自分にも思いやりをもつということ
火曜日から、ドラマ『団地のふたり』が再放送されるそうです。
昨年観たドラマの中では、私のイチオシでした。
団地で暮らす幼なじみのふたりが、ごはんを食べたり、近所の人と話したり、誰かの用事を手伝ったりする。
大きな事件が起こるわけではないのに、何げない暮らしの中に、人と生きることの面倒くささや、あたたかさが描かれています。
小林聡美さんもキョンキョンも大好きな女優さん。自然に演じられているのがとても好きです。
今日は同じような空気を感じるドラマ『すいか』を観始めました。
(連休は過去の連ドラを見るにはもってこいですね!)
20年以上前のドラマです。(ネタバレ少しあります。ごめんなさい)
小林聡美さんが主人公の基子を演じ、キョンキョンが同僚の馬場ちゃんとして出演しています。
そのふたりが、時を経て『団地のふたり』で幼なじみを演じているのも、なんだか興味深いものです。
『すいか』の基子は、生真面目に働き、大きく道を外れることもなく生きてきた女性です。
そんな基子を象徴するようなものが、梅酒びんいっぱいに貯められた100円玉でした。
けれど、そのお金で何かをしたいという目標があったわけではありません。ただ、貯まった金額が増えていくことにこだわっていたのです。
数字にこだわる人を、どこか自分とは違う人間のように見ていた。
けれど、数字に囚われていたのは、自分も同じだった。
そのことに気づいた基子は、少なからずショックを受けます。
梅酒びんの中の100円玉は、間違えないように、減らさないように、堅実に生きてきた基子そのもののようにも見えました。
その100円玉を、全部使う。
それは、ただの散財ではありません。
数字を増やすことより、自分が何をしたいのかを選んでみる。
基子にとっては、自分に課してきた枠を越える、小さくて大きな冒険だったのだと思います。
そして基子は、住人たちとのちょっとしたやりとりの中で、自分が本当にしたいことに気づきます。
「みんなに喜んでもらうこと」
一見すると、とても当たり前のことです。
立派な夢でも、大きな目標でもありません。
けれど、こういう当たり前のことほど、日々の中で見えなくなっていくのかもしれません。
基子は、それまで自分を置き去りにしてきたのではないでしょうか。
人に迷惑をかけないようにすること。
決められたことをきちんとすること。
間違えずに生きること。
そういうことは大切にしてきたけれど、自分は何をすると嬉しいのか、何をしたいのかは、あまり尋ねてこなかった。
「みんなに喜んでもらいたい」という気づきは、人のために尽くす決意というより、自分が何をすると嬉しいのかを、初めて自分に聞いてあげた瞬間だったのかもしれません。
引っ越すことになった基子は、部長から「引っ越し祝いは何がいい」と聞かれます。
基子が望んだのは、物ではありませんでした。
自分を褒めてもらうこと。
そこで、自分を褒める言葉を紙に書いて、部長に渡します。
部長はそれをきちんと練習し、基子の前で読み上げました。
そして、そのあと自分の言葉で、部下たちへの感謝を語り始めます。
人に喜んでもらいたい。
そして、自分も褒めてもらいたい。
その両方が、そこにはあります。
少し可笑しくて、図々しくて、でも、とても健全です。
私たちは子どもの頃から、
人に思いやりをもちなさいと教えられてきました。
相手の気持ちを考えること。
困っている人に手を差し伸べること。
自分勝手にならないこと。
けれど、
自分にも思いやりをもちなさい
とは、あまり教えられてこなかったように思います。
自分への思いやりというと、休むことや、自分をいたわることを思い浮かべます。
もちろん、それも大切です。
けれど、それだけではありません。
自分は本当は何をしたいのか。
何をすると嬉しいのか。
どんなことに心が動くのか。
それを自分に尋ねてあげること。
そして、ささやかでも、自分の願いをなかったことにしないこと。
自分に、小さな冒険を許してあげること。
それも、自分への思いやりなのだと思います。
今週、「私がつくる信頼レシピ」の“私の信頼原則(トラスト7)”をブラッシュアップしました。
ワークショップで皆さんに体験していただくのと同じように、一緒に主宰しているコーチと、私たち自身もペアワークに取り組みました。
これまで大切にしてきた原則を、もう一度一つひとつ確かめながら、その言葉が自分にとってどんな意味をもつのか、自分自身の経験に引き寄せて考えていきました。
言葉を整えるだけではなく、私たち自身が、あらためて信頼について問い直す時間になりました。
その中で、中心に置いたのが、
自分と相手に思いやりをもつ
という言葉です。
相手だけを大切にして、自分を後回しにする。
それでは、信頼関係はどこかで苦しくなってしまいます。
自分を大切にすることと、相手を大切にすることは、反対ではありません。
むしろ、自分の気持ちや願いを置き去りにしないことが、相手と無理なく関わっていく土台になるのだと思います。
これまで、
家族のために。
職場のために。
そのときどきで大切だった人や役割のために。
きちんと応えながら歩いてきた人ほど、自分が何を望んでいるのかを尋ねられると、すぐには答えが出ないことがあります。
長いあいだ、自分のことを考えてこなかったからではありません。
自分のことよりも先に、応えなければならないものが、たくさんあったからです。
それは、その人が大切に生きてきた証しでもあります。
だから、これまでの生き方を否定する必要はありません。
ただ、これからは、その中に自分も加えてみる。
相手の気持ちを考えるように、自分の気持ちにも耳を澄ませてみる。
誰かの願いを大切にするように、自分の中に浮かんだ小さな願いも、すぐに打ち消さずに眺めてみる。
何かを大きく変えなくてもいいのです。
いつもなら選ばないものを選んでみる。
少し気になっていた場所へ出かけてみる。
「本当はこうしたい」と、まずは自分にだけ打ち明けてみる。
自分にとっての100円玉貯金が何なのか、考えてみるのもいいかもしれません。
いつの間にか、増やすことや守ることそのものが目的になっているもの。
もう必要がないかもしれないのに、「こうしておくべき」と握りしめているもの。
そこに気づいたからといって、すぐに手放さなくてもいい。
けれど、
「私は、本当はどうしたいのだろう」
と自分に尋ねることはできます。
その問いを向けること自体が、もう自分への思いやりなのだと思います。
基子が100円玉貯金を全部使ったように。
自分に課してきた枠を少しだけ外してみた先に、自分が本当に嬉しいと思うことが、静かに待っているのかもしれません。
そして、その喜びはきっと、自分だけにとどまらず、誰かとの間にも少しずつ広がっていくのでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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