのタヌキの姿を見ていますが、こちらには来ません。臆病なのでしょうか、子供たちなのでしょうか。
話しかけて教えてくれれば楽しいのですが。そんな不思議な力は私にはありません。
冬も深まってくるとタヌキもさらに慣れ親しんできました。
私たちが夕方ニワトリたちにおやつをあげる時の合図に、そのタヌキもやってくるのです。ガサゴソとニワトリ小屋の上にある笹藪で待機していたようで、立派なその子は気だるそうに姿を現しました。
ある時には、ビオトープの草藪から眠たそうに出てきたこともありました。そして、ニワトリに混じって、オヤツを一緒に食べるのです。
白い烏骨鶏たちに混じって、黒いタヌキが右へ左へうろうろしています。
時にそれを持って帰り、山の上から見守る臆病なタヌキたちに分けています。それを見たトンビがタヌキから、パンを奪ってゆくこともあります。ニワトリたちは大パニックです。
あっけに取られたタヌキが、トンビを睨みつけています。
冬の庭が騒がしくなります。

3頭いたのが、2頭に減ってしまいました。
(アイフォンで撮影)
冬も深まるころ遠くから見ている3頭いた臆病なタヌキは、やがて2頭になっています。野生の厳しさを感じます。
春の初め頃、そのうちの一頭を少し庭の入り口で見かけることもありましたが、私の気配ですぐに逃げてしまいました。

キャンバスにアクリルガッシュ(0号)
ガサゴソと音が聞こえます。耳を澄ませて目を凝らしてみると、夜の裏山から硬いネザサの枝葉を押し込みながら歩き回る音がします。
ガサゴソ、ガサゴソ・・・ザザザっ
辛抱強く山を観てみると山のあちらこちらから、光る目だけがこちらを見ているのがわかります。

カサカサ、サササ、藪から小さな小さな音がします。
耳を澄ませて、目を凝らします。
体は動かさず、目だけで周囲を探します。
どれだけそうしていたでしょうか。
小さなネズミの黒く輝くまん丸の瞳が私の直下の目の前で、イネ科の乾いた葉の上にうまくハマって微動だりせずこちらを観ています。
しばらくそのあまりに小さい体と、まんまるい黒い目を見つめていましたが息継ぎをしたところで、さっと姿を消してしまいました。
なんて可愛いネズミだったのでしょう。カヤネズミだったようです。
今年もそろそろ、秋と共に、動物たちがやってくるかもしれません。

コットン紙に水彩
終わりに
最後までお読みいただいてありがとうございます。今年のタヌキが来たらまたご紹介したいと思います。
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