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病理医の午後【毎週ショートショートnote】

市民病院の病理診断科は、顕微鏡で病変部の細胞を見て診断する。
各科からの依頼が山積みで診断に追われる毎日だ。

病理医の奈津なつは、新人の秋穂あきほ冬彦ふゆひこたちとともに、観察や検証、意見交換を繰り返しながら診断を確定させていく。

「奈津先生、この細胞は」
「病変ね。正常細胞と違って境界がなく、隣の細胞にくっつこうとしている。ナンパみたいね」

「じゃナンパ細胞ですね」
秋穂は笑った。
「僕もさらっとナンパできたらいいなぁ」
冬彦が口をとがらせる。

「えっ冬彦くんナンパしたいの?」
奈津はイケメンにちょっと遠い顔つきの冬彦を、目を丸くして見た。

そして思う。

もしかして、冬彦にこのナンパ細胞を移植したら「お茶でもどう」と軽く言えるようになったりして。
でも、どこに移植?やっぱり脳?案外口腔とか?

奈津の動きが十秒ほど止まり、秋穂はあわてて肩をたたく。
「奈津先生!」
「ああごめん、妄想しちゃった」

奈津は病理診断に戻り、妄想は空に消えていく。
いつもの病理診断科の午後。

(414字(ルビ除く))

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#毎週ショートショートnote に参加しました。
お題「ナンパ細胞」

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プレパラート(顕微鏡で観察するために、試料をガラスではさんだもの)。

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