【お菓子作り】なかしましほさんのレシピはどうして懐が深いのか
スコーンが好きだ。
湖池屋の方じゃなくて、イングリッシュな方の。
スコーンは、言ってしまえば粉とバターと砂糖の塊の食べ物である。カロリーや糖質のことを考えるとなかなか罪悪感に駆られるお菓子だが、それでも時たま食べたくなる。
素朴でシンプルなお菓子だからこそ、上質な素材と熟練した技術によって作られるパティスリーのものはしみじみと美味しいなあと思う。
ただ、素朴でシンプルなお菓子だからこそ、手軽に気楽に作れるという側面もある。
手軽さと美味しさを両方考えた時に、私がいつもみてしまうのが、なかしましほさんのレシピである。
なかしましほさんほどあらゆる要素を削ぎ落としたお菓子の作り方を教えてくれる人を、私は他に見たことがない。それが好きなのだ。
なかしましほさんのレシピ
なかしまさんレシピとの出会いは(他の多くの人もそうかもしれないが)「ふつうのクッキー」だった。
1時間でできる「ふつうのクッキー」。数日分のコーヒーのおともがストックできます🍪
— なかしましほ (@nakashimarecipe) September 26, 2021
材料(直径4~5cm 約30枚分)
バター(食塩不使用)50g
きび砂糖 35g
塩 ひとつまみ
薄力粉 70g
強力粉 25g
全粒粉 25g
牛乳 大さじ1 pic.twitter.com/Foicn74YV8
私にとって、クッキーは「素朴で、だけど美味しく焼くのが難しい、しかも何気に工程が面倒なお菓子」だった。
かかる手間や払わなければいけないあらゆる注意の量の割に、出来上がるものに派手さがない。
作る際は、生地を練らないように気をつけたり、均一に伸ばしたり、形が崩れないよう慎重に型抜きをしたりなど、センシティブな気遣いが必要だ。また、生地を伸ばす必要があるものは作業スペースの確保も重要で、狭いキッチンの中で試行錯誤している。
なのに、出来上がるものは「ハレとケ」でいうと「ケ」の雰囲気を醸し出している。「ハレ」の雰囲気を持つお菓子というのは、なかなかお目にかかれない豪華さと触ってはいけない繊細さをもつものである。要するにケーキだ。クッキーは、ケーキの対極にある。
食べる人が見るからにハイテンションになるというよりは、何かをしながらつまんだり、またはコーヒーや紅茶のお供になるように添えられたりするなど、主役感に欠ける。
なのに、ちょっと気を抜くと全然美味しいと思えない仕上がりになるのだ。作業工程の大変さからすると、「ハレ」のお菓子ができるはずなのに、頑張っても「ケ」。ギャップを感じてしまう。
だから、私はクッキーはあまり作りたいと思わなくなっていた。
そんな私の目にX(当時のTwitter)で飛び込んできたのが「ふつうのクッキー」だった。
これなら作ってみたい。見てすぐに思った。
まず、ネーミングが素敵だった。
「クッキー」に「ふつうの」と付いている。「ケ」のクッキーである。「ハレ」のクッキーを作らなくていいんだよ、と言ってくれているように感じて、背中を押してくれた。
次に、材料がとってもシンプルでわかりやすい。割とお菓子やパンを作る自分からすると家にある材料でもあったし、グラム数もキリがいい。
そして、一番いいなと感じたのは、そのプロセスの簡素さ。
まぜる。まとめる。伸ばす。型を抜く。
この工程の中には、本当は気をつけた方がいいことや、もっと複雑に書こうと思えば書けるところもあると思う。だけど、おそらくそれを意図的に省いている。誰でもわかる、ごく一般的な表現で、工程の説明がある。
そのレシピのおかげで、肩の力を抜いて、失敗してもいいや〜、というか失敗ってそもそもないよね〜、と思いながらクッキーを久しぶりに焼くことができた。出来上がったクッキーはまさに普通のクッキー。
作り終わった後の自分の気持ちは、とっても穏やかだったのを覚えている。
これまでのクッキー作りは、「疲れた」「え、でも出来上がりってこんなもの?あんなに大変だったのに?」「いやまあ美味しいは美味しいんだけどさ、、、」「当分は作らなくていいや」みたいな気持ちがあった。
だけど、なかしましほさんのふつうのクッキーは、「うん、できた」「美味しい」「また作ろ!」と思えた。
そのくらい、工程も、出来上がったものも、日常に馴染むものだった。
こんな人の作るレシピなら、他のものも絶対に自分に馴染むだろう。
そう思って、なかしましほさんのレシピは今日まで何度もお世話になってきた。
さて、スコーンを焼こう
レシピはこちらを使わせてもらった。
私の大好きなスコーンのレシピです。粉が3種入りますがこの配合がベストなので、ぜひこのまま作ってみて下さい。
— なかしましほ (@nakashimarecipe) May 5, 2021
…
スコーン
材料(4個分)
A
薄力粉80g
強力粉40g
全粒粉20g
きび砂糖30g
ベーキングパウダー小さじ山盛り1
バター(有塩)40g
牛乳60ml pic.twitter.com/1IGjGZX7KX
前に作った時、あまりの簡単さに、オーブンに入れた後「岩みたいに硬い小麦粉とバターの塊ができてしまったらどうしよう」と不安になってしまった。
だけど、オーブンをあけ、粗熱を取り食べてみると、程よい甘味、全粒粉のザクザク感、焼きたてならではの外側サクサク中はふっくらという食感で、なんとも幸せの味がした。
そしてやっぱり、「また作ろ!」と思えた。
それがなかしましほさんレシピのすごいところなのだ。
今回も、レシピに忠実に作っていく。
といっても、作業はシンプル。計量だけはしっかりしておくのと、バターが溶けないようにだけ注意する。
オーブンに入れるまで、15分ほどだっただろうか。
入れた後、10分ほどで部屋がお菓子屋さんの香りに包まれる。
当然、今回も美味しかった。また作ろ!と思った。自分に余力がまだ残っているから、いろいろ考えることもできる。
抹茶を入れても美味しいだろうな、ちょっといいチョコを入れ込むのもいいな。もっと分厚くしてふんわり感を出すのもいいな、とかいろいろ試したくもなった。
なかしましほさんレシピは、そういう思いつきを試すために必要な余力を残してくれる。そして、お菓子自体もあらゆる思いつきを受け止めてくれる。
そういう意味で、とっても懐が深いと思う。
これからもお世話になります。
